7話 勇者の弟子と妃たち
皇帝の股間蹴り大会の閉幕と共に、大会の合格者として皇帝の新たな妃となった二人が紹介された。
シンと私、それにミラとレダの4人が壇上に上がると、会場は割れんばかりの歓声に包まれた。
ずっと独身だった皇帝に、いきなり三人の妃が出来たのだ。
国民が盛り上がらない訳がない。
「大会の筆頭合格者とララでエキシビジョンマッチをやってもらうつもりだったんだが、ミラはまだ安静にしていた方がいいだろうな」
「それならあたしがやります!」
レダはやる満々だ。
「ララって皇帝陛下と同じくらい強いんでしょ?戦ってみたいです!」
レダはわくわくした表情で私を見上げている。
こういうところは本当に子供らしいな。
「頼めるか?ララ」
これって、私の強さを国民に見せつけて、今回の婚姻を更に納得させるためのものだよね?
こういう気の回し方、さすがだよ!
「ええ、かまいませんよ」
「やったぁ!」
嬉しそうにはしゃぐレダは、本当にかわいい。
私は勇者の装備に着替えて闘技場に出た。
「おお!大聖女様が何と凛々しいお姿に!」
「先ほどのドレス姿も素晴らしかったが、これはまた美しい!」
「大聖女様は治癒魔法だけでなく剣の腕も一流という事なのか!」
「いや、あの身のこなし、大聖女様はただものではない」
・・・なんか、すっかり国民の間では、私は『大聖女』という事になってしまったらしい。
目の前には自分の体より大きな大剣を引き摺ったレダがいる。
レダはまだ小さいままだ。
ちょっとぶかぶかのゆったりした戦闘コスチュームが、レダのかわいらしさを引き立てている。
「じゃあ、行きますよ!」
「いつでもどうぞ」
するとレダの闘気が一気に膨れ上がり、体も一瞬で巨大化した。
ぶかぶかだったコスチュームは、ぴっちぴちになり、露出度高いお色気スタイルとなった。
・・・いや、筋肉がすご過ぎて、お色気という感じではなくなってしまっているのだが・・・
次の瞬間には、レダは私の目の前に移動していた!
そして大剣の一撃を繰り出している。
私は咄嗟にレダの大剣をレイピアで受け流した。
・・・重い!
恐らくまともに受けたら体ごと吹っ飛ばされていた。
それほど重い一撃だった。
そして、私に攻撃を逸らされたレダは、強引に踏みとどまり、即座に方向転換して私に次の一撃を入れてきた!
・・・二撃目までのインターバルが短い!
攻撃を躱された後の追撃は速ければ早いほど効果が高い。
相手に反撃の隙を与えない抜群の戦闘センスだ!
しかし私はそれも受け流し、そのままカウンタ攻撃を入れる。
レダは、しっかりそれに反応して大剣で迎え撃ってきた。
強引な力技だが、それを可能とするほどのパワーと速さを備えているのだ。
・・・これは・・・確かに逸材かもしれない!
私はレダの攻撃を受け流しつつのカウンター攻撃を繰り返した。
様々なパターンで返し技を繰り出したが、レダはその全てに反応してきたのだ。
まだ粗削りなのにこれだけの事が出来るのだ。
技を磨けばもっと強くなる可能性を秘めている。
しかし、攻防を繰り返していくうちに、レダの動きは次第に粗くなってきた。
レダの攻撃を最小限の動きと力で逸らしている私に対し、レダは全ての攻撃に全身全霊を込めて打ち込んできているのだ。
体力の消費は相当なものだろう。
体は大きくなっているが、実際には12歳の小さな少女なのだ。
だいぶ体力の限界に近付いているのだろう。
それでもレダは一撃一撃を楽しそうに打ち込んでいる様に見える。
・・・そろそろ終わりでいいかな?
私はレダの打ち込みの力を利用して、レダにそれを乗せた強烈な一撃を返した!
私の『剣聖』としての必殺技の一つだ!
私の打ち込みを真っ向から受け止めようとしたレダの巨体は、高く宙に舞った!
そして轟音と共に地面に叩きつけられたレダは、剣を落とし動かなくなった。
「おお!素晴らしいぞ大聖女様の剣技は!」
「あの強烈な女戦士の攻撃をものともしない圧倒的な強さだ!」
「それにしても、あのに華麗な剣さばきは、まさに大聖女様にふさわしい高貴な剣術!」
「まるで舞踊を見ている様な美しい所作でしたわ!」
「大聖女で剣術も一流とは!まさに皇帝の妃となるにふさわしい!」
「もう一人の妃も見事な戦いっぷりだったぞ」
うんうん!かなりの好印象だよ!
観客たちが盛り上がっている中、私はレダのところにいって、彼女に治癒魔法をかけた。
「大丈夫?レダ。ちょっとやり過ぎちゃったかな?」
レダは、ぽんっと小さい姿に戻って私に抱きついてきた!
「ううん!最高だった!あんなに思いっきり戦って、それで負けたのって初めて!ララと打ち合うのはすごく楽しかった!」
「そっか、楽しんでもらえたら何よりだよ!」
「これから毎日ララと戦えるなんて!やっぱり皇帝陛下のお嫁さんって最高です!」
・・・それ、シンのお嫁さんは関係ないと思うよ。
「それに陛下やミラとも一日中戦えるんですよね!まるで夢の様な生活です!」
・・・レダ・・・後宮生活をちょっと勘違いしてるかもしれない・・・
「一日中は無理だけど、毎日一回は稽古をつけてあげられるとは思うよ」
陛下もミラも忙しいからね!
でもこれで、私の罪の事はだいぶうやむやに出来たかな?




