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勇者の弟子はお嫁さんになりたい!  作者: るふと
第3章 勇者と海
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10話 勇者の弟子と海の魔物

 先日は、人魚になったりとはしゃぎすぎて、色々危なかったので、その後はあまり羽目を外さない様に静かに海辺のスローライフを楽しんでいた。


 時間があったので、新しい魚料理もたくさんマスターした。




 今まで『静慮の魔女』は現れず、もうすぐこの町に来て一ケ月が過ぎようとしていた。




 漁師の青年テオは、あれから時々、船で漁をしているところを見かけたが、会って会話はしていない。


 そう言えば、水着のお礼をまだしてなかったな。


「シィラ、明日はテオさんのところに行って先日のお礼に料理でもごちそうしようと思うんだけど」


「そうですね、ここももうすぐ引き払いますし、一度挨拶に行かれても良いかもしれませんね」


「じゃあ、料理の下ごしらえをして、明日はテオさんの島へ行こう」




 翌日、料理の材料を魔動馬車に積んで、海へ出発した。


 魔動馬車は、海の上でも普通に走る事が出来るのだ。


 砂浜から海の方へ進むと何事も無かったかのように海の上を走り続けている。


 魔動馬たちも、かっぽかっぽと軽快な音をたてて、海の上をかけていく。


 そう、魔動馬たちの蹄の音はフェイクなので、水上でも普通に乾いた音が出てしまうのだ。



 あれから、町に人に聞いたのだが、テオさんは島で一人暮らししているそうで、何でも、伝説の人魚のと青年の子孫という話もあるらしい。


 そして、テオさん本人も、人魚に会った事があると言っていて、町では、嘘つきの変人扱いされている様だった。


 ・・・そう、テオさんは私に会うより前に、人魚を見ているらしいのだ。


 今日はその辺の話も聞きたいと思っている。




「この海には本当に人魚がいるのでしょうか?」


「さあ、どうだろうね? でも『魔物』や『勇者』や『魔女』が実在するんだから『人魚』がいてもおかしくないよね?」


(それにララみたいに魔女のいたずらの可能性もある)


 ・・・それを言われると身もふたもない。


 世の中の不思議な伝承って、その殆どが魔女なら出来る事ばっかりなんだよね。


 って言うか、実際、不思議な伝承の中のいくつかは『強欲の魔女』が犯人だって事を知ってるんだけどね。


 でも、この町の人魚伝説は、多分『強欲の魔女』は関係ないみたいなんだよね。


 まあ、他の魔女の仕業って可能性は十分にあるけどね。




 テオさんの島は、一カ所が砂浜で他の場所は岩場になっている。


 砂浜の部分に船着き場があり、テオさんはその近くに住んでいるそうだ。


 朝のこの時間は、テオさんは漁に出ているはずなので、その隙に魔動馬車で島に上陸するつもりだ。


 やがて島に到着したので魔動馬車で砂浜に上陸して、私は馬車から降りた。




「ララさん!どうしてここに?」




 ・・・いきなりテオさんに話しかけられた!



「テオさん!漁に行ってるんじゃないんですか?」



 テオさんは、漁師の服装というよりは、まるで戦士の装備の様だった。


 腰にはロングソードも下げている。



「この馬車で、海を渡って来たんですか?」


 質問しようとしたら先に質問されてしまった!


「ええと、水陸両用の馬車なんです!」


 苦し紛れにそのまま答えた。


「そんな事より、テオさんこそ、どうしたんですか?その姿は?」




「・・・昨日の夜、人魚が現れたんです」


「えっ?人魚ですか?」


 本当にいたんだ!


「おれは子供の頃、人魚に会った事があるんです」


 やっぱり、本当だったんだ。


「・・・嘘つきだって言わないんですか?」


「えっ?嘘なんですか?」


「いえ、嘘ではありません。でも町の人は誰も信じてくれなくて・・・おれが嘘つきだって町で聞いてますよね?」


「でも、本当の事なんですよね?話を聞かせて下さい!」


「・・・信じて・・・もらえるなんて・・・」


 テオさんは少し涙目になって微笑んでいた。


「それで、どうなったんですか?」


「おれは子供の頃両親と一緒に乗っていた船が沈んで、死ぬところだったんだ」


「だけど薄れゆく記憶の中で、金髪の女の子がおれを助けてくれて・・・・・気が付くと一人だけ、この島に打ち上げられていて助かったんだ」


「それからおれは、いつか彼女に会えるかと思ってこの島で一人で暮らし始めたんだ」


「その後何度か、俺が海で死にそうな目に会うと、金髪の少女が助けてくれていたみたいなんだが・・・いつも夢なのか現実なのかはっきりしなかったんだ」


「それが、昨日の夜、はっきりと俺の前に現れたんだ。子供の頃から見ていた、金髪の人魚と、それからもう一人、黒髪の人魚が!」



 ・・・えっ?・・・黒髪の人魚?



「金髪の人魚は、たくさんの魔物が来るから俺に助けて欲しいと訴えてきた。黒髪の人魚が魔物が来る事を教えてくれたそうなんだ」



「ちょっと待って!黒髪の人魚って、どんな顔だったか覚えてますか?」


「それが・・・思い出せないんだ。昨日あった時はっきり顔を見たはずなのに・・・金髪の人魚の顔はよく覚えている。子供の頃に見た人魚と同じ顔だった。ララさんに少しだけ雰囲気のにているかわいらしい顔をしていた」


 

 テオさんは、金髪の人魚の顔を思い出してうっとりしていた。



「あの、お取込み中すみませんが、黒髪の人魚って、まだ、近くにいるんでしょうか?」


「黒髪の人魚は、魔物の事は伝えたからすぐに旅立つと言っていました」


「そんな・・・」


(ララ、昨日の夜ではもう見つけるのは無理ではないか?)


「はい、ジオ様、今回は失敗です」



 これだけ準備してたのに・・・あっさりスルーされてしまった。


 まさか人魚になって現れるとは予想してなかった。


 自分が人魚に化けて遊んでいたんだから、当然可能性としてはあったのだ。


 だが恐らく、私の様に肉体を変化させたのではなく、彼女の得意とする認識阻害魔法の応用で、人魚の姿に見える様に思いこませていたのだろう。




(ララ!そんな事より、魔物の対応をしないといけないだろう?)


「そうでした!魔物を何とかしないと!」


「ララさん?誰と話してるんですか?」


「テオさん、魔物は?魔物はどこに現れるんですか?」


「ここから少し沖に出たところの海底に人魚の集落があるそうなんです。そこを通過したら、その後この町に来るみたいです」


「人魚の集落?人魚っていっぱいいるの?」


「金髪の人魚がそう言ってました。おれはこれから人魚の集落に行って一緒に戦うつもりです」


「町の人にこの事は?」


「人魚たちは町の人たちに集落の事は知られたくないそうです。いずれにしても集落の前で魔物を食い止めないと集落は全滅してしまいますから!」


 それで魔動馬が監視してたのに町に伝令が無かったんだ。


「わかったわ!私たちも手伝います!人魚の集落を守りましょう!」


「えっ?手伝ってくれるんですか?・・・でも、『下級の魔物』や『中級の魔物』の大群の中に『上級の魔物』もいるみたいなんです。ララさんには危険です」


「大丈夫!『上級の魔物』には慣れてるから!」


「そんな、『上級の魔物』に慣れてるなんて、『勇者』でもない限り・・・・・まさか!」



「準備するからちょっと待ってて!」



 私とジオ様は魔動馬車に戻って戦闘の準備を始めた。




 初めての水中での魔物討伐だ。


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