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勇者の弟子はお嫁さんになりたい!  作者: るふと
第5章 砂漠の魔女
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1話 勇者の弟子と重婚

第二部 第5章 砂漠の魔女 開始します。


「皆の者聞け!余はそこにいるララを妃として迎え入れる!」



 謁見の間は一瞬の沈黙のあと、騒然となった。



「陛下!何をお戯れを!罪人を妃になど、ありえませぬ!」

「このような事、前代未聞です」

「陛下もこの魔女の毒牙に侵されたか・・・」

「いや、陛下が惑わされるのも分からなくないが」

「確かに、この娘の美しさは・・・何と言うか、感情がおさえきれなくなってしまいそうだ」




 砂漠の王国の王城の謁見の間では、私の二度目の審議が行われていた。

 裁判官が審議を開始しようとしたところで、皇帝であるシンが待ったをかけたのだ。


 シンはおもむろに玉座から立ち上がると、私を妃にする事を宣言したのだった。




 私の目の前には、皇帝シン、そして帝国の重鎮たちが並んでいる。


 この二週間、シンやミラとの会話で得た情報の他に、変装して城内や王都内を回って情報収集をしていた。

 ここに並ぶ重鎮たちの顔ぶれの殆どを把握している。

 それぞれの所属している国と、帝国に協力的な者、反意を抱いている者、どんの様な意図でこの法廷に臨んでいるのか、大体の情報は掴めている。



 ちなみに私はこの謁見の間に入った時から満面の笑みを崩していない。

 もちろんお化粧は前回以上に気合が入ってるよ!

 見た目の好感度はばっちりのはず。



「皆の者!鎮まれ!余は惑わされてなどおらぬ!」


 シンは一喝で会場内を鎮めた。



「先の一件だが、あれは危害を加えられたのではない。婚姻を前提とした男女の戯れにすぎぬ」


「何をおっしゃいます!陛下!」


 声をあげたのは反帝国派の貴族だ。


「そんな話は後から考えたでっち上げでは!」


「ほう、余が偽りを申したというのだな?」


「その様な事は・・・でもおかしいではありませんか?陛下とその娘に接点など無かったのでは

?」


「余は世継ぎを作る相手として最高の女を探していた。その娘は余に匹敵する剣の達人だ」


「まさか!このような容姿で、それほどの剣の達人などと、そんなはずは!」


「そう、容姿に加え、知識と知恵も相当なものだ。これほど皇帝の妃にふさわしい者もおるまい」


「そこで余は提案したのだ。余の股間に蹴りを入れられたら妃に迎え入れると」


「何と!そのようなお戯れを」


「そして、見事に余の股間に強烈な一撃を決めたのだ」


「その様な荒唐無稽な経緯を信じろと?」


「たしかに、悪ふざけが過ぎて、現実味が無くなってしまったな。よかろう!では。こうしよう」


 シンは声を張り上げた。


「皆の者!聞くが良い!余と婚姻を希望する女には平等に機会を与える。余の股間に蹴りを入れられた者は全員を妃にしてやろう!」


「陛下!何を馬鹿な事を!」


「そもそも、余の股間に蹴りを入れる事が可能な女がいると思うか?」


「いえ、確かに、陛下に攻撃を入れられる相手がいる事自体がにわかには信じられません」


「そうであろうな、ふむ!女だけでは不公平だな?男は余と剣で勝負して、もし勝てたのなら何でも望みをかなえてやろう!望むなら皇帝の座もくれてやる」


「陛下!さすがにそれは!」


「余に勝てるほどの男ならその価値はあると思うが?」


「まあ、陛下に勝てる者などおりませんでしょうが・・・」




「帝国全土に通達しろ!開催は一週間後だ!」



 シンはそれを告げると、謁見の間から去って行った。




「陛下の気まぐれにも困ったものだ・・・では審議を続ける」


 裁判官は気を取り直して審議を再開した。



「ララに問う。先ほどの陛下の発言は真実か?」


「はい、オアシスの町で陛下から提案されました」


「陛下の妃になる事には同意するのだな?」


「はい」


「先日の審議の際にはこの事に関する発言は無かったが?」


「陛下から正式には発表するまで待てと言われていました」


「なるほど・・・そうであれば罪状はかなり軽減される。だが、陛下に危害を加えたことに変わりはない。無罪という訳にはいかぬ」


「あの、質問してもよろしいでしょうか?」


「何かね?」


「世継ぎを産めば恩赦があると聞いたのですが?」


「確かに、世継ぎを出産した妃には恩赦が与えられる。それも踏まえて再び協議を行う」




「本日の審議はこれにて閉廷する。次回、陛下の開催される催しの後に判決を申し渡す」




 ふう、何とか終わったよ!


「さあ、ララ、行きましょう。これで正式に後宮にいても問題無い事になりました」


「ありがとう、ミラ」



 私はミラと一緒に後宮に戻って来た。


 あてがわれた屋敷は居心地よくて、すっかり自分の家の様な安心感だ。


「ララ様、おかえりなさいませ。首尾はいかがでしたか」


「うん、これで私は正式にシンの妃候補として公知されたよ」


「しかし、陛下があのような催しを提案するとは聞いておりませんでした」


「ミラも知らなかったんだ?」


「はい、聞いておりませんでした、本当にあの場で思いついたのかもしれません」


「ララ様、催しとは何ですか?」


 私はシィラにシンの提案を説明した。


「それは・・・ジオ様が参加できれば全て解決するかもしれませんね」


 シィラがぽそっとつぶやいた。


「・・・ジオ様・・・がですか?」


 それを聞いたミラは、ベッドで寝ている赤ちゃんのジオ様を見て首を傾げた。


「ううん!なんでもないの!気にしないで!」


 シンとミラには、まだジオ様の秘密は話していないのだ。




「その催しなんですが・・・わたくしも参加しようと思います」


「ミラが?・・・ミラ、シンの事好きだったの?」


「そうではなくて・・・ララが妃になるのなら、私も一緒に妃になってもいいかな、なんて・・・」


 ミラは真っ赤になってもじもじしている。


 ・・・シンではなくて私狙いだった。


「でも、ミラが一緒だと心強いよ」


「ただ、シンに攻撃を決めるのはかなり難しいです。何度も対戦していますが、わたくしが勝ったのは数えるほどしかありません」


「勝てた事があるだけでもすごい事だよ!そういえば、ミラって、剣も強いし、美人だし、仕事も出来るし、シンの理想の女性像に結構近いよね?何で今までミラじゃダメだったんだろう?」


「実は・・・その話はあったのですが、わたくしが、恋愛や結婚に全く興味が無かったのでお断りしたのです」


「今のミラ的にはシンと結婚するのは大丈夫なんだ?」


「シンの事は尊敬していますし、嫌いではありません。命令されればどんな事でも従うつもりでしたが、シンは私に無理強いはしませんので」


「そっか、大切にされてたんだね」


「シンは誰に対してもやさしいです」


 ミラは最初に会った時に比べて、すっかり表情が柔らかくなったな。

 前は常に怒った様な怖い顔をしてたけど、今では私の前以外でも優しい顔を見せるようになった。


 当然、今や城内の男性陣の人気の的になっていたのだ。




(すまない、ララ、俺が普通の体だったら、全て解決したかもしれないのに)


(ジオ様のせいでは無いですよ。それにもう決めましたから!)




 ついに二人目の旦那様との結婚が動き出してしまったのだ。


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