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勇者の弟子はお嫁さんになりたい!  作者: るふと
第3章 勇者と海
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1話 勇者の弟子と旅の準備

第二部 第3章 開始します。

 『静慮の魔女』と会って、会話をした。


 だが、肝心な情報を聞き出すには至らなかった。



 しかし、もう一度会えたら全てを話してくれるというのだ。


 これはぜひ会って話をしない訳にはいかない。



 それともう一つ・・・


 『情動の魔女』を見つけろと言われた。


 これまでに聞いた事の無い二つ名の魔女だ。


 『強欲の魔女』の記憶も全てが蘇っているわけでは無い。

 もしかしたら何か因縁のある魔女なのかもしれない。


 『魔女』を探すにしても、人間の中ではおとぎ話と思われているくらいで、有用な情報を持った人間かいる可能性は低い。


 魔女に聞こうにも、接点のある魔女はおらず、唯一の繋がりが『静慮の魔女』だから会おうとしていたのだ。


 『情動の魔女』が今回の件にどうかかわっているのか?

 それも次に『静慮の魔女』に会った時に教えてもらえるのだろうか?




 これまでの統計から分析すると次の魔物大量発生予想地は国外になる。


 まずは国外を旅する準備が必要だ。




 前回と同じ様に、予想地点付近の村などで待機するのが好ましい。


 国外に出るに当たって国境を通過する必要があるのだが、勇者を名のって国境を通過すると、その国の上層部に報告が行って、王室から招集がかかる可能性が高い。


 勇者が外国で活動すると、なぜか必ずその国の国王から、呼び出しがかかるのだ。


 それで、応じてみると、大抵はただのパーティーだったり舞踏会だったりするわけで、国王や貴族たちに囲まれて愛想笑いをしなくてはいけないのは、結構めんどくさいのだ。




「みんな『勇者』に会えるって珍しいから会ってみたいのでしょうね」


(いや、みんなララの姿を見てみたいのだと思うぞ)


「えっ?私?」


(当代の勇者が絶世の美女だという噂は世界中に広まっている。各国の王族や貴族は興味津々という話だ)


「みんな私なんかを見て何が楽しいんでしょうね?」


(ララを見ていたいという気持ちは俺にはよくわかるぞ)


「私が見ていて欲しいのはジオ様ただ一人ですよ!」


 私はジオ様のおでこにキスをした。




「今回は国外に行くに当たって勇者という事は秘密にしておこうと思います」


(国境を通る時はどうするんだ?)


「これです!以前作っておいた冒険者証があります」


 前に勇者パーティに見習いで参加していた時に、取り合えず作っておいたのだ。


 ただ、その後何も手続きをしていないので『下級冒険者』のままだった。



 念のため冒険者ギルドに行って冒険者証の更新をしておく事にした。



 王都の冒険者ギルド入るとみんなから声をかけられた。

 王都の冒険者は殆どが顔見知りだ。


 

 受付のお姉さんのところに行く。


「あら!勇者様!いらっしゃいませ。何か御用ですか?」


「冒険者証の更新をしようと思って」


「えっ!勇者様がですか?」


「うん、全然更新してなかったから念のためにね」


「わかりました。とりあえず拝見しますね」


 私は冒険者証を手渡した。


「ええっ!勇者様、『下級冒険者』のままだったんですか?」


「うん、全然更新してなかったし、昇級試験も受けてないからね」


「内容を確認しますので、少々お待ちください」


 受付のお姉さんは奥に引っ込んでしばらくしたら戻って来た。


「冒険者証の情報がかなり古かったので最新情報に更新しておきました」


「ありがとうございます!」


「それで、勇者様の討伐記録を確認させて頂きました。騎士団の方で管理している勇者パーティーの討伐記録の情報も自動的にリンクされておりましたので、それも加えてポイントを計算しましたところ・・・『中級冒険者』どころか『上級冒険者』の昇級基準もはるかに超えておりまして・・・ご希望でしたら『上級冒険者』の昇級試験を受験する事が可能ですが・・・いかがいたしますか?」


「ええと、国外に出るだけだったら『下級冒険者』でも問題ないんだよね?」


「はい、基本的に冒険者ギルドに加盟している国でしたら、入国税無しで入国が可能です」


「だったらこのままでいいや!」


「そんな!もったいない!わたしがギルド長に怒られてしまいます」


「ギルド長には私から言っておくよ!ありがとね!」


 私は更新の終わった『下級冒険者』の冒険者証を受け取ると冒険者ギルドを後にした。




 屋敷に戻った私は、魔動馬車の置いている工房に来た。




 魔動馬車は前回の旅でも大活躍で、その性能は申し分無かったのだが、一つだけ大きな問題を抱えていた。



 それは、目立つ、という事だった。


 やはり、馬がいないのに走る馬車というのは、街中では注目を集めてしまう。

 旅の目的からするとあまり悪目立ちしたくないので、対策が必要だ。


 手っ取り早いのはとりあえず馬を付けてしまえばいいのだが、馬の管理には色々手間がかかるし、馬がいるといざという時、魔動馬車の本来の性能を発揮できなくなる。


 そこで、私は、魔法で偽物を馬を作る事にしたのだ。


 以前、人間そっくりの人形を作って、疑似的な人格を植え付けて、私の分身として使用した事がある。


 その応用で、疑似的に馬の様に動く偽物の馬を創生する魔法を創作したのだ。


 土系魔法の応用で馬の体を生成し、疑似的な人格というか、馬の自我のような物を植え付けて、あたかも生きている馬の様に行動できる疑似生命体を作り出す魔法だ。



 魔法を発動すると、私の目の前には、穏やかで人懐っこそうな2頭の馬が現れた。




(すごいな!ほんとに魔女みたいだ)


「一応、本物の魔女ですから!」




 私のポリシーとして、日常生活では出来るだけ魔法は使わない様にしている。


 『魔女』ある事がばれないようにするためもあるが、魔法に頼り過ぎると生活がつまらなくなりそうだったからだ。


 『強欲の魔女』の記憶の中には、便利な魔法がたくさんある。

 全てを魔法で解決しようと思ったら、私は、全く体を動かさずにほとんどの事が出来てしまう。


 そんな生活を試してみた事もあったのだが・・・とても退屈だった。




 魔法で何でも出来るというのは、何もしないのと同じではないか?と思ったのだ。




 自分の足で移動して、自分の手を動かして出来る事は、そうした方が楽しいに決まってる。


 普段の生活で、魔法が無ければ出来ない事なんてほとんど無い。




 そんな中で、私が魔法を使うのは限られた条件の時だけになった。




 一つは、魔法を使わなければどうしようもなくなった時。


 人の命がかかっている時なんかに、出し惜しみは無しだ。




 もう一つは、過去に『強欲の魔女』が使った事の無い、新しい魔法を作り出す時だ。




 『強欲の魔女』は生き物を召喚する魔法や、生き物そのものを複製する魔法は使った事がある。

 しかし、今回の様な、『生き物そっくりな作り物』を創生する魔法は使った事がなかった。


 傍から見たら同じに見えるかもしれないが、内部の魔法原理が全く別物なのだ。



 これは『魔技術』を習得した私だから創作できた、全く新しい魔法だ。


 『魔技術』ここ百年ぐらいで急速に発達した技術だ。

 以前に『強欲の魔女』が覚醒していた時代にはまだ存在していなかった。


 この技術に『強欲の魔女』の魔法知識を加えると、色々と面白そうな事が出来そうなのだ。


 この様に、新しい魔法の研究や創作には、折角だから積極的に魔法を使っていこうと考えている。


 今回魔法で作った馬は『魔動馬』とでも呼べばいいかな?




 二頭の魔動馬は私に嬉しそうにすり寄ってくる。


 まあ、そういう風に作ったんだけどね。


 そうとはわかっていても、かわいく見えてしまうものだ。




 二頭の魔動馬を魔動馬車に繋げる。


 馬を繋ぐために魔動馬車の構造を少し変えたが、これらは馬がいない時は格納できる仕組みだ。


 うん!見た目は普通の馬車っぽくなったかな?


 二頭立てにしては馬車の車体が少し大きいけど、そこまで気にする人はいないよね?




 これなら目立たずに旅をする事が出来るよ!


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