表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
勇者の弟子はお嫁さんになりたい!  作者: るふと
第3章 勇者と海
152/317

9話 勇者の弟子と漁師の青年

「こっちに人魚が来なかったですか?」


 漁師の青年は私に向かってそう訊ねた。



 わあ!やっぱり、しっかり見られてるよ!



「ええと・・・? 人魚ですか?・・・見ませんでしたけど?」


「おかしいな?こちらの方に泳いできたと思ったんですが・・・」


 しかも、人魚を捕まえようとしてるのかもしれない。


「あの?人魚なんて本当にいるんですか?」


 とりあえず、すっとぼけてみる事にしよう。


「さっき、沖で漁をしていたら、人魚が水面から跳ね上がるのを見たんです。広場にある人魚の像とそっくりな金髪の人魚でした」



「まあ!そうなんですか?それなら私も見たかったです」


「ただ、胸は人魚の像より小さかったです。まだ子供の人魚かもしれません」


 私、一応大人の女性なんですけど!


 ・・・危うく声に出して叫びそうになった。


「そういえば、あなたも金髪ですね?この辺の方では無いですね?」


「はい、旅の途中でこの町に立ち寄った者です」


「そうなんですね?この町にはしばらく滞在されるのですか?」


「一ケ月ぐらいは滞在するつもりです。海を満喫しようと思いまして」


「そうですか、それならもし、人魚を見かけたら教えてもらえませんか?おれは向こうの島に住んでる漁師で、テオといいます」


 テオと名のった漁師の青年は右手を差し出した。


「私はララです。宜しくお願いします」


 私も右手を差し出して握手をしようとした。



 ・・・ その時、海から突風が吹いて来て、私の服が風でまくれ上がった。



 ・・・ん!・・・それって、だめじゃない!



 下着を着けていなかったのだ!

 今、服がまくれ上がったら全部この人に見えてしまう!


 私はまくれあがり始めた服をおさえようと思ったが、もう間に合わない!


 私は神速で、胸と太腿の間を直接手で隠したのだ。 



 ・・・今のタイミングなら、ぎりぎりで大事なところは見えなかったはず!



 ・・・大事なところは見えていないはずなのだが・・・



 ・・・胸と腰の布地か完全にめくれ上がって、ほぼ全裸に近い状態で、胸と股間だけを手で隠しているという、かなり恥ずかしい状態になってしまった。



 青年を見たら、真っ赤になって硬直していた。



 ・・・肝心なところは見えていないはず・・・だけど相当エロい姿を見せてしまった。


 しばらくの沈黙の後、突風が収まって、布地が私の手の上にふわっと被さった。



「・・・あの・・・申し訳ありません・・・お見苦しい所をお見せしてしまいまして・・・」


「いえ、とんでもない!大変すばらしいものを・・・いえっ!なにも!なにも見ていません!・・・大丈夫です!」


「・・・はあ、恐れ入ります」


 私も、青年も動揺して、会話がおかしな事になっている。



「・・・あっ!そうだ!・・・これ、あなたのですよね?」


 青年はズボンのポケットから小さく丸めた布地を取り出した。


 手のひらで広がったそれは、海に流された私の水着だった!


「あっ!そうです!私のです!さっき泳いでいたら流されてしまって・・・」


「海に浮いていたので拾いました」


「ありがとうございます!」



 水着を受け取ろうとしたが、私の手は布地の下で直接胸と股間をおさえたままだった。


 ・・・これはこれで、かなり恥ずかしい状態だった。



 私は、布地がめくれない様に、そおっと手を引き抜いて、青年から水着を受け取った。


 その時に触れた青年の手も、受け取った水着もちょっと温かくなっていた。



 少し気持ち悪いが、身に着けない訳にはいかない。


「あの、申し訳ないのですが少しの間、後ろを向いていただけないでしょうか?」


「あっ、これは失礼」


 青年は少し離れて後ろを向いた。


 私はその間に、急いで水着を身に付けた。



「もう大丈夫ですよ」


 

 振り向いた青年は、真っ赤になって、ちらっ、ちらっと私と自分の手を見比べていた。



 ・・・ああっ!私ってば、さっき胸と下半身を直接おさえていた手を洗わずに、この人に触れたのでは!?


 

「わああああ!ごめんなさい!今、洗います!」


 私は思わず魔法で手から水を出して自分の手を洗い、それから青年の手を取って水で丁寧に洗い流した。



 胸や下半身を触った手で、他人に触れるなんて絶対だめだった!



「えっ?それって、魔法ですか?」


 私の手からは、まだじょろじょろと水が流れ落ちていた。


「あっ!これは!」


 私は慌てて、手から出ている水を止める。


「魔法陣も詠唱も無しで・・・どうやって?」


 うっかり普通に魔法を使っちゃった!


「これは・・・・・手品!・・・そう!手品です!ほら!こんな風に!」


 私は右手の人差し指を上に向けて、指先からぴゅーっと水を飛ばした。


「宴会のかくし芸で良くやるんです、得意なんですよ!」


 今度は左手の人差し指からもぴゅーっと水を飛ばす。


「ふふっ、面白い人ですね」


 青年は笑い出した。


 何とか誤魔化せたかな?


「では、そろそろ仕事に戻ります。人魚の情報があったら待ってます」


「今度、水着のお礼をさせてください」


「いえ、お気遣いなく。それでは。そちらのマダムも、失礼します」


 青年は、そう言ってシィラの方に会釈すると、船の方に去って行った。



 どうやら、ジオ様とルルはシィラの子供だと思ったのかもしれない。



 

 それにしても、人魚の事を妙に気にしていた様だけど、何かあるのかな?


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ