9話 勇者の弟子と終焉の対決
「ジオ様、倒せたんでしょうか?」
「まだわからない。魔結晶は輝きを失ってはいない」
更に魔結晶の周りを削った方かよいのか?
だとしてもどこまでやればいい?
こちらの魔力も無限ではない。
使いどころを間違えるとそこで手が尽きる。
様子を見ていると、『終焉の魔物』の魔結晶はふたたび強く光を放った。
そして、沈黙したかに見えた『終焉の魔物』は修復を開始してしまった。
しかも今までよりも修復速度が速い。
私は再度『グラビティキャノン』を数発放ったが、修復の方が速くて追いつかなかった。
『終焉の魔物』は再び元通りに再生してしまった。
「ジオ様、やはり魔結晶を完全に切り離さないと再生してしまいます!」
『終焉の魔物』の心臓の位置はわからない。
そもそもこのサイズで心臓というものがあるのかどうかもわからないが、体が一部でも残っていると再生してしまう可能性がある。
「そのようだな、すまないララ、俺の方は今ので魔力をほとんど使いきってしまった。しばらく上級魔法は使えない」
勇者といえども魔力が無限にあるわけではない。『魔力容量』に限界はあるし、魔力が回復するまで時間はかかる。
回復速度は常人よりもはるかに速いが、すぐに元通りになるわけではない。
「ジオ様!私の方はまだ魔力が残ってます!次の攻撃で決着をつけます!」
「ララ! これ以上ララを危険な目に合わせるわけにはいかない」
ジオ様は最後の手段に切り替える判断をしようとしている。
この戦いに挑む前に4人で決めた事がある。
『終焉の魔物』をジオ様の命をかけずに討伐する事を目標にする。
ただし、4人の内誰か一人でも命にかかわる事態になった場合は、ジオ様は迷わず『真の力』を発動する事になっている。
「次は私一人で攻撃に出ます。ジオ様は魔力が回復するまで待機していてください!」
ジオ様は、後が無いとわかった時点で『真の力』を発動してしまうだろう。
だから私はその前に刺し違えてでも『終焉の魔物』にとどめをさそうと考えていた。
そうすればジオ様だけでも助ける事ができる。
「だめだ!ララだけに危険な真似をさせる訳にはいかない」
「まだ、私が死ぬと決まったわけじゃありません!私は死ぬつもりはないです」
「そうだな、一緒に生き残ると約束したはずだ。だから俺も一緒に行く。まだ中級魔法なら使える。俺は出来る限りララを援護し、絶対に守り切る」
ジオ様、私が『終焉の魔物』と刺し違える覚悟だって気が付いてる!?
「わかりました。お願いします!ジオ様!一緒に『終焉の魔物』を倒しましょう!」
「しかし、どうするつもりだ?」
「『終焉の魔物』の体を全て燃やし尽くします」
心臓の位置がわからないにしても、一片も残さず体を燃やし尽くせばさすがに再生は出来ないだろう。
「そんな事が出来るのか?」
「私の残りの魔力を全て使えばおそらく可能です。まずは魔結晶の場所まで接近します」
さっきの攻撃で魔結晶の場所はわかった。
本体のほぼ中心付近のやや上部だ。
本当はそこで、ひたすら『ヘルフレイム』を打ち続けるつもりだった。
だがジオ様が一緒だとそういう訳にも行かなくなった。
今度は場所がわかっているので最短距離で魔結晶に向かう。
二人で同じ突起に飛び移り、本体を目指す。
やはり棘や目玉、『中級の魔物』の攻撃が来るが、二人なのでさっきより効率がいい。
二人で分担しながら対応し本体を目指す。
本体の上部にたどり着くと、『グラビティキャノン』で本体に大穴を空けた。
「ジオ様!中に突入します!」




