4話 勇者様と子守り
※一部BL表現があります。
家に帰ると、ルルの泣き声が聞こえてきた。
「ララ様、丁度良いところに!」
メイドのシィラが出迎えてくれた。
「ルルはどう?」
「たった今泣き出したところです」
部屋に入るとジオ様が泣きやまないルルをあやしているところだった。
ジオ様はルルの後頭部に手をまわして頭を浮かし、反対の手でおなかを軽くぽんぽんと叩いていた。
赤ちゃんが困った顔で赤ちゃんをあやしている光景がちょっと面白かった。
(ララ!良かった、帰って来てくれて。ルルが泣き止まないんだ)
「おむつは確認しましたが大丈夫でした」
シィラが答えてくれた。
「すぐにおっぱいをあげるね!」
私は急いで装備を外し、インナースーツの上を脱ぎ捨てて、半裸状態になって、ルルを抱き上げた。
シィラが濡れた手ぬぐいを渡してくれたので、それで乳首を拭いてルルにくわえさせる。
ルルはピタッと泣き止んで、勢いよくおっぱいを吸い始めた。
「ごめんね、おなかがすいてたんだね?」
シィラが半裸状態で授乳している私にガウンをかけてくれた。
「ありがとう。シィラ」
「いえ、ララ様が帰っていらっしゃらなかったら、試しにわたしの乳首を吸わせてみようかと考えていたところでした」
「あはは、ありがとうシィラ。でもやめておいた方がいいよ。赤ちゃんがおっぱいを吸う力って結構強いから、出産前の乳首を吸われると結構痛いかもよ?」
「迂闊でした。わたしもタイミングを合わせて子供を作っておくべきでした」
シィラって私のためなら何でもしてくれて本当にありがたいんだけど、ちょっと度を超しているところがある。
本当にやりかねなかった。
「あはは、ありがとう。でもさすがにそこまでやんなくてもいいよ。今度レィア様にでも相談してみようかな?」
レィア様、母乳がいっぱい出そうだから、二人分飲ませても全然大丈夫な気がするんだよね。
(すまない、ララ、俺は何の役にも立てなくて)
「あはは、いいんですよ、ジオ様だってまだ赤ちゃんの体なんですから!」
ジオ様はほんとに申し訳なさそうだ。
大人みたいに表情が変わる新生児って、なんか不思議だ。
「それに、ずっとルルのそばにいて見守ってくれてたんですよね?それだけでも十分です」
ルルは、たくさん母乳を飲んだら落ち着いたみたいで、乳首から口を放した。
「ふふふっ、ごちそうさまですか?」
私はルルをうつぶせに抱いて、背中を軽くとんとんと叩いた。
(それは何をしているんだ?)
「赤ちゃんはおっぱい飲むときに空気も飲み込んでしまうので、こうやってげっぷを出させるんです」
「げぷっ」
しばらくとんとんしていたら、ルルがげっぷをした。
(本当だ、げっぷが出た)
「ふふ、面白いでしょう!」
(ララは何でも知ってるんだな)
「出産までにいっぱい勉強しましたから!」
(あいかわらず、なんでも勉強しないと気が済まないんだな)
「なんたって『強欲』ですから!」
『強欲の魔女』の二つ名は伊達じゃないからね!
(ララの欲は主に知識欲だな)
「さて、次はルルの体を拭いてあげましょう」
シィラがぬるま湯と手ぬぐいを用意してくれたので、ルルの体を拭いてあげる事にした。
私はルルの産着を脱がせて、手ぬぐいをお湯で濡らして軽く絞り、ルルの体を拭き始めた。
まだ、生まれたてで、肌が柔らかいので、力を入れずに丁寧に拭いていく。
(手慣れたものだな)
「はい、知り合いで赤ちゃんが生まれた人がいたら、出来るだけお手伝いに行く様にしてたんです!私も赤ちゃんの扱いが覚えられますし、向こうも人手があった方が助かりますから!」
(ララらしいな・・・俺も手伝っていいか?)
「はい!もちろんです。それではジオ様もこの布でルルを拭いてあげて下さい」
私は新しい布をジオ様に手渡した。
ジオ様は、布を受け取ると、立ち上がってベッドの上を歩き、ベッド脇のテーブルの上にある桶のぬるま湯に布を浸けて洗い、それを両手で掴んできゅと軽く絞ると、再びルルのところまで歩いて行って、ルルの顔を丁寧に拭き始めた。
・・・これを、ルルと同じ新生児にしか見えないジオ様がやっているのだから、見ていたら何ともかわいらしすぎて、ずきゅんとなってしまった。
「ジオ様!かわいすぎです!」
(何を言ってる?ララ)
「ララ様、わたしもジオ様がかわいすぎて、どうにかなってしましそうです」
私の後ろでシィラも身悶えていた。
(シィラまで何を言ってるんだ?)
「ジオ様、自分のかわいらしさを無自覚すぎます。その姿だと何をやっても可愛く見えてしまうんです」
(よくわからんが、そんな事言われても仕方ないだろう)
「大丈夫です、ジオ様はそのままで!こっちで勝手に楽しませて頂きますので!」
(・・・腑に落ちんが・・・まあいい)
ジオ様はその後も、まめまめしくルルの体を丁寧に拭いていった。
私とシィラは、そのかわいらしい光景をずきゅんずきゅんしながら堪能させてもらった。
(ひととおり拭いたぞ。これでいいのか?)
「はい!それくらいで大丈夫です!ごちそうさまでした!」
(・・・?何を言ってるんだ?)
「次はおしめをつけて新しい産着を着せますね」
(やり方を覚えておきたい、それも俺がやってみる)
「では説明しますね。まずは片手でこうやって両足首を一緒に掴んでおしりを持ち上げて下におしめを入れるんです」
(それは俺にはできんな)
確かにそうだった。今のジオ様の手では、片手でルルの両足を掴む事が出来ない。
(だが、違う方法ならできそうだ)
ジオ様は、おもむろにルルの脚の下に入り込み、ルルの両足を両肩に担いで持ち上げた。
・・・ たしかに、ルルのおしりを浮かす事は出来たんだけど・・・この体勢って・・・
ジオ様の顔のすぐ目の前に、ルルのおちんちんがある状態だ。
ジオ様は気にせずにルルのお尻の下におむつを差しこもうとしているが・・・
ルルのおちんちんが今にもジオ様の唇に触れてしまいそうな体勢になっている。
赤ちゃん同士だから微笑ましい光景と言えば、言えなくもないのだが・・・ジオ様が大人びた真剣な表情なので、一瞬違う光景に見えてしまった。
・・・これが成長した姿だったら・・・脳裏に超絶美男子二人のいけないシーンが浮かんでしまった!
私ってば!生まれたての旦那と息子で、何てふしだらな妄想してるんだ!
慌てて脳内のイメージをかき消そうとしていたら、隣でシィラも真っ赤になって自分の体を抱きしめて身悶えていた。
「シィラ!その妄想はダメです!すぐ忘れなさい!」
シィラもジオ様の以前の姿を知っている。おそらくその姿であのシーンを想像してしまったのだろう。
「申し訳ありません!ララ様!わたしとした事がなんと恐れ多い事を・・・」
シィラは我に返って一気に青ざめていた。
「ううん、私も同じ事考えちゃったからそこは責められないんだけど・・・」
(できたぞ、ララ、次はどうすればいい?)
そんな腐女子たちのいけない妄想に全く気が付いていないジオ様は、淡々と作業をすすめていた。
毒気の無いジオ様にの様子に、舞い上がっていた腐女子二人はなんだかとても恥ずかしくなってしまった。
成長したルルとジオが活躍するお話【勇者の息子は魔女になりたい!】も連載中です。
※ルルとジオの親子BL展開はありません。




