11話 勇者様と終焉の終わり
終焉の魔物は完全に元の姿に戻ろうとしていた。
(そんな!ここまでやっても復活してしまうなんて!)
ジオ様は私を砂浜にそっとおろした。
「ララ、これを預かってくれ」
ジオ様は自分の剣を私に差し出した。
それは結婚式の誓いを誓いを立てた剣だ。
「ジオ様!どうするつもりですか?」
「俺はこの剣に誓った。命を懸けてララを守ると」
「それは私も一緒です!」
「このままでは、ララも、世界も全てを失ってしまう。俺は『勇者』だ。ララと、この世界を守らせてくれ」
「私だって『勇者』です!」
ジオ様は静かに首を振った。
「ララは未来の勇者だ。ララには次の世界を守る使命がある。今は俺にララを守らせてくれ」
「・・・ジオさま・・・」
私の目からは涙があふれていた。
「すまない、結局ララにも同じ運命を背負わせてしまった」
ジオ様はそっと私の唇に唇を重ねた。
「・・・ん・・・」
いつものように、やさしく丁寧なくちづけだった。
くちづけだけで、ジオ様の気持ちは全て伝わってきた。
「ありがとう」
そして、一言をのこして走り去った。
自分で立ち上がる事さえできない私は、追いかける事ができなかった。
終焉の魔物に向かって跳躍したジオ様は淡く光始め、体には無数の亀裂が走っていた。
亀裂からは光があふれだした。
そして、ジオ様の体は粉々に砕け散り、光の粒子となって消えた。
あとにはジオ様の形をした光の塊があった。
光の塊となったジオ様は、一瞬振り返り私の方を見た。
まぶしくてよくわからなかったが、微笑んだような気がした。
(・・・ジオさま・・・)
光の体となったジオ様は再び終焉の魔物に向かった。
『終焉の魔物』がジオ様を攻撃したが全てをはじき返した。
攻撃は全く効いていない。
ジオ様が終焉の魔物に触れると、そこを起点に終焉の魔物の全身が光に包まれていく。
全身が光りに包まれると、全体が目を開けていられないくらい一際大きく輝いた。
次の瞬間、すべてが光の粒子となって霧散した。
空一面が光り輝く金色の粒子で覆い尽くされた。
光りの中にはジオ様と、巨大な魔結晶のみが浮いていた。
魔結晶はふたたび再生を始めようとしていた。
ジオ様は魔結晶に近づき、魔結晶に手を触れた。
触れた瞬間、魔結晶は強く光り輝き、そして魔結晶も光の粒子となって砕け散った。
空は再び金色の光に覆い尽くされる。
そして、空を覆うほどの光の粒子は次第に消えていった。
晴れ渡る青空には光り輝く姿となったジオ様だけが浮いていた。
世界の終焉は去っていった。