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勇者の弟子はお嫁さんになりたい!  作者: るふと
第9章 勇者の嫁
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最終話 勇者様と勇者のお嫁さん

 晴れ渡る青空には光り輝く姿となったジオ様だけが浮いていた。



「ジオ様?」



 私はぼろぼろと泣きながらジオ様の名前を呼んだ。



 ジオ様は振り返ると、私の方へやってきて目の前に降り立った。



「ジオ様!」


 さっきよりも光が弱くなって、ジオ様の輪郭がわかるようになっていた。

 わずかに向こう側が透けて見える。



(ララ)



 ジオ様が頭の中に話しかけてきた。


(泣かないでくれ)


「じおさまぁー!」


 魔力が回復したのか、私の体は少しだけ動くようになってきた。

 抱き付きたかったが、きっと素通りしてしまう。身を乗り出して目の前で止まる。

 近くで見たらジオ様の表情がちゃんとわかった。


(俺はもうすぐ消えてしまう。最後に見るララは笑顔でいて欲しい)


 ジオ様は優しく微笑んでいた。


「はい、頑張ります!」


 私は必死に涙を止めて満面の笑みを作った。


(ありがとう、俺が大好きなララの笑顔だ)


 油断すると涙があふれてくる。私は必死になって涙をこらえた。



(ララと出会っていなかったら、俺は何のためらいも無くこの死を迎え入れていた)


(しかし、ララと出会って俺にも感情が芽生えた。もっと一緒にいたいと欲が出た)


(ララと家庭をもち、子供を育て、仲間たちに祝福されて過ごせたらどんなに幸せかと思い描いてしまった)


(だから、ララが力に目覚めた時、二人そろって生き残る未来に期待してしまった)


(そのために、ララを危険にさらし、危うく失うところだった)


(だが、結局予定通りの結末になってしまった)



「ジオ様!私も同じです」


「すべてがトントン拍子に行って、望んだものがすべて手に入って、私ならこのまま運命までも覆せるんじゃないかと自惚れていました」



「・・・でも、そんなのただの傲慢で・・・結局私はなにもできなかった・・・」



(何もできなかったという事は無い)



(ララはこの3年間、俺に本来無かったはずの幸せな時間を与えてくれた)


(俺はララからすでに一生分の幸せをもらっている。これ以上望むのは贅沢というものだ)


「私もです。私もジオ様から一生分の幸せをもらいました」


「欲張りな私が、もうこれ以上望むものはないと満足したくらいです」



 ジオ様の体の光はだいぶ弱くなってきた。


 残り時間はあとわずかなのかもしれない。





「最後にもう一つだけ、私のお願いを聞いてもらえますか?」



(今の俺にできる事なのか?)



「はい!できると思います」



(何をすればいい?)




「・・・私の中に・・・入ってください」




(・・・どういうことだ?)


「精神だけになって肉体を持たないジオ様はこの世界に長くとどまる事が出来ないという事でした。意味が無いかもしれませんが、もしかしたら私の体をよりしろにして、少しでも長くとどまる事ができるかもしれません」


「・・・それと最後はジオ様と・・・一つになっていたいんです・・・」


(どうなるかわからないが・・・いいのか?)


「はい!私の思い付きは大体うまく行く事の方が多いみたいなので!」


(・・・わかった、やってみよう。危なそうだったらすぐに離れる)


「はい!おねがいします!」



 ジオ様が私に近づき、キスをした。


 さわった感触は無かったが、とても嬉しかった。


 そして、そのまま私と重なった。


 ジオ様の光の体は私の中に吸い込まれていった。



 


(ララ)



 頭の中でジオ様の声がする。



(ジオ様?)


(ああ、聞こえる)


 考えた事がジオ様に伝わるようだ。


(ジオ様が私の中にいるのを感じます)


(ああ、おれもララを感じている)


 私の体の中で二人の意識が重なり合っているのを感じる。

 不思議な感覚だった。


(俺とララが重なっているのがわかる。とても心地いいな)


(私もです。とても安心した気持ちというか、幸せな気持ちです)


 ジオ様と心が重なっている。


 体を重ねた時とはまた違った幸福感につつまれる。


(やっぱり、ララの思い付きはうまくいったな)


(はい!任せて下さい)


(こんな幸福感は今まで感じた事がない)


(私もです。このままずっとこうしていられたら・・・他には何もいらないです)


(もう思い残す事は何もないと思っていたのに・・・最後の最後でこんな気持ちになれるなんて、やっぱりララはすごいな!)


(あはは、偶然ですけど、ありがとうございます!)


(この時間が、このまま永遠に続けばいいな)


(はい!私もそう思います。私が本当に『魔女』だったら、このまま永遠に一緒にいられるかもしれませんよ?)


(ははは、ララだったら本当にそうしてしまいそうだな)


(・・・おそらく、私は『魔女』なんだと思います。少しづつ色々な知識や情報が頭の中にうかんできているんです。たぶん私のお母さんは『魔女』だったんです。そして『魔王』も)


(そうだな、時間を戻す魔法など普通の魔法士にも勇者にもできない)


(でも、そんな事はどうでもいいんです。利用できるものは何だって利用します!)


(ははは、それでこそララだな)


 ジオ様が笑うとその感情がダイレクトに伝わってきて私も一緒に楽しくなる。


 大好きな人と心が共有できるって、こんなに素敵な事なんだ。










 ・・・本当に、このまま時間を止める魔法とかあったらいいのにな・・・










(ララ、・・・気持ちよくてだんだん眠くなってきた・・・少し、眠ってもいいだろうか?)




(はい!ジオ様が眠っている間は、私が責任を持ってジオ様を守ります!)




(すまない・・・では、少しだけ・・・眠らせてもらう・・・)




(ゆっくり休んでください、ジオ様)




(おやすみ・・・ララ・・・)




(・・・おやすみなさい・・・ジオ様)



最終章完結です。次はエピローグです。

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