6話 勇者の弟子と大会の勝者
「おお!なんという光だ!」
「あれは聖女様の光だ!皇帝陛下のお妃さまは聖女だったのか!」
「いや、聖女様の光よりもっと強い光だぞ!」
「確かに!聖女様の光とて、これほどの強さではなかった」
「きっとあのお方は大聖女様だよ!」
「そうだそうだ!間違いなく大聖女様だ!」
「あの人はあたしらの町でも大勢の怪我人を治してくれたんだよ!」
「大聖女様を犯罪者扱いするなんて!なんという罰当たりな事を!」
「客席は君の事でえらく盛り上がっているな?」
「はい!もう大丈夫ですよ。シン」
私は、はち切れんばかりに大きくなったシンの股間から手を離した。
「助かった。痛みは完全に無くなったし、以前より調子が良さそうだ。この礼は君を抱く時に存分に返す事が出来そうだ」
「もう!そういう下ネタ発言はやめて下さい」
「んん、ララ・・・どうしてここに・・・わたくしは・・・一体・・・」
その時ミラも意識を取り戻した。
「ミラ!大丈夫!私がわかる?」
「もちろんです、ララ。わたくしは・・・試合の途中だったのでは?」
「うん!そうだよ。どこまで覚えてる?」
「ええと・・・その戦士と戦って・・・彼女がシンに膝蹴りを入れようとしたので、シンを庇って・・・」
「ミラ!記憶は大丈夫そうだね!体は動かせる?」
ミラは手足を動かしてみている。
「はい、普通に動きますし痛みも違和感もありません」
「それなら大丈夫そうだね!良かった!」
頭の損傷は、傷を治しても記憶や体の機能に障害が残る場合が多い。
その時はもっと治療が難しくなるんだけど、これは大丈夫そうだ。
「無事で良かった。ミラ。俺を庇ってくれたんだな」
「・・・シン、余計なお世話だったかもしれません・・・かえってお手を煩わせてしまいました」
「・・・あの・・・ごめんなさい!」
女戦士が涙をぼろぼろ流しながら頭を下げていた。
「こっ、こんな事になるなんて思わなくて・・・あたし、皇帝陛下が大好きで・・・どうしてもお嫁さんになりたくて・・・でも、夢中になるとすぐに見境が無くなっちゃうんです・・・」
巨体の女戦士はまるで子供の様に、ひっくひっくとしゃくりあげながら泣いていた。
・・・体は大きいけど心は恋する乙女だったんだね!
年齢も見た目の割にそれほど高くないのかもしれない。
「わたくしはララのおかげでこうして無事だったので気に病まなくてもいいですよ」
「ミラさん・・・あたしを許してくれるんですか?」
「ええ、さっきの試合はとてもいい戦いでしたよ」
「うん!二人とも強かったよ!歴史に残る名勝負だよ!」
「そんな・・・あたしなんて無我夢中だっただけで・・・」
「ええと・・・あなた、お名前は?」
「レダです。南の方にある密林の王国の王女です」
「レダさん、あなたはとても強いけど、気持ちをコントロールする訓練もした方がいいかもね。もしよかったら私が稽古をつけてあげるよ」
「えっ!本当ですか!国ではみんなあたしより弱くって、もう誰も稽古の相手をしてくれなかったんです!」
そうか、練習相手がいなかったから、加減がわからなかったんだね。
「及ばずながら、わたくしも稽古に付き合わせていただきます。レダさんと打ち合うのは、わたくしにとっても良い鍛錬になりそうです」
「ありがとうございます!ミラさん!」
ミラとレダも仲良くなれそうで良かったよ!
「あ、そうだ!シン、この試合の勝者はどうなっちゃうのかな?」
「それなんだが・・・ルールでは、俺の股間に攻撃を入れたら合格だったから、直接攻撃を入れたミラが合格となる」
「えっ・・・わたくし、合格したんですか?」
「おめでとう!ミラ!これでミラもシンのお嫁さんだよ!」
「あ、ありがとうございます!これでララと一緒になれます!」
・・・そいえば、動機がちょっと不純だった。
「おめでとうございます・・・ミラさん」
レダは、しゅんとなって悲しそうだった。
そうだった・・・レダはシンのお嫁さんになりたくて頑張ってたんだ。
「そして、もう一人、間接的にだったが、俺の股間にダメージを与えたレダも合格とする!」
「えっ・・・あたしも合格したんですか?」
レダは思いっきりびっくりした顔をしている。
「ああ、レダの戦闘能力は卓越したものだ。皇帝の子孫を残すにふさわしい。ぜひ我が妻になって子を産んで欲しい」
「ええええええっ!あたし、皇帝陛下のお嫁さんになれるんですか!」
「ああ、その体なら、子がたくさん産めそうだからな。優秀な子供をたくさん産んで欲しい!」
シンってこういうタイプも好みだったんだ!
確かにレダは筋肉はすごいけど、美人だし、スタイルもいいからね!
抱きごたえはありそうだよ!
「うそ!夢みたいです!」
「夢じゃないよ!良かったね!レダ!」
「やったぁ!皇帝陛下のお嫁さんだぁ!」
嬉しさのあまり高く飛び上がったレダは、空中でポンっと姿が変わった。
落下してきたレダをシンが受け止めると・・・それは小さな女の子だった!
シンの腕の中には、10~12歳ぐらいの華奢でかわいらしい美少女が収まっていた。
「ええーっ!レダ!体が縮んじゃったよ!」
「・・・これが元の姿です。あたしの一族は闘気が満ちると体が大きくなるんです」
「そうだったんだ!そうすると・・・レダって何歳なの?」
「いま12歳です」
「「「12歳!」」」
・・・思った以上に幼かった!
そして、レダを抱いているシンの姿は・・・親子にしか見えなかった。
「・・・シン・・・レダと子作りするのは成人するまでおあずけですよ!」
「・・・ああ・・・わかってる・・・もちろんだとも」




