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勇者の弟子はお嫁さんになりたい!  作者: るふと
第2章 静慮の魔女
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9話 勇者の弟子と仮住い

 私とエルは村長さんの案内でしばらくの間の仮住いとなる空き家にやって来た。


「へえ、驚いたね、この馬車は!馬がいないだけかと思ったら乗り心地も別物だね」


 空き家は少し離れているので、村長さんも魔動馬車に乗ってもらったのだ。


「どう?すごいでしょ!」


 ・・・なぜエルが自慢するのだろう?


「ここが、その空き家だよ」



 その空き家は、この村の一般的な家族が暮らす様な家だったが、長い間放置されていた様で、屋根や壁などあちこちが朽ちて穴が空いていた。


 住むためにはかなりのリフォームが必要になるだろう。


「すまないねぇ、他にもいくつか空き家はあるんだが、みんな同じくらいの傷み具合でね」


「大丈夫ですよ、庭に馬車が止められれば問題ないです。でも家も修復して使ってもいいですか?」


「それは構わないけど、直すって言っても大変じゃあないかい?」


「できる範囲でやってみます」


「まあ好きにしていいよ。取り壊す予定だったけどその人手がなかっただけだからね」


「ありがとうございます。ではしばらくお世話になります」



 その日は一旦、エルの屋敷に戻ってエルのご主人と一緒に夕食を食べた。


 エルのご主人からも先日のゲン達の活躍のお礼を言われた。




 翌日は村に行って、まずは村を見て回りながら村人たちに挨拶して回った。


 この村は人口二百人程度の小さな村で、この近郊の穀倉地帯で農作物を作ったり、狩りなどで、仕留めた獲物を町に売りに行って生計を立てているとの事だった。


 村の周囲は木造の頑丈な塀で囲われており、『下級の魔物』の攻撃ぐらいなら耐えられる様だ。


 村の人々はいい人ばかりで、私が挨拶すると快く受け入れてくれた。




「ジオ様、のどかで良い村ですね」


(ああ、そうだな。こんな場所でのんびり暮らすのも悪くないな)


「老後は、こうゆうところで余生を過ごすのも良いかもしれないですね」



(・・・ララの老後って、いつの話だ?)



 ・・・そうだった。魔女として覚醒した私は不老不死なのだ。


 ジオ様が、老いてこの世からいなくなった後も長い時間を一人で過ごさなくてはならないのだ。


 何だったら、ルルの方が私より先に老いて死んでしまうのだ。



 過去の、千年以上を生きた『強欲の魔女』の記憶を思い出してしまった。




 いや、それ以前に、ジオ様も私も、『終焉の魔物』が現れたら命を落とすかもしれないのだ。



 まずはその対策を考えなければならない。


 そのためにも『静慮の魔女』と会って話がしたいのだ。



 先の事はそれから考えればいい。



(すまない、ララ。余計な事を言ってしまったな)


 ジオ様が申し訳なさそうにしている。


「いえ、大丈夫です。先の事は今は考えないで、まずはやるべき事をやりましょう!」


 村を一通り回ったところで、学校らしき場所に着いた。


「わあ、ジオ様、学校ですよ!懐かしいです」


 学校と言っても、村の集会所の建物の様だが、庭先で20人くらいの子供達が剣の稽古をしていた。


 年齢はバラバラだが、おそらくこの村の子供達が全員集まっているのだろう。


 この国では、7歳から12歳頃までは、各地域の幼年学校に子供を通わせる事が義務化されているのだ。


(俺は学校に行かなかったからよくわからんな)


 そうか、ジオ様は、5歳の頃から勇者として大人たちと魔物討伐をしていたから学校には行ってなかったんだっけ?


「ジオ様、折角人生をやり直す事になったんですから、今度は学校に行きましょう!そうですよ!ルルと一緒に学校に通えばいいんです!」


(俺は今更学校に行く必要がないのだが?)


「学校生活を一度は経験すべきです!折角のチャンスなんですから、有効活用しないともったいないですよ!」


(そういうものか?まあ、検討してみよう)


 やった!これで、ジオ様の学生姿を見る事ができそう!


(何か、変な事を企んでいないか?)


「そんな事ないですよ!そうだ、この機会に学校を見学しましょう!」




 私は先生らしき女性に声をかけた。


「こんにちは、しばらくこの村にご厄介になる事になりました。ララと申します。宜しくお願いします」


「あ、ご丁寧にどうも。わたしはこの学校を任されている講師です」


「大変そうですね、この人子たち数に剣の指導を行なっているんですか?」


 人数は良いとしても、年齢も腕前もバラバラの子たちを一度に教えるのは大変そうだ。


「はい、とは言ってもわたしは剣はあまり得意でないので、大した事は教えられないられのです」


「良かったら手伝いましょうか?剣は少し嗜んでますので」


「本当ですか?助かります」


「その代わり、私が剣の指導をしている間、この子たちを見ていてもらえますか?」


「まあ!かわいらしい赤ちゃんたちですね?あなたのお子さんですか?」


「はい!そうです」


「わかりました。赤ちゃんは責任を持って世話しますので、剣の指導お願います」


 講師の女性は子供達を集めた。


「今日はこのララ先生が剣の指導をしてくれる事になりました」


「わぁ!きれいなお姉さんだなぁ!」

「お人形さんみたいだね」

「けっ、こんな華奢な女に剣の指導なんかできるのかよ」

「どうせいつもみたいに適当にやってりゃいいんだろ?」


 ・・・大体いつも通りの反応だな。


「じゃあ、君たちの中で一番強い子と模擬戦をやってみてもいいかな?」


「おもしれえ!じゃあ俺とやろうぜ」


 さっき言いがかりをつけてきた子だ。

 歳は11歳くらいだろうか?

 子供達の中では一番大柄で、身長はもうすぐ私に追いつきそうだ。


「じゃあ、やりましょうか」


 私は練習用のミドルソードを片手で構えた。


「なめやがって!両手で構えろ!」


「君が私を追い込んだら両手にするよ」


「まあいいや、叩きのめしてやる!」


「では、始め!」


 講師の女性の声で模擬戦が始まった。


 男の子は猛スピードで私に接近し、剣で切り付けてきた。


 私はその剣を受け流し、軌道をずらして直撃を避ける。


「うん、太刀筋は悪くないよ」


「お前も少しは出来るみたいだな。でも次は決めてやる」


 男の子は構え直して、すぐに次の攻撃を仕掛けた。


 これも剣で受け流す。


「あれっ?何でだ?」


 男の子は、何度も何度も私に打ち込んでくるが、私はそれを片手で受け流していく。


「ちくしょう!何できまらねえ!」


 男の子はむきになって、がむしゃらに私に打ち込んできた。


 ちょっと、打ち込みが雑になってきたかな?


 男の子が疲れて動きが雑になってきたところで、私は男の子の剣を弾いた。


 剣が男の子の手を離れて横に跳んで行く。




「どう?私が指導してもいいかな?」


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