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勇者の弟子はお嫁さんになりたい!  作者: るふと
第3章 勇者と海
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5話 勇者の弟子と人魚の伝説

「『人魚』ですか?」



「ああ、この地方に伝わる古い言い伝えでな。海から大量の魔物が現れて町が襲われた時に、金髪の人魚が魔物を追い払ってくれたのさ」


 聞いた事無いけど、そんな伝承があったんだ。




 店のおじさんが人魚の話を詳しく教えてくれた。




 昔、この町の近くの海には時々金髪の人魚が現れて、若い男性を誘惑してはからかって遊んでいたそうだ。


 しかし、少しいたずらが過ぎた人魚は、町の人たちに捕らえられて、牢屋に閉じ込められてしまった。


 とらえた人魚の世話は、唯一人魚の誘惑に惑わされなかった町で一番腕の立つ剣士の青年に任された。


 青年は、度重なる人魚の誘惑に惑わされず、誠実に人魚の世話を続けた。


 人間の男性をおもちゃの様に思っていた人魚は、そんな青年の姿に、次第に惹かれていった。


 そんなある日、海から大量の魔物が現れて町が襲われたのだ。


 町の人たちは一目散に町から逃げ出し、人魚だけが牢屋の中に取り残されてしまった。


 そんな時、世話係の青年だけは人魚を助けるために牢屋に戻ってきたのだ。


 しかし、青年が人魚を牢屋から出した時には、周りを魔物に囲まれてしまっていた。

 

 あきらめかけた青年に、人魚は一緒に戦いましょうと進言したのだった。


 剣を手にした人魚は闘神の様に強く、二人は力を合わせて、全ての魔物を撃退したのだ。


 しかし、魔物を全て追い払うと、今度は海の中から巨大な魔物の王が現れた。


 人魚は、青年を背に乗せて海の上を駆け抜けて、魔物の王のところへ行き、水面を飛び跳ねながら青年と共に魔物の王と対決したのだ。


 死闘の末に二人は魔物の王を倒したのだが、力尽きた人魚は青年と共に海に沈んでいった。


 それから、人魚と青年は、町を救った英雄として、現在まで語り継がれているそうだ。

 

 

 

「おかげでこの町は今でも健在だってんで、この町の住人は金髪の美女に特別な思い入れがあるんだよ」


 うーん、よくあるおとぎ話の様な気もするけど・・・


 半分実話で、半分脚色されてるのかな?


「そうなんですね?でも私はそんな大そうな英雄ではなくで普通の旅人ですので」


「ははは、もちろん誰も実話だなんて思ってねえがな」


「あはは、そうですよね」



「だが、この話には後日談があってな。人魚と青年が海に沈んでからしばらくして、青年が砂浜に打ち上げられていたそうだ。青年は海に沈んでからの記憶がなかったが、懐に大きな魚の卵を持っていてな、青年がそれから卵を懐で温め続けると、やがて卵から人間の赤子が生まれたそうだ。赤子はその後、金髪の美しい女性に成長し、やがて二人は結ばれたって話だ」




 まさかのハッピーエンドだった。


 しかもどこかで聞いた事のある様な設定だった。




「広場に『人魚の像』があるから見てみるといい。この町のデートスポットにもなってる」


「はい、そうさせてもらいます」




 私たちは、おじさんに教えてもらった町の広場に行った。




 広場は結構広くて、中央に丸い池があり、その中心に人魚の像があった。


 かなり大きい像で、美しい女性が剣を構えているのだが、足の付け根から下が、人間の足ではなく魚の姿になっていた。




(ララに似てるな)


「ララ様に似てますね」


 ジオ様とシィラに同時に言われてしまった。


 確かに人魚像の女性の顔は私に似ている気がする。



 ・・・そしてこの手の像にはありがちなのだが、着衣はしておらず胸は露出している。


 なぜか人魚なのに下の部分もきわどい所まで作り込まれていた。

 あと少し鱗を上に引き上げてくれたら、恥ずかしい部分が隠せたのに、わざと作りたかったのだろうか?


 ちょっと、自分の裸が見られているみたいで恥ずかしい。


 町ゆく人たち・・・特に男性が私を何となく欲情した様な目で見ていた気がしたのはこのためか。


 しかし、人魚像の胸は私より大きい。

 授乳中で通常よりも増量しているはずの私よりも更に大きいのだ。


 泳ぐのに邪魔ではないかと思える大きさだった。



(俺はララぐらいの大きさが好きだ)


「わたしはララ様ぐらいの大きさの方が好きです」



 ・・・またしても、ジオ様とシィラに同時に言われてしまった!


「何言ってるんですか!二人とも!私は胸の事なんて気にしてませんから!」



 って言うか、なんでシィラは女性の胸の大きさにこだわりを持ってるんだろう?




「ララ様、向こうに青年の像もありますよ」


 シーラに言われて後ろを振り向くと、ちょうど人魚と見つめ合う位置に青年の像が立っていた。



「ジオ様に似てる」


「ジオ様に似てますね」


 ・・・今度は私とシーラがハモってしまった。


 青年の像の顔は、どことなくジオ様に似ていた。




 ・・・そして例に漏れず全裸だった。


 ・・・さらに、例に漏れずあの部分まで精巧に作り込まれていた。




「あの部分もジオ様そっくり・・・」


「あの部分もジオ様そっくりですね」


 ・・・またしてもシィラとハモって・・・・・




「っ!ちょっと待って!何でシィラが知ってるの!」


 あやうくスルーするところだった!



「冗談です。話の流れでララ様がそう言うかと思って合わせてみました」


「もう!びっくりしたよ!ジオ様がシィラと浮気してたのかと思ったじゃない!」


「申し訳ありません・・・というか本当に似てるんですね?」


 シィラが青年の像をまじまじと見つめている。


「シィラは見ちゃダメです!」


 私はシィラの目を隠した。


「ララ様、わたしの目を隠したところで、広場にいる大勢の人たちが見ていますよ?」


 確かにそうだった。


 この人数全員の目隠しをする事は不可能だった。



 周りを見たら、どうやらここはカップルの待ち合わせ場所になっている様だった。


 ここで待ち合わせたカップルたちは、人魚と青年の像を見て、ちょっと顔を赤らめ、なんだかいい雰囲気になっていた。


 聞こえてくる会話から、どうやら、ここで待ち合わせしたカップルは子宝に恵まれると評判らしい。


 いや・・・それは単にそういう気分になって盛り上がってしまうからではないだろうか?



 現に私もジオ様に似ている青年の像のあの部分を見ていると妙な気持になってしまう。


 もし、ジオ様が元の体だったら・・・今晩は我慢できないかもしれない。




 うーん、町の繁栄に貢献しているのかもしれないが・・・複雑な気分だ。



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