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勇者の弟子はお嫁さんになりたい!  作者: るふと
第3章 勇者と海
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8話 勇者の弟子と人魚

 私たちは絶壁の下の砂浜に来た。


 絶壁の真下は岩場になっていて、長い砂浜はここで終わっている。


 町の人たちはこの辺りまで来て泳ぐ事は無いみたいなので私たちのプライベートビーチだ。



「さあ!泳ぐよ!」


 私は、さっき購入した服の胸と腰の布地を外して水着姿になった。


 大きな花柄の付いたかわいい水着だ。



(ルルは俺が見てる。シィラと泳いで来い)


「ジオ様、ありがとうございます!シィラ!ルルはジオ様が見てくれるから一緒に泳ごう!」



「いえ、わたしがルル様を見てますのでお二人で行かれては?」


「いいからいいから!こんな時ぐらいシィラも楽しもうよ!」


「・・・そうですか?・・・では、そうさせて頂きます」


 シィラも胸と腰の布地を外して水着姿になった。




 ・・・・・これは!・・・かなりエロいぞ!



 布地の少なめの黒い水着はシィラの成熟したボディを絶妙にエロく演出していた。

 女の私から見ても、放っておけないエロさだった。



 そして、当の本人は自分の姿のエロさに気が付いていない。



(ふたりとも良く似合ってるぞ)



 良かった、ジオ様はシィラのエロさに誘惑されていない。

 さすが『勇者』の精神防御だ。



 私はシィラと二人で海に入った。


 海の水温は思ったほど冷たくは無く、丁度良い温度だ。


「泳ぐのは久しぶりです」


 シィラはゆったりと泳ぎ始めた。


「ふふふっ!シィラ、泳げるんだ!」


「はい、冒険者時代は川を泳いで渡ったりする事もありましたので。でも海で泳ぐのは初めてです」


 私も、子供の頃は川や湖ではよく泳いでいたので泳ぎは得意だ。

 というか、今にして思えば泳ぎもお父さんにしっかり仕込まれていた。


 私はシィラと二人で童心にかえって海を楽しんだ。


 最初は遠慮がちだったシィラも次第に本気で楽しみだしていた。




「ふう、楽しかったです」


 一通り楽しんだ私とシィラはジオ様とルルが待っている所へ戻って来た。


 ルルは潮風に吹かれて気持ちよさそうに手をぱたぱたさせている。


 それをあやしているジオ様と、父子の微笑ましい光景だった。



 ・・・まあ、見た目は赤ちゃん二人がじゃれている図なのだが・・・




「では、ジオ様、交代しますね。ララ様、今度はジオ様とお楽しみください」


「うん!じゃあ、ジオ様、行きましょうか?」


(ああ、この体でどの程度泳げるのか試してみよう)




 私とジオ様は波打ち際に向かった。


 ジオ様は、砂浜の上を駆け抜けていく。


 走りにくい砂の上を、滑る様に駆け抜ける。


 流動する砂の上を駆け抜けるのは強靭な脚力と高度な技術を必要とする。

 お赤ちゃんの足でそれを行なっているジオ様の身体コントロール能力はかなりのものだ。


 私も負けずに追いかけるが、ついて行くのがやっとだ。




 砂浜を一気に駆け抜け、そのまま海に飛びこむ。


 ジオ様は、体をくねらせて海の中を推進する。


 赤ちゃんの手足は短いので、それで水を掻いても大きな推力は得られない。

 体ごと魚の様にうねらせた方が大きな推進力が得られるのだろう。


 それにしてもとんでもない速さだ。


「ジオ様!待って下さい!」


(ははっ、捕まえてみろ、ララ)


 ジオ様はまさに水を得た魚の様に、水中を縦横無尽に駆け巡っている。


 私も必死に泳いでついて行こうとするが、私の細長い手足は水中で移動するのには、やっぱり不利だった。


 どうしてもジオ様に追いつけない。


 


「ジオ様、必ず捕まえて見せますからね!」



 私は、試してみたかった魔法を使ってみる事にした。



 自分の体に魔法をかけると、私の体は下腹部から下が変化し始めた。


 すると、セパレートの水着の下側がするっとが脱げてしまった!


 私は慌てて脱げてしまった水着を回収した。


 水着は回収したが、再び穿く事は出来ない。



 ・・・なぜなら、私の足は、魚の尾ひれに変化してしまったからだ。




 そう、魔法で自分の体を『人魚』の姿に変えたのだ。




 『強欲の魔女』の使っていた魔法の中には動物に化ける魔法があり、それを応用してみたのだ。


 『強欲の魔女』の魔法は、全身が猫や犬、鳥などに変化する魔法だったのだが、私は下半身だけを魚に変える魔法にアレンジした。


 例の人魚の像を見た時に思いついて、一度試してみたかったのだ。


 ・・・ちなみに、鱗の始まる位置はおへその少し下あたりからにしてある。

 広場の人魚の像みたいに恥ずかしい部分を丸出しという訳にはいかないからね!


 上半身は人間のままなので、当然胸には水着をつけている。


 脱げてしまった水着の下側はとりあえず胸にしまった。




 さあ!これでジオ様に追いつけるぞ!



 私は下半身を魚の様にくねらせて、一気に加速する。



 うわっ!すごい水圧!



 顔にすごい勢いで水流が当たる。


 上半身にしっかり力を入れておかないと、水圧で持って行かれて首や背骨が折れてしまいそうだ。


 そうだよね、上半身は水の抵抗を無視した人間の形のままだからね。

 人魚の体形って、あらためて考えたら、それほど泳ぐのに適していないよね?


 むしろ全身魚になってしまった方が手っ取り早いのでは?


 いや!あえておとぎ話を再現する事に意味があるのだ。


 これは様式美の問題だ!



 仕方ないので不本意ながら上半身は身体強化でがんばりつつ、下半身の推進力に耐える事にした。


 だんだんコツが掴めて、速度が出せるようになって来た。



 ジオ様を捕捉したので、一気に追い上げる。


(ジオ様!捕まえちゃいますよ!)


(ララ!どうしたんだそれは!)


 ちなみに水中なので念話で会話をしている。


(魔法で人魚になってみました!これならジオ様に追いつけます!)


(また、おかしな魔法を使ったな)


(さあ、覚悟して下さい!)


(それはどうかな)


 ジオ様は急激に方向転換した。


 赤ちゃんの小さい体はやはり小回りが利く。


 私も方向転換して追い上げる。


 だがあと一歩というところでジオ様は方向転換してすり抜ける。


 どうやら最高速度は私の方が速いのだが、ジオ様はとにかく小回りが利くのだ。


(ははは、どうした?人魚になってもそんなものか?)


(ジオ様!必ず捕まえてみせます!)


 しかし、何度捕まえようとしてもジオ様は器用にすり抜けるのだ。



 もうっ!どうすればいいんだろう?



 そうだ!いい事思いついた!




 ジオ様が私の手をすり抜けたところで、私は水面から大きく跳ね上がった!


 そう、一旦空中に出た方が早く移動できるのだ!


 私はジオ様が方向転換した方向へ、水面を尾びれで蹴って、大きく空中へ舞い上がった。


 そしてジオ様の進行方向に先回りして着水したのだ。


(捕まえました!)


 私は着水と同時にジオ様を両手でしっかりと胸に抱きしめたのだ。


(その手があったか、さすがだな、ララ)


(もう離しませんよ!)


 私は胸にジオ様を抱いたまま、砂浜のシィラ達がいる方に戻っていった。




「ララ様!どうなさったんですか?その姿は!」


 人魚の姿で砂浜に上がると、さすがにシィラはびっくりしていた。


「あはは!魔法で人魚になってみたんだよ!どう?似合うでしょ?」


 私はジオ様を片手で抱いて、ポーズをとってみた。


「人魚になりきってお楽しみ頂いたようで良かったですが、胸まで見せなくてもよろしかったのでは?」


「えっ、水着はつけてるよ・・・・・あれっ?無くなってる!」


 いつの間にか胸の水着な無くなって、おっぱいが丸見えになっていた。


(ララ、俺を追いかけている時から無かったぞ)


「えっ!じゃあ、最初の水圧でとれちゃってたんだ!」


 全然気が付かなかった!


「たいへん!拾ってこなきゃ!」


 水着の下側も胸に押し込んでいたので一緒に流されちゃったよ。




「そんな事よりもララ様」


「どうしたのシィラ?」


「先ほど沖の方でその姿で水面から高く跳ね上がりましたよね?」


「うん、ジオ様を捕まえる時にね」


「その姿を、沖の方にいた漁船の方に見られたようですよ」



「・・・・えっ!人がいたの?」



「はい。しっかり見ていた様です」


「ええっ!恥ずかしい!おっぱい見られちゃったよぅ」


「おっぱいよりも、その姿の方が問題かと?」


 ・・・確かに・・・人魚の姿を見られたって事は・・・・


「今頃・・・大騒ぎになってるよね?」



「はい・・・そしてこちらに向かってきています」



 シィラが指さした方を見ると・・・漁船が真っ直ぐこちらに向かってきている所だった。



「大変だぁ!どうしよう!」


「とりあえず、元の姿に戻って下さい」


「そうだね、すぐ戻るよ!」



 私は、再び自分の体に魔法をかけて、魚になっていた下半身を元の人間の足に戻した。



「ふう、これで大丈夫!」


「ララ様・・・大丈夫ではないと思いますが?」


「えっ?ああっ!そうだった!」


 人魚から人間の姿に戻った私は全裸だったのだ!


「ああ、もう漁船が来ちゃう!」


 流された水着を取りに行ってる時間がない。


「ララ様、とりあえずこれを!」


 シィラが渡してくれたのは、海に入る時に外した胸と腰に巻く布だった。


 慌てて布を胸と腰に巻いて大事なところを隠した。



 ちょうど布を巻き終わったところで、漁船が砂浜に到着した。



 漁船から人が歩いてくる。



 歩いてきたのは青年一人だけだった。




 そして、青年は私の前まで歩いてきた。




 「すみません。こっちに人魚が来なかったですか?」


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