2話 勇者様と魔物討伐
「明日から魔物の討伐に行く。お前もついてこい」
「いいんですか?」
「ああ、『下級剣士』であれば問題ないだろう」
認定試験に合格し、国家資格である『下級剣士』となった私は、職業としての『剣士』の活動が認められたことになる。 魔物討伐などに参加する場合、原則として『剣士』『魔法士』などの資格を持っていないと許可がおりない。
「ところでなぜメイドの格好をしている?」
「今日から学院が長期休暇に入ったので今日は私がジオ様の夕食を用意しました!」
例のスカート丈の短めのかわいらしいメイド服に髪はツインテールだ。
かわいいポーズをとってみたものの、ジオ様は相変わらず無反応だ。
勇者の精神防御機能、仕事しすぎっ!
勇者ジオ様との共同生活が始まって、朝は剣術の訓練、その後学院に行き、帰ってきたらまた訓練という日が続いていた。
休日は少し自分の時間ができるので、お屋敷の厨房で食事の支度を手伝わせてもらっていた。
いつもは1~2品を作らせてもらっていたが、今日は料理長にお願いして全品一人で作ってみた。
料理をテーブルに並べ終えて、ジオ様の向かいの席に着く。
「随分豪勢だな?これを一人で作ったのか?」
「はい!学院の調理士講座で新しいメニューをたくさん覚えましたのでレパートリーには困りません!どうぞ召し上がってください!」
「ああ、頂くとしよう」
ジオはスープに口を付けた。
「相変わらず不思議だな?普段の食事は旨いとも不味いとも感じないが、ララの作った料理だけは旨いと感じる」
「愛情が入ってますから!」
「・・・・・」
満面の笑顔で決めてみたが、相変わらずの無反応だ。
自分も食事をしながら問いかけた。
「魔物の討伐はどちらに行かれるんですか?」
「国の北東の山の中に上級の魔物が出現したとの目撃情報があった」
「まだ被害は出ていないんですか?」
「ああ、だが近隣の村や町には避難指示が出ている」
「それでは一刻も早く討伐しないといけないですね?」
魔物は世界各地で不規則に出現する。
下級の魔物であれば地域の自警団や冒険者でも対処が可能だが、中級の魔物となると国の騎士団や冒険者の複合パーティーが討伐隊を編成して討伐に向かう。
そして上級の魔物となると勇者でなければ討伐は難しい。
大編成の騎士団で討伐する事も不可能ではないが、騎士団側にも甚大な被害が出る。
よって上級の魔物が出現した場合は必ず勇者に討伐の指令が下る。
ちなみに私のいた町を襲ったのは中級の魔物の大量発生だったそうだ。
魔物は単体の発生の場合もあれば集団発生する時もある。下級でも集団となると自警団では対処できないし、中級の大量発生は勇者でなければ対応は困難だ。
「今回の魔物は単体ですか?」
「今のところはな」
「ご馳走様、旨かった、また腕をあげたな?」
「ありがとうございます!愛情をたっぷり入れましたので!」
「・・・・・」
相変わらず無反応だった。
「もちろん愛情も入れましたが、今回の料理は裏庭の畑で私が育てたお野菜を使ってみたんです。ちょうど旬のお野菜が収穫できたので!」
「なるほど、確かにいつもより野菜の旨味をしっかり感じたな」
「私の育てた野菜はおいしいって地元の町でも評判だったんです!」
「そうか、それも含めてララの愛情と考えれば納得がいくな」
(ジオ様さらっと『ララの愛情』とか口にしてるんですけど!)
自分で言っといて、ジオ様に言われるとかなり恥ずかしかった。
私は耳まで赤くなってしまった。