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勇者の弟子はお嫁さんになりたい!  作者: るふと
第2章 静慮の魔女
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4話 勇者の弟子と魔動馬車

 ギムさんにお願いしていた魔動馬車が完成した。


「どうだい、お嬢ちゃん。いい出来だろう」


「わあ!すてき!」


 完成した魔動馬車は、一般的な貴族の使っている馬車の様な体裁で、全体的に前後に長くなった外観だ。

 長くなったと言っても普通の馬車の、馬を含めた全長に比べたらだいぶ短い。


 装飾はあまり豪華すぎて悪目立ちするのも避けたいので、比較的質素にしてもらった。

 御者台は完全にガラスに覆われ、サンテラスの様になっている。


 外観的な違いはこのガラス張りの御者台と、馬がいない事ぐらいだ。


 まあ、馬がいない時点でかなりの違和感なのだが・・・




「中も見ていいですか?」


「おう!構わねえ!」



 側面の扉を開けると、後ろ側に横向きのソファーが向かい合っている。


 変形させて夜はベッドにもなる優れモノだ。

 背もたれを変形させて二段ベッドにも出来るので、最大で大人4人が寝る事が出来る。


 扉の前側には二段のベビーベッドと簡易キッチンがある。


 ベビーベッドは魔力で浮遊する構造になっており、周りの振動を一切遮断する。

 赤ちゃんにとっては家にいるのと変らない静かさで眠る事が出来るのだ。

 一段ずつ分離して浮遊させたまま別の場所にも移動も可能だ。


 ジオ様はベビーベッドは使わないので、一つでも良かったのだが、他人に見られた時にベビーベッドが一つでは不自然だ。


 ジオ様が普段、どこで寝てるかって言うと・・・私のベッドで一緒に寝ている。

 夫婦なんだから、当然だよね!


 簡易キッチンは本格的な料理をするにはちょっと狭いが、お茶を入れたりするには十分だ。

 魔力を使った保冷庫を付けたので、食材や、私の母乳を冷凍して保管が出来るようになっている。

 これで私が戻れない時でもジオ様がルルにおっぱいをあげる事が出来る。



 さらに前側の、御者台の下の空間にはトイレとお風呂を作ってしまった。

 お風呂はちょっと狭いけど大人二人でも入れるサイズだ。

 だって、三人で一緒にお風呂に入る時間は、すっかり私にとって最高のリラックスタイムになってしまったのだ。

 旅の間もこの時間はどうしても確保したかった。



 お風呂の入り口わきのはしごを登ると、室内から御者台に直接行き来ができる。


 御者台は外梯子を登って側面のガラス扉を開けて入る事も出来るし、室内からも入る事が出来るのだ。


 御者台と言っても椅子があるだけで何もない。

 御者の思念で動かせるからだ。


 全面ガラス張りで、馬車の屋根より頭が上に出る位置にあるので、後方も確認できる。

 ガラスで雨風がしのげるので、普通の馬車の御者台よりはるかに快適だ。


 まあ、思念で動くから御者台にいなくても動かす事は出来るのだが。




「すばらしいです!予想以上の出来です!」


「そうだろ、俺もびっくりしてる。お嬢ちゃんの指示通りに作ったんだが、こりゃ、馬車の概念を根本的に変えちまうくらい快適な乗り物だぞ」


「動かしてみてもいいですか?」


「ああ、試験運転は済ませて調整済みだ。このまま乗って帰っても問題ねえ」


「じゃあこれで受け取り完了という事で乗って帰ります」



 私は御者席に座って、御者台の手すりの魔法陣に手をかざした。


 これで使用者を登録すると他の人には動かせなくなるのだ。

 扉も同様に登録者でなければ開けられなくなる。

 盗難対策も万全だ。


 スリングの中でじっとしていたジオ様を御者席の隣に座らせる。


「ジオ様も登録して下さい」


(わかった)


 ジオ様も手すりの魔法陣に手をかざした。


 これでジオ様も魔動馬車を動かす事が出来るようになった。


「じゃあ、帰ります。ギムさん、ありがとうございました」


「結構スピードが出るから街中はゆっくり走らせろよ」


「わかりました。ありがとうございます!」




「じゃあ、ジオ様、いきますよ!」


 私は魔動馬車にゆっくり前進する様に思念を送った。


 魔動馬車は、私のイメージ通りにゆっくりと前進を始めた。


「わっ!ほんとに動きました!」


(ああ、面白いな)


 魔動馬車は歩くぐらいの速度でゆっくりと前進し、ギムさんの工房の倉庫から表の道へ出た。


 私は魔動馬車に左に曲がりながら前進する様に思念を送った。


 魔動馬車は私のイメージ通り正確に向きを変えながら表通りに出る事が出来た。


 これって、簡単に出来てる様に見えるけど、思った通り簡単に動かせる様に作るのはたいへん高度な技術を必要とするのだ。


 私も魔道具の制作をしているからわかるのだが、思念操作型の魔道具を正確にイメージ通りに動く様に作るのは非常に高度な技術が必要で、普通はなかなか思った通りに動かないものなのだ。


 ギムさんの技術力の高さあってこそ完成したと言えるだろう。


「じゃあな!お嬢ちゃん、建物にぶつけない様に気を付けて帰れよ」


「ありがとうございます!ギムさん調整は完璧です!」



 表通りに出たら、少し速度を上げて、早歩きぐらいにしてみた。


 これも正確に思った通りの速度になった。


 これで調整が不十分だと、少しだけ速くしようと思っても急激に加速してしまう場合もあるのだ。


 表通りをゆっくり進んで行くと、周りの通行人が一斉にこっちを見ていた。


 なんと言っても馬がいないのに馬車が動いているのだ。

 確かに初めて見た人はびっくりするだろうな。



 大通りに出たら他の馬車も行きかっていた。


 私は速度を上げて、他の馬車の流れに乗った。


(すごいな、この速度でも全然揺れないぞ)


「はい、ジオ様。車軸と車体を魔法で浮かせて接触しない様にしてあるので、路面の振動が車体に伝わらないんです」


(ララのアイデアか、なるほど、さすがララだな)


「ありがとうございます」


 ジオ様の言う通り、これってすごい快適かも?


 だって、普通の馬車だったら、石畳をこの速度で走ると、振動でおしりがいたくなるからね。




(ララ、俺も動かしてみていいか?)


「もちろん!いいですよ!」


 私は魔動馬車に思念を送るのをやめた。

 魔動馬車は次第に減速していく。


(ではやってみる。こうか?)


 魔動馬車は再び速度を上げた。


(なるほど、思った通りに動くのだな)


 道が曲がっているところも、魔動馬車は道沿いに曲がって行った。


「ジオ様、上手です!」


(これは予想以上に簡単だな)




城門のところで、門番に止められた。


「ララ様、どうなってるんですか?この馬車は?」


 家の近所の城門なので、門番さんはすっかり顔なじみだった。


「魔力で動く馬車なんですよ!ギムさんに作って貰ったんです」


「へえ、勇者様ともなるとすごい馬車をお使いになるんですね」



 城門を過ぎると私の家はすぐ先だ。


 バトラーに屋敷の門を開けてもらって中に入った。




 今度、屋敷の門も魔力で開く様にしようかな?


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