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勇者の弟子はお嫁さんになりたい!  作者: るふと
第2章 静慮の魔女
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5話 勇者の弟子と馬車の旅

 魔動馬車も完成し、旅の準備が整ったので私たちは出発する事にした。


 レンとルナが見送りに来てくれた。


「気を付けてね、ララ」


 ルナはちょっと心配そうだ。


「うん、何かあったら転移魔法陣を繋ぐから、サポート宜しくね!」


 私たちは、これから魔物の出現予想地点を先回りしながら旅をするのだ。

 中級の魔物や上級の魔物が出現した場合、私とジオ様が最初に対応できる可能性が高くなる。


 だが、二人では対処しきれない事態も起こりうるので、そんなの時は私が転移魔法陣を生成すれば、レン達は直接私たちいる場所に来る事が出来るのだ。


「何かあったらすぐに駆け付けるから、遠慮なく僕らを呼んで」


「新婚の二人にはできるだけ迷惑かけたくないけどね!」


 そう、レンとルナは先日、結婚式を挙げたのだ!


 まあ、元々二人は同棲していたし、仕事も今まで通りにこなしているので、実際のところ何も変わっていないのだが・・・


 ルナの花嫁姿はとてもきれいだったな。



「そういうのは気にしなくていいから、困ったらすぐにわたしたちを呼ぶんだよ!」


 ルナは相変わらずお母さんっぽい。

 早く本当のお母さんになれるといいな。


「うん、そうするよ」



「では、ジオ様、ララ達を宜しくお願いします」


 ジオ様はレンを見てうなずいた。




「ララ様、やはりわたしもご一緒した方が宜しいのでは?」


 シィラはわたしたちやルルの世話でついてくると言って聞かなかった。

 

 それも考えたのだが、危険な旅になるかもしれないし、ほとんど寝たきりのルルとずっと待機してもらう事になるのも申し訳ない。


「何かあったら、馬車ごとルルを転移魔法で送り返すから、その時はお願いね」


「かしこまりました。その際はお任せ下さい」



(ララ、そろそろ行くぞ)


「はい!ジオ様」



 私は魔動馬車の真下に転移魔法陣を発動させた。


 そして、ルルを抱いてジオ様と一緒に魔動馬車に乗り込んだ。


「では、行ってきます!」


 転移魔法陣を発動させ、周りが一瞬真っ白になった。




 光が収まると、魔動馬車は、薄暗い洞窟の中にいた。


 天井の高さは、結構ギリギリだったな・・・


 この洞窟の出口は狭いので、このままでは魔動馬車は地上に出られない。


「ジオ様、ルルとちょっと待っててくださいね!」


 私は一人で洞窟を出た。


 ここは、エルの住んでいる領地に向かう街道から少し逸れた森の中だ。


 私は街道に出て、人目が無いのを確認し、転移魔法陣を発動した。




 強烈な光と共に、魔動馬車が現れた。


 さっき洞窟の転移魔法陣を仮発動させておき、地上に描いた魔法陣とつないで呼び寄せたのだ。


 転移魔法陣はこういう使い方もできるのだ。



 ・・・ただ、魔動馬車の様な重量物を転移させるには莫大な魔力を必要とする。


 普通の魔法士には不可能で、魔女である私だからできたりするのだった。



 私は魔動馬車に乗り込んだ。


「さあ!ジオ様。エルのところに行きましょう!」


 この場所からなら、エルの屋敷まで馬車で3時間程度だ。


 魔動馬車は普通の馬車の何倍もの速度が出せるので、急げば一時間もかからないかもしれないが、街道は徒歩の旅人や、他の馬車も通るので、速度を出し過ぎては危険だ。


 私たちは景色を楽しみながらのんびりと旅をする事にした。




 エルの住んでいる領地は平原が多いので、遠くまで風景が見渡せる。

 どこまでも続く草原がとてもきれいだった。


 せっかく景色がきれいなので、家族そろって満喫しようと思って、ルルもベビーベッドごと御者台に連れてきた。


 魔力で浮遊するベビーベッドは御者台のシートから少し浮いている。


 魔動馬車の躯体自体が車軸から浮遊して非接触なので、地面の振動をほとんど感じないのだが、更に浮遊しているベビーベッドは全く振動を受けないのだ。


 ルルは相変わらず、すやすやと寝ている。



「ふふっ、ジオ様!家族水入らずの旅行ですね!」


(そうだな、こういうのもいいものだな)


 私とジオ様で、間にルルを挟んで御者台に座っている。


 御者台は魔動馬車の躯体の高い位置にあるので、全周囲が見渡せるのだ。


 私たちの周りは見渡す限りの草原と、青い空と白い雲しかない。

 このきれいな世界を三人だけで独占している様な気分だ!




「天気がいいので窓を開けてみますね!」


 ガラス張りの御者台は窓を開ける事も出来る。

 窓を開けると爽やかな風が吹き込んできた。


 この地域は王都よりも気温が高いので少し暑いが、僅かな草の匂いが清涼感を与えてくれる。



 風を感じてルルが目を覚ました。



「ふふ、おはよう!ルル!」


 私はルルをベビーベッドから抱き上げて膝の上に抱いた。


 景色が見えるように少し頭を起こしてあげると、はじめて見る景色に少しだけ驚いたような顔をした。


 まあ、まだそういうのは分からないだろうけど。


 でも、なんだか気持ちいいみたいでご機嫌な感じだ。




 町に近づいてくると、景色は次第に草原から穀倉地帯に変って行った。


 街道も行きかう人や馬車に出会う様になった。



 すれ違う馬車の御者は、馬のいない魔動馬車を見て、大抵びっくりしていたが、私が手を振ると、みな笑って手を振り返してくれた。




「ジオ様!私、今とっても幸せです!」


(俺もだ)


「世界中から魔物がいなくなって、どの国もみんな、こんな風にのどかになればいいですね!」


(ああ、そうだな)




 そのためにも私たちが頑張らなきゃね!


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