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勇者の弟子はお嫁さんになりたい!  作者: るふと
第3章 勇者と海
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13話 勇者の弟子と人魚の魔女

 『上級の魔物』のところに戻ると、二人はまだ戦闘中だった。




「他の魔物は全部倒したよ!こっちの状況は?」


 私は二人にたずねた。


「銛だけなら何とかなりそうなんだが、同時に尾ひれの攻撃が来るので攻めきれないんだ」


 なるほど、あの長い尾ひれが別の方向から攻撃を仕掛けてくるわけだ。


「わかった!尾ひれは私たちが何とかするから、本体を倒して!」


「お願いします!」




 私とジオ様は尾ひれの先端に向かった。


 蛇の様な下半身はうねりながらうごめいている。


 その先端に近づくと、尾ひれの付いた先端部分がこちらに迫って来た!



 私とジオ様は、それぞれ『ウィンドブレード』と『光の剣』の刃を伸ばして、尻尾を二カ所で切断した。


 魔物は短くなった尻尾をこちらに振り回してくる。


 尻尾の先端はすぐに再生をはじめ、ひれのような物が出来始めていた。

 だが、長さはすぐには戻らない様だ。


 ジオ様はすかさず、その尻尾を更に短く切断する。


 私も時間差で交互に尻尾を切断し、魔物の尻尾は次第に短くなっていった。


 そうして、魔物の尻尾を本体近くまで切断した。

 ここまで短くなれは、前側に攻撃することは出来ないだろう。



 本体の前では、テオたちが魔物と対峙していた。


 銛は、付け根から切断され、まだ再生されていない。


 テオとリュアは、魔物の頭部に近付こうとしているが、顎から生える無数の蛸の足に阻まれて近づけない様だ。

 タコの足は再生が早く、切っても切っても追いつかないのだった。


 するとジオ様が『ウィンドスラッシュ』を複数発現させて、魔物の頭部へと飛ばした。


 複数の『ウィンドスラッシュ』が蛸の足を次々と切り落とし、見る見るうちに、全ての足を切り落としていく。


「ありがとう!今よ!テオ!」


『ああ、行くぞ!リュア!」


 二人は魔物の首へと迫っていった。


 再生し始めていた蛸足が届く前に、テオは、光の刃を伸ばした『英雄の剣』で、魔物の首を切り落とした!




 切り落とされた頭は、顎の蛸足の再生が止まり、白濁した液体を流しながら海底へと落ちていった。


 本体も動きと再生が止まり、白濁した液体を流しながら溶け始めた。



 おそらく魔結晶は頭部にあったのだろう。


 『上級の魔物』は活動を停止した。




「やったわ!魔物を倒したのよ!テオ!」


 リュアは背中のテオを降ろし、振り向いて抱きしめ、キスをした。


 テオは真っ赤になっている。




「ジオ様!私たちも!」


 私は隣に泳いできたジオ様を両手で掴んで顔の前に近づけ、キスをした。


(ララ!いきなり何をする!)


(こういう時は、恋人同士はキスをするものなのです!)


 私はキスをしながら念話でジオ様に答えた。




「・・・・・何をしてるんですか?あなた方?」


 駆け付けて来た人魚の戦士たちは、溶けていく魔物の前で抱き合ってキスをする二組の男女を見て呆れていた。




 ・・・まあ、私の方は赤ちゃんに無理やりキスをする母親の図なのだが・・・




『上級の魔物』の討伐が完了し、他の中級や下級の魔物も一掃した私たちは人魚の里へ帰って来た。




「ありがとうございます。『英雄』テオ!・・・そして『勇者』ララ様! これで人魚の里は救われました」


 長老から礼を言われた。



 ちなみに、長老をはじめ、人魚の戦士たちは皆、戦闘が終わって鎧を脱いでいるのだが・・・当然の様に全裸だった。


 胸がむき出しなのは、まだいいとして・・・下半身の付け根の、あの部分が前から見ると丸見えなのだ。


 そう、町の広場にあった人魚の像と全く同じだった。


 広場の像は、芸術家特有のエロティシズムというか、変なこだわりで細部まで作り込まれていたのかと思っていたが、なんと!本物の人魚の体を忠実に再現していたのだった。


(ララ、前が見えないんだが、このままでないとダメか?)


 私は、ジオ様が人魚たちを見ない様に、ジオ様の顔を私の胸に押し付けて抱いていた。


「里を出るまではこのままで我慢して下さい」



 隣にいるテオも、目のやり場に困っているらしく、顔を真っ赤にして明後日の方向を見ていた。


 お礼を言っている長老と目を合わせないのは大変失礼なのだが、長老の方を見てしまうと、当然、その豊満な胸と、成熟した下半身が目に入ってしまう。



 ・・・長老のボディは・・・かなりエロい!


 はっきり言ってシィラ以上のエロさだ!

 つまり、ものすごーくエロいのだ!


 若い男性がこれを目の当たりにして正常でいられるわけがない。



 そんなテオの隣には、同じく全裸のリュアが、テオと腕を組んで、胸を押し付けて並んでいた。



「皆様には何かお礼を差し上げたいのですが、望みのものがあればおっしゃってください」


 長老がテオと私たちにたずねた。



 テオはしどろもどろになりながら、目線を逸らしたまま答えた。


「オレの望みは決まっています!・・・リュアと結婚させて下さい!」


「テオ!・・・嬉しいっ!」


 リュアはぐっとテオを抱きしめた!


「それは構いません。ただし、この集落と我々の事は、生涯人間には秘密にして下さい」


「もちろん大丈夫です。今更おれの言う事なんて誰も信じませんので」


「あなたが望むならこの集落に住んでも構いませんよ?」


「・・・それは遠慮します。おれには刺激が強すぎます・・・」


 まあ、この全裸の人魚たちに囲まれて生活してたら落ち着かないよね。


「じゃあ!あたしがテオの島で一緒に暮らすね!」


「それは助かるが、その体では不便じゃないのか?」


「それなら大丈夫!ほら、見て!」


 そう言って、リュアはテオの前に立つと、次第に下半身が変化していった。


 ・・・そして、人間の足のある、女性の体に変化した・・・もちろん全裸だが。


 一瞬その姿に見とれていたテオは、慌てて目線を逸らした。


「ねっ!あたし達って、人間の姿にもなれるんだよ!」


「わかった!わかったから服を着てくれ!」


「えっ?何で?海の中では服なんて着ないのが当たり前だよ?」


「じゃあ、地上に出たら必ず服を着てくれ!」


「うん、わかった!じゃあ、テオがかわいい服をえらんでね!」


「ああ、リュアに似合う服を選んでやるよ」


「うれしい!」



 何とか話がまとまったみたいだ。


 テオは全裸のリュアに抱きつかれ、真っ赤になってドギマギしているが・・・




 それにしても人魚って普通に人の姿になれたんだな。


「もしかして、人の姿で地上で生活してる人魚もいるのですか?」


 私は長老に聞いてみた。


「はい、実は世界各地におります。ここの町でも数人が人間のふりをして生活しています」


「へえ、そうだったんですね」


「この事は他言無用でお願いします。それで、ララさんは望みの褒美がありますか?」


「私は別にお礼はいらないんだけど・・・ネネさんの事を知ってたら教えてもらえますか?」


「ネネ様の事ですか?」


「はい!そうです」


「この里は数十年に一度、魔物の大攻勢を受けるのですが、ネネ様は毎回、その数日前に現れて、魔物の出現を教えてくれるのです」


「ネネさんが何者かって知ってますか?」


「詳しくは聞いていませんが・・・『魔女』だそうですね」


 魔女って事は知ってるんだ。


「魔女の事って、他に何か知ってますか?」


「我々人魚の祖先は魔女だったという伝承もあります」


「えっ?人魚の祖先が魔女?」


 そんな話初めて聞いた。


「はい、大昔の魔女が、海の底で暮らすために自分の体を魔法で人魚の姿に変え、生涯を人魚の姿ままで終えたと伝わっています。我々はその子孫だという事です」


(ララと同じ事をやった魔女が昔いたんだな)


「ちなみに人魚って、どうやって子孫を残すんですか?」


『我々人魚は長寿ですので、たまにしか子供を作りませんが、子供を作る時は人間の男性と結ばれて、子供を作ります」


「へえ!人間との間に子供が作れるんですね」


「はい、人魚の姿で子供を作ると女の子しか生まれず子は全て人魚となります。逆に人間の姿で子供を作ると人間の子供が生まれます。テオはその子孫です」


 ああそうか、人魚の姿のままで人間の男性との間に子供を作らないといけないから、あの体の構造になる訳か。


 ・・・でも、それだったら隠すべきところは隠して欲しい。


「そうなんですね・・・ネネと、人魚の祖先以外の魔女の事って何かご存じでは無いですか?」


「・・・そうですね・・・ああ、『強欲の魔女』が最近復活したという噂を聞きました。伝承では老婆の姿をしていて、全ての魔女の頂点に立つ偉大な魔女と聞き及んでいます。しかし大変慈悲深く心優しい魔女だと伝え聞いておりますので、特に警戒する必要は無いと思って忘れておりました」



「へっ・・・へぇ、そうなんですね・・・それは私も会ってみたいです・・・」



 ・・・なんだか自分だって名のりづらくなっちゃった・・・



「最後に『情動の魔女』っていう魔女はご存じないですよね」


「『情動の魔女』ですか・・・ええと、前にネネ様にも聞かれました。もし『情動の魔女』の事を聞いたら教えて欲しいと。何でも行方不明の魔女らしいです」


 発信源はネネだったか。


 でも行方不明の魔女という情報はわかった。


 と言っても魔女なんてほとんど全員が常に行方不明なんだけど・・・



「ありがとうございました。お礼はこれで十分です」




 私たちはそれから人魚の集落の海底料理でもてなされた後、人魚の集落を後にしてテオの島に戻って来た。




「お疲れ様です、ララ様。ご無事でなによりです」


「シィラの方は大丈夫だった?」


「はい、数体の『下級の魔物』が海から現れましたが、わたしが撃退しました」


 少し打ち漏らしがあったのか?

 シィラが戦えて助かった。


「ありがとう、シィラ。こっちも片付いたよ。ルルもご機嫌だね」


 シィラに抱っこされてルルも嬉しそうに私を見て手を伸ばしていた。

 私はシィラからルルを受け取った。


「ルル様は最近起きている時間が多くなってきましたが、ほとんど泣きません」


 ルルは私に抱かれてにこにこして喜んでいる。


 うん!やっぱりルルはかわいいな!


「だいぶ前に冷凍の母乳を温めて飲ませましたが、そろそろ次の母乳の時間です」


「うん、わかった!ありがとう」




「ところでそちらの女性は?」


 リュアさんは海上に出てから人間の姿になって体に布を巻いていた。


「ああ、紹介するね、この人はリュアさん。この二人は結婚する事になったんだよ!」


「それはおめでとうございます」


「詳しい事は後で説明するね」


「それよりララ様、先ほど、レン様とルナ様がいらっしゃいましたが、何か問題が起きているそうで、すぐに戻られてしまいました。ララ様にも、こちらが片付いたら大至急王都に戻る様にと伝言を承っております」


「王都に?何があったんだろう?」


(すぐに帰った方が良さそうだな)


「はい!ルルにおっぱいをあげたら帰りましょう!」



「テオ!リュア!ごめんね、すぐに帰らなきゃいけなくなっちゃった!結婚式には参加したいから、日取りが決まったら教えてね!」


「ララさん、色々ありがとうございました」


「またいつでも遊びに来てよね!」


「うん!また来るよ!」




 私たちは海辺の生活を後にして、王都へと帰っていった。 


第二部 第3章 完結です。

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