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勇者の弟子はお嫁さんになりたい!  作者: るふと
第4章 砂漠の王国
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10話 勇者の弟子と死罪

「シン!どういう事?あなたが皇帝って!?」



「控えよ!皇帝の御前である!」



 シンは冷静な目で私を見下ろしている。


 そんな!シンが皇帝陛下だったなんて!



「罪人ララよ、陛下と面識がある事は認めるのだな?」


「確かに、二日前、オアシスの町で会いました」


「では、陛下に危害を加えた罪を認めるのだな」



「確かにあの時、この人の股間を思いっきり蹴り上げましたが、その後ちゃんと治癒魔法で治したました。今なら問題なく子供が作れるはずです」



 皇帝陛下は一瞬、眉をひそめた。


 ・・・どうしてだろう?



「自ら犯行を認めたな。今の発言により、お前の罪は確固たるものと確定した」


「えっ?どういう事ですか?」


「今お前が自分ではっきりと証言したではないか、陛下の股間を蹴り上げたと」


「だから、治癒魔法で治したと・・・」


「そういう問題ではない。陛下に危害を加える行為を実行した事が罪なのだ」


 あっ、そうか、未遂でも罪にはなるんだ。

 結果はどうあれ実行してしまってるわけだし。




「帝国の法律により皇帝に危害を加えたもの、あるいは危害を加えようとした者は、たとえ未遂であっても『死罪』となっている」


 裁判官が罪状を述べた。




 ・・・あれ?・・・私、もしかして既に『死罪』が確定になってる?




「更に、人体の急所の中で、あえて生殖器を意図的に狙ったという行為は、皇帝陛下の子孫繁栄を阻止するという意思があるとみなし、極めて悪質な行為であると判断する。よって罪状は更に重く、親類縁者に至るまで、一族全員の『死罪』となる」


 ええっ!それって、ジオ様やルルまで『死罪』って事!?


「更に、皇帝陛下に対しこの様な行為を行なったという事は、戦争行為にも匹敵する重大な問題である。よって、冒険者ララの所属する王国に対しても、戦争賠償金に匹敵する額の賠償金を請求するものである」


 そんな事になったら本当に戦争になっちゃうよ!




「シン!皇帝なんでしょ?何とかならないの?」


「無礼者!陛下に直接話しかけるでない!」



 どうしよう?帝国全体を敵に回しても何とかなるかもしれないけど、それじゃ国家間の戦争が避けられない!


 かといって、黙って殺されるわけにはいかないよ!


 私はパニックで目から涙がにじんできた。

 


「ミラ、何とかならないかな?」


「・・・申し訳ありません、わたしにはどうする事も・・・」


 ミラも目に涙が滲んでいた。



 こんなのってないよ。ここで私達の人生が終わっちゃうなんて!




(ララ!大丈夫か?どうする?やろうと思えばここにいる全員を一瞬で始末する事も出来るぞ)


 ジオ様が念話で話しかけてきた。

 このやり取りをどこかで聞いているのだろう。


(・・・ジオ様、それ、勇者のセリフじゃないですよ・・・)


(どちらかを天秤に掛けろと言われたらオレはララとルルを選ぶ)


(でも・・・やっぱりそれは絶対にダメです)






「本日の審議は、これにて閉廷とする、判決は二週間後に言い渡す」



 ・・・今日の審議は終わったけど・・・これからどうしよう?



「罪人は再び牢に投獄しておくように」


「わたしが牢に連れて行く」


 ミラが私の傍に来た。



「・・・ララ、陛下がお話ししたいそうです。他の者に気づかれれない様に別室にご案内します」


 小声で話しかけてきた。


「ミラ、私、どうなっちゃうんだろう?」


「とにかく陛下のところへいきましょう。さ、こちらへ」




 私はミラに案内されて、皇帝の執務室にやって来た。


 部屋ではシンが待っていた。

 

 先程の玉座に座っていた時の表情ではなく、オアシスの町で会った時の砕けた表情だった。


「二日ぶりだな、ララ、すまない、こんな事になってしまって」


「シンが皇帝だったなんて・・・びっくりしました。どうしてこんな大事になってしまったんですか?」


「あの後俺がララの事をうっかり家臣に話してしまってな、笑い話にするつもりだったんだが、思いのほか深刻に扱われてしまったのだ」


「はい、私も笑い話で済ませられると思ってました」


 でも確かに相手が皇帝だと笑い話には出来ないよね?


「陛下、わたしは退席した方が宜しいでしょうか?」


「ああ、ミラもいてくれ。ララの世話をしてくれたのだろう?」


「はい、世話をしたというか、お世話になってしまったというか・・・」


「・・・何のことだ?」


「なんでもありません!」


 ミラの顔は心なしか赤くなっている。


「そういえば二人は幼馴染なんですよね?」


「そうか、紹介がまだだったな。ミラは王家に近い血筋の貴族で俺の親戚にあたる。今は近衛隊長を務めてもらっている」


「へえ!位は高いと思っていましたが近衛隊長だったんですね?」


「ああ、それに剣の腕はこの国で俺に次いで二番目の強さだ」


「それはすごいです!今度見せて下さいね」


「いえ、わたしなんてシンには遠く及びません」




「さて、では紹介も終わったところで本題に入ろうか?」


 そうだった、私の死罪を何とかしてもらわないと!


「シン、どうにかならないんですか?」


「それが、そう簡単にはいかんのだ」


「どうしてですか?皇帝なんだから命令すれば何とでもなるのでは?」


「・・・この帝国は出来てからまだ日が浅い。各属国の国王は帝国に組み入れられた事にまだ不満を持っているものも多く、この帝国はまだ一枚岩ではないのだ」


「そのため、今、帝国全体の法整備を行なっている最中なのだ。その中で、俺が気まぐれに法を破る訳にはいかんのだ」


 そうか、まだ出来たばっかりの帝国だもんね。


「諸外国の中には帝国に不信感を持っている者も多い。今回の件も、身内に話しているところをたまたま属国の連中に聞かれてしまってな。上げ足を取るつもりだったのだろうが、騒ぎを大きくされてしまったのだ」


「つまり、属国の人たちも納得する解決方法でないといけないって事ですね」


「そう言う事だ」


 何だかややこしい事になってしまったみたいだよ。


「かといって、このままララを死罪にしてしまうと俺にとっても都合が悪い」


「・・・どういう事ですか?」


「俺が子を成せなくなったままだという疑惑が残っているのだ。それを理由に皇帝からの退位を求める声も上がっている。ララの死罪を認めるとそれを認めた事になって状況が悪くなるのだ」


「・・・子供を作ればよろしいのでは?」


「俺はまだ独身だ」


「あれ?皇帝は女好きって噂でしたが?」


「それは求婚の申し出を断るためのデマだ」


「なんでそんな事を?」


「俺にもこだわりがある。結婚相手ぐらいは自分で気に入った相手を選びたいのだ」


 ふーん、意外とロマンチストなんだ。




「・・・そこで、俺から提案がある。全てを丸く収める方法が一つだけあるのだ」


「・・・助かる方法があるんですか!?あるなら大賛成です!死罪を免れる方法があるならなんだってやります!」


「そうか、それは頼もしいな、では・・・」




「ララ、わが妃となれ!」


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