4話 勇者様と部族の宴
その日の夜はシンや私たちを歓迎して宴を開いてくれた。
シンと私、それにレダは主賓席に座らされた。
レダは皇帝に嫁いでいるので、一応この国ではお客様扱いだ。
ジオ様とルルも私の隣に寝かせている。
主賓であるシンと私の前には食べきれないほどの料理が並んでいた。
肉や魚料理がメインだが、見た事もないフルーツがたくさん並んでいる。
「へえ、フルーツの種類がたくさんあるんだね?」
「うん、ほとんどのフルーツは森に勝手に生ってるから好きな時に採ってきて食べられるよ!」
なるほど、この地域の植物の繁殖具合からすると、人がいくら食べても追いつかないんだろうな。
私は食べた事の無いフルーツを片っ端から味見してみた。
とでもこれも甘くておいしいものばかりだ。
ただ、種類によっては刺激の強いものもある。
私は、赤ちゃんにあげても当たりさわりなさそうなフルーツを選んで、スプーンで潰してルルに飲ませてあげた。
そう、ルルは最近離乳食を与え始めているのだ。
ちなみにジオ様はカットしたフルーツを自分で食べていた。
月齢的には早い子はそろそろおすわりしていてもおかしくない頃合いではある。
・・・もっとも自分で食事が出来るのはもう少し先のはずだけどね・・・
「ジオ様、いかがですか?」
(うむ、不思議な味だが、悪くない)
最近、ジオ様は私の影響で珍しい食べ物を味わう事にはまっていた。
食事を一緒に楽しめる様になって、本当に良かったと思う。
会場の中央では、巨大化した女性戦士たちが、踊りを踊っていた。
剣術や格闘技の型を取り入れた踊りの様で、一見模擬戦のようにも見える。
・・・それにしても・・・衣装の布地が少なすぎないだろうか?
レダの戦闘服もそうだが、体が巨大化すると布地で隠されている面積がさらに小さくなってしまう。
踊り子たちは、更に極端で、ほどんど紐の様になった衣装で、かろうじて肝心な部分だけが隠れているのだが・・・前側とか、紐が肉の間に埋もれてしまって、何も付けてない様に見えている。
胸も乳首だけしか隠れてないよね?って言うか、乳輪は見えちゃってるよね!
その状態で、かなり激しい踊りを踊っているのだ!
肝心なところが見えてしまわないかと、はらはらしてしまう。
ジオ様とシンを見たらわりと冷静になごんで踊りを眺めていた。
「シンはこういうのを見て興奮しないのですか?」
「しない事は無いが、ララの体の方が美しかったなと思い出していたところだ」
・・・あまり思い出さないでほしいです・・・
「ジオ様はどうなんですか?」
って、赤ちゃんに聞く事じゃないよね。
(いい筋肉の付き方をしている。正しい鍛え方をしている様だな)
・・・ジオ様はそもそも私以外には欲情しないんだった・・・
ふと見るとむしろシィラの方がギンギンの目で踊り子たちを見ていた。
・・・シィラもちょっとそっちの気があったんだっけ?
他の男性陣を見たら、やはりみんな欲情した目で踊り子たちを見ていた。
・・・って言うか、この一族の人たちって、あれの時も巨大化してするんだろうか?
「シン陛下、ララ殿、楽しんで頂けてるかな?」
私達のところにエロ親父・・・もといゴア陛下がやって来た。
「ああ、珍しい料理に大胆な踊りと、いずれも楽しませて頂いてる」
「踊り子の皆さんが魅力的過ぎて少々目のやり場に困っています」
「はっはっは!よかったらララ殿にも衣装をお貸ししますぞ!」
「結構です!私、大きくなれませんし」
・・・安定のエロ親父ぶりだった。
「おや、この赤子たちはララ殿の子か?」
「はい、わたしの子供達です」
「これはかわいい赤子たちであるな!しかし、シン陛下とは髪の色が違うようだが?」
「この子たちはもう一人の夫の子です」
「ほう、ララ殿はすでに夫が二人おるのだな。ならばなおさら儂の子を産んでも問題あるまい」
「それとこれとは話が別です」
「ほう!こっちの赤子はすさまじい殺気で儂の事を睨んでおるな!」
見るとジオ様がエロ親父を睨んでいた。
「面白い!その歳で歴戦の戦士の様な目つきをしおる!」
エロ親父がジオ様をひょいっと抱き上げた。
「おお!儂が抱き上げても泣き出さんぞ!大抵の赤子は儂が抱き上げると大泣きするものだが」
(ジオ様!ゴア陛下を蹴ってはいけませんよ!)
(ああ、わかっている)
しかしその直後、エロ親父はジオ様を空中にひょいッと放りあげると、瞬時に巨大化して思いっきり右の拳をジオ様に叩き込んだのだ!
一瞬、会場が騒然となった!
国王がいきなり赤ん坊に渾身の拳を打ち込んだのだ。
誰もが最悪の事態を想像した。
・・・しかし、ジオ様はエロ親父の拳を左腕一本でガードし受け止めたのだ!
めきっ!っと、嫌な音が響き渡った!
エロ親父の拳が砕けた音だった。
その場にいた誰もが唖然となった。
皆・・・赤ん坊がぐちゃぐちゃに潰れて吹っ飛んでいく光景を想像したのだ。
しかし、ジオ様は空中で微動だにせず静止したまま、自分の体と同じくらいの大きさの巨大な拳を受け止めたのだ。
「陛下!何するんですか!」
私は一瞬遅れて飛び出し、空中のジオ様を抱きかかえて、すぐさま治癒魔法でエロ親父の砕けた右手を治療した!
「はっはっは!思った通りよ、その赤子!ただ者ではないと思ったが、まさか儂よりも強いとはな!赤子を殴って拳が砕けるとは思わなかったぞ!」
「普通の赤ちゃんだったら死んでましたよ!」
殴られたのがルルでなくて良かったよ、ほんとに!
「普通でないと感じたから試してみたのだ!何者だその赤子は?」
・・・どこまで話していいのかな?
「この子は・・・ちょっと特殊なんです」
「はっはっは!まあ良い!ますますおぬしに子を産ませたくなったぞ!」
うーん、ちょっと厄介な事になったかな?