4話 勇者の弟子の装備
「『剣豪』と引き分けとは大したもんだ」
「ゼト様、本気ではありませんでしたよね?」
「いや、結構本気でやってたぞ」
「『身体強化』使ってなかったじゃないですか?」
「お嬢ちゃんも使ってないんだからフェアじゃないだろ?」
「私のは使わないんじゃなくて使えないんです」
「まぁそれに、お嬢ちゃんに傷一つ付けたらただじゃおかないって顔で怖い兄さんがずっと睨んでたしな」
「えっ!?」
ゼト様がジオ様の方をちらっと見たので私も見たら、ジオ様がさっと目線をそらすのが見えた。
「愛されてんな!お前さん」
ゼト様が私の頭をガシガシなで回す。
「そんなんじゃない」
ジオ様が向こうを見たまま反論した。
「えへへ」
頭をくしゃくしゃにされながらも満面の笑みで微笑んだ。
「それでララちゃんの装備だけど・・・ジオ君から頼まれてた装備が用意できたよ」
編み上げがくずれてしまったので、一旦髪を下ろしてブラシでとかした後、編み直しながらセナ様の話を聞いていた。
「まずは『防御特性』を『附加』したライトメイル」
「『腕力増強特性』を『附加』した小手」
「『加速特性』を『附加』したブーツ」
「それと『攻撃力増加特性』を『附加』したレイピアだ」
セナはかわいらしいデザインの装備を机に並べていった。
「わぁ!かわいい!でも特性を『附加』された装備品って貴重品ですよね?よくこんなに揃えられましたね」
魔力による特性を『附加』された装備品が存在する事は知られているが、制作には魔力回路を形成するためのベースとなる希少金属や特殊な素材、大量の魔結晶を必要とし、さらに国内に数人しかいない最高の特殊技能を持った職人が数カ月かけてやっと完成するという貴重品だ。
一般人が目にする事も、ましてや手にする事などほとんどない。
それが4つも並んでいる。
「それにしてもこんなかわいらしいデザインの『附加装備』なんてあったんですね?」
「・・・何でこんなデザインなんだ?」
ジオ様もそこは気になったらしい。
「あぁ、これ全部ララちゃん専用のオーダーメイドだからね!」
「この数カ月間、国内最高峰の装備品職人を総動員して君の装備制作のためだけにフル稼働させてたから」
「ちなみにデザインはお宅んとこのメイドさんたちにこっそりヒアリングしてララちゃんの好みに合わせてもらったよ」
「何でそんなことになった?予算はどうしたんだ?」
「勇者の後継者が今や巷で話題の『剣精様』だって言ったら財務省も職人たちも快く協力してくれたよ?」
「どうしてですか?」
「君、先の剣術大会で華々しく優勝したじゃない、もはやこの王都のアイドル的存在だよ?」
(あぁ!あの時か)
大会で優勝を決めた時、お忍びで観戦に来ていたジオ様を見つけたので満面の笑みでピースサインを送ったら、VIP席のあたりがえらくどよめいていたのを思い出した。
「財務大臣も職人たちも君の熱烈な隠れファンだったらしいね」
「財務大臣なんか最初は渋ってたのに、君だってわかったとたんに
「まぁ、その、なんだ、勇者の後継者にもしもの事があったら国の存亡にかかわる。予算はいくらでも使って良いから、最高の装備を用意したまえ!」
だってさ!爺さんが頬を赤らめるのはちょっと気持ちわるかったよ」
「大丈夫か?この国?」
ジオ様は頭を抱えていた。
「まあ、とにかく装備してみてよ!」
「はい!着替えてきます!」
私は装備品を持って隣の部屋に着替えに行った。
「どう・・・でしょうか?」
着替え終わった私は部屋に戻ってきた。
装備はピンクと白を基調とした女の子らしいデザインだが、その中にも気品と凛々しさがあり、まさに『剣精様』のイメージを具現化したと言える仕上がりだった。
「やぁ!よく似合ってるね!うん、サイズもぴったりだ」
「ええ、とても着心地が良いです」
「ジオ様、どうですか?」
「あぁ、これで心置きなく戦えるだろう」
微妙に目線をそらして答えた。
「ジオくーん、そうゆう事じゃなくて、『かわいいよ』って言ってあげなきゃ!」
「装備の見た目を褒めても仕方ないだろう」
「性能の方もばっちりさ!現存する『附加装備』の中でも最高の性能だね!装備自体の耐久性向上も附加してあるし、多少の破損なら自己修復する機能も附加してある」
「ジオ君てばさぁ、ララちゃんには絶対怪我させたくないから完璧な装備を揃えろうるさくてさぁ!ほんとにララちゃんの事が可愛くってい仕方ないんだよね!」
「そこまでは言ってないだろう!」
ちょっとむきなった。わかりにくいがこの感じは照れてる時のしぐさだ。
「ジオ様!ありがとうございます!」
後を向いてたジオ様の目の前に回り込んで思いっきり微笑んだ。
一瞬凝視してからあわてて目線をそらしたジオ様がかわいかった!
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