8話 勇者の弟子と二度目の初夜
先日の大会の場での公式発表と事務的な手続きで、帝国の法律上は私達三人は正式にシンの妻となったらしい。
対外的なお披露目は、後日帝国全土を上げて式典を行う事になっている。
でも、これで一応私も皇帝と婚姻関係を結ぶという第一関門はクリアして、一族全員死罪と王国への賠償請求は回避できた。
・・・何とか国家間の戦争だけは回避できたよ!
なによりルルとジオ様の命も守る事が出来たのだ!
そして、次は、いよいよシンの子供を産まなければならない。
そうしないと私自身は生涯、帝国から出る事もシンと離婚する事も出来ないのだ。
問題を先送りにしても仕方ないので、シンと相談して早速今夜から妊活を始める事に決めたのだ。
もちろんその事は、ジオ様とも十分に話し合った結果だ。
「わあ!この子たちがララの赤ちゃんなんですね!すごくかわいいです!」
今日はレダが後宮の私の屋敷に遊びに来ている。
ミラとレダは、あの後それぞれ後宮に屋敷を提供されてそこに住むようになったのだ。
ちなみにどちらの屋敷も私の屋敷のすぐ隣だ。
「でも赤ちゃんの髪の色も目の色もララと違うんですね?」
「うん、二人とも父親似なんだよ!」
「へえ、ララの旦那様って黒髪なんですね」
「うん!びっくりするくらいのイケメンなんだよ!」
「そうなんですね!皇帝陛下とどっちがイケメンですか?」
「うーん、人の好みにもよるけど、やっぱり私はジオ様かな?」
「あたしは皇帝陛下以上に素敵な男の人って、想像できないです」
「レダはシンの事が大好きだもんね!」
「はい!あたしも早く大人になって陛下の赤ちゃんを産みたいです!ララとミラが羨ましいです!」
「そういえばミラは昨日・・・だったんだよね?どうだった?」
そう、ミラは一足先に、昨晩、シンとの一夜を過ごしたのだった。
「幼馴染のシンと今更感は有ったのですが・・・シンが優しくリードしてくれて・・・その・・・だめです!レダのいる前でこれ以上話せません!」
・・・そうだよね、子供の前で聞いちゃダメだったよ。
「でも今夜、ララも・・・その、済ませたら・・・いつか3人でというのも・・・・!」
ミラは自分で言いながら真っ赤になってしまった。
・・・ミラはやっぱり私の方が本命・・・なのかな?
「いいなあ、あたしも早く大人になって、4人で一緒にやりたいなぁ」
「レダ!この話は聞かなかった事にして!」
レダは意味がわかってて言ったのだろうか?
「あはは!あたしも一応王女だから、殿方との事は一通り教わってるよ!」
そうだった・・・王族や貴族の令嬢はそういう教育を受けるものだった。
「でも!体が成長して大きくなるまでは、赤ちゃんが出来ると大変だからね!」
「じゃあ、大きくなればしてもらえるんですね!」
レダは、ぽんっと巨大化した。
「そういう問題じゃなくて!元の体が大きくならないとダメなんだよ。10か月間、ずっと大きいままではいられないでしょ?体が小さくなった時赤ちゃんが苦しくなっちゃうよ!」
「そっかあ」
レダは再びぽんっと体が小さくなった。
「うん、もう少し我慢するよ」
「ふふっ!レダはいい子だね」
私はレダの頭をなでなでした。
今日は午後からジオ様やルルに会わない事にしていた。
シンに抱かれるのに、別の男性の事を考えていたらさすがに失礼だ。
この国の法律で多夫が認められているとは言いつつも、その時その時はちゃんとけじめを付けておきたい。
シンに抱かれる時はシンの事だけを心から愛したいと思うのだ。
・・・って考えている時点で、まだちゃんと出来ていないんだけどね。
でも、誠意を見せたいって気持ちが大事だと思うんだよね。
今夜だけは、ジオ様とルルには本当に申し訳ないんだけど、私はシンだけのお嫁さんになろうと思います。
この日の夕食は、シンと私とミラとレダの四人で食べた。
これがこの国での私の新しい家族だ。
四人で食べる夕食はとても楽しかったよ!
仲のいい家族になれそうだ。
それからミラとレダと私の三人で一緒にお風呂に入った。
レダは宮廷の大きなお風呂に大喜びして泳ぎ回っていた。
ミラは妙に私に密着してきていたけど・・・
別に不快じゃないから私もミラとのスキンシップを満喫した。
途中でレダもすり寄って来たので、結局三人で密着して入浴していたら、さすがにちょっとのぼせてしまった。
そして・・・いよいよ、シンとの初夜を迎える事になる。
後宮の屋敷にはそういう目的の寝所があるので、私は自分の屋敷の寝所でシンを待つ事になる。
私は覚悟を決めてシンが来るのを待った。
シンは公務が長引いたのか寝所に中々現れなかった。
シンが来たのは夜も大分更けてきた頃だった。
月も沈んでしまって、外はすっかり真っ暗だ。
私は恥ずかしいので部屋に明かりをつけない様にシンにお願いしていた。
「遅かったですね。お仕事ご苦労様でした」
シンは無言で私を抱きしめて、唇を重ねてきた。
うん、やっぱりシンの体格ってジオ様とほとんど一緒だな。
唇の感触もよく似ている。
・・・ジオ様の事は考えないって決めていたのについつい考えてしまう。
前から思っていたけど、シンの体格や体の特徴ってジオ様とよく似ているのだ。
結局私は同じタイプの男性を好きになるのだなって気が付いてしまった。
まあ、性格はだいぶ違うけどね。
そしてシンは自分の肌着を脱ぎ捨て、私の肌着も脱がせ始めた。
お互いの素肌と素肌が触れ合う。
素肌の触れた感触もジオ様とそっくりだった。
・・・ついに・・・私はジオ様以外の男性に抱かれてしまうのだ。
割り切ったつもりだったが、やっぱりジオ様への罪悪感と自分の気持ちへの後悔が残っていた。
気が付くと目から涙が流れていた。
「ごめんなさい・・・ジオ様・・・」
私はおそらくシンには聞こえないであろう小さな声で呟いてしまった!
・・・すると、シンは唇で私の涙をぬぐってくれたのだ!
今のが聞こえてしまったのかな?
シンは私の涙をぬぐうと、柔らかく慈しむように私を抱きしめてくれた。
ああ、この人も私の事を本当に大事に思ってくれているんだなというのが、ひしひしと伝わって来た。
そうだ、今夜はこの人の愛に答えようと決めたのだった。
今さらやめたいなんて言ったら失礼だ。
「ごめんなさい。もう迷いはありません。私を・・・あなたのものにして下さい」
シンは静かにうなづき、私を強く抱きしめた。
・・・こうして・・・・・私は二度目の初夜をむかえたのだった。