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勇者の弟子はお嫁さんになりたい!  作者: るふと
第9章 勇者の嫁
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7話 勇者様と終焉の反撃

 瘤からは、無数の『中級の魔物』と2体の『上級の魔物』が産み落とされた。


 落下した魔物たちは大きな水しぶきを上げて遠浅の海に次々と着水した。


 魔物たちは体勢を立て直すと海岸の方に進んできた。


「うへぇ!なんて数だ!」


「ようやく俺の出番だな!」


 ゼト様は、中級の魔物に向かっていった。


「じゃあ、僕もこっちを片付けるよ」


 セナ様も中級の魔物に攻撃を仕掛ける。


「セナ様!ゼト様!気を付けて下さい!」

「おう!任せとけ!」

「そっちはよろしくね!」


 セナ様とゼト様は上陸した『中級の魔物』が町の方に向かわない様に食い止めに行った。



「ララ!行くぞ!俺たちは『上級の魔物』を倒して『終焉の魔物』本体へ向かう」

「はい!ジオ様」


 『上級の魔物』は2体いる。さすがに分担して1対1はリスクがあるのでジオ様と二人で1体ずつ撃破する。


 まずは、先に上陸しようとしている巨大な蜘蛛のような魔物の方へ向かう。


 『上級の魔物』は全てが異なる形態をしており、同じタイプが2度現れる事が無い。

 常に初見となるのだ。

 それが討伐が困難となる要因の一つでもある。


(蜘蛛って事は多分糸を吐くよね?)


 そう思って警戒していたら、予想通り糸を飛ばしてきた。


 ただし、口だけでなく全身から同時に。


「ちょっと!それは反則!」


 『巨大蜘蛛』は口と頭の周囲にある触手、それから広げた脚の先端全てから同時に糸を飛ばしてきたのだ。

 しかも、糸とはいってもサイズがサイズだけに1本1本はロープのような太さだ。

 

 さすがに全方位から同時に迫ってくる糸を全部かわすのはきびしい。

 そう思っていたら、ジオ様が『シールド』の魔法で防いでくれた。


「ありがとうございます!ジオ様!」


 私はジオ様と一緒に後方に跳躍しつつ、『ファイヤースラッシュ』の魔法を複数同時展開した。


 『スラッシュ』系の魔法は発動後に軌跡をコントロールできる。


 私はそれぞれの『ファイヤースラッシュ』が蜘蛛の糸を切断するイメージを思い浮かべて、魔法に意識を向ける。


 すると、炎の刃は思った通りに動き出し、次々と蜘蛛の糸を焼き切っていった。

 糸を全て切り尽くしてもまだ効力が残っていたので、私は『巨大蜘蛛』の触手や脚など全身を切り刻むイメージを向けた。


 『ファイヤースラッシュ』の残り火は、私のイメージ通りに触手を切断し、ブーメランの様にUターンしながら何度も何度も『巨大蜘蛛』の脚や全身に切りつけていった。

 さすがに脚は太すぎて切断は出来なかったが『巨大蜘蛛』の全身は傷だらけになった。


 動植物系の外観の魔物は火属性の攻撃魔法が最も効果が高いのだが、普段の戦闘場所が森の中の事が多く、その場合は火属性の魔法が使えない。

 今回は場所が海上のため遠慮なく火属性の魔法が使える。


(自分でイメージした通りなんだけど、凶悪な技だったな)


 人間に使ったら絶対心が折れるだろう。

 というか完全にオーバーキルだった。

 まあ、使わないけど。


「見事だ!ララ」

 

 ジオ様はすでに『巨大蜘蛛』のすぐ近くまで接近し、脚を根元から切り飛ばしていた。


 私も『光の剣』を構えてジオ様に続いた。


 『光の剣』の刃渡りを伸ばして『巨大蜘蛛』の脚を一閃で切り落とす。


 残っている脚から糸が飛ばされてきたが、ジオ様を見習って『シールド』を展開した。

 『シールド』はイメージした通りに発生し、『巨大蜘蛛』の糸を跳ね返した。


「すごい!これって剣で防御しなくてもいいから攻撃を中断しないで攻められる」


 普通の魔法士は『シールド』の発動に魔法陣の描画と呪文の詠唱が必要だが、今の私は全ての手順を省略して一瞬で発動できる。

 これまでは剣で防御する必要があったが、敵の攻撃は『シールド』で受け止め、剣は攻撃に集中できるので、よりハイペースで攻撃ができるし、戦略の幅も広がった。


 ジオ様と私の二人の連携で、『巨大蜘蛛』の脚は全部切り落とし、ジオ様が頭を切り落とした。

 

 『巨大蜘蛛』は頭を落としてもまだ動いているので、私は胴体を削り始めた。

 ジオ様も同様に胴体を切り刻み、10m以上あった『巨大蜘蛛』の胴体はどんどん小さくなっていく。


 やがて腹部の中心付近に大きな魔結晶が露出した。


 ジオ様はすかさず魔結晶を蹴り飛ばした。

 魔結晶は『巨大蜘蛛』から遠く離れた場所に飛んでいった。


 魔結晶を失った『巨大蜘蛛』はようやく沈黙した。

 もっともほとんど原型をとどめていなかったが。


「やりましたね!ジオ様」

「次行くぞ!ララ」




 私たちはもう一体の『上級の魔物』の方へ向かった。



 すでに波打ち際まで来ており、全身を海上に露わにしていた。

 それは身長30mはあろうかという巨大な人間だった。

 

 なんと右手には巨大な剣を構えている。

 いや、よく見ると右手の手首から剣が生えている。


「ここまで人間に似てるなんて!」


 色はどす黒い肌色で全体的に人間の形状にかなり近いが、細部は再現されていない様だった。

 鼻や耳などの形状はおおざっぱで頭髪もない。

 目だけはやけに生々しく、しっかりとこちらを見ていた。


「来るぞ!」


 『巨人』は私に向かって巨大な剣を振り下ろしてきた。

 刃渡りは15mぐらいだろうか?

 切られるというより当たったら圧死する。


 サイズのわりには剣速は速いが、今の私なら余裕で避けられる。


 巨大な剣を躱しつつ、『光の剣』で『巨人』の剣の切っ先を切り落とした。


 剣の切っ先は、あっさり切断できた。

 しかしすぐに修復し始めている。


 続けてジオ様が『巨人』に切りかかっていた。

 

 『巨人』は剣で受けようとしたがジオ様は『巨人』の剣を真ん中から切り飛ばし、そのまま頭の方に跳躍していた。


 ジオ様は剣に雷撃魔法を乗せて刃を延長し、『巨人』の太い首を一刀で切り落とした。


 『巨人』の首はゆっくりと傾き、落下していった。


 しかし、なんと『巨人』は左手で頭を受け止め、それを再び首にくっつけた!


「えっ!そんなことできるの?」


 『巨人』の首はみるみる修復され、右手の剣も元に戻っていた。


 『巨人』は剣を地面すれすれで私とジオ様めがけて横なぎに振ってきた。


(さっきより剣速が速い?)


 私とジオ様は後方に跳んでそれを躱したが、『巨人』はすぐに踏み込んで剣を振り戻していた。


(更に速くなった!?)


 『巨人』の体は人間よりはるかに大きい。

 同じタイミングで切り返してるように見えても剣の先端の速度はとんでもない事になる。

 剣が届かなくても風圧で吹き飛ばされそうになった。


 「ララ!同時に切り刻んで一気に倒す」

 「はい!ジオ様!」


 私とジオ様は左右から同時に接近した。


 『巨人』は私の方から剣を振ってきた。

 私は『巨人』の剣の上に飛び乗り剣の上を走って飛び越えた。そのまま『巨人』の足元に走る。


 ジオ様も同様に剣の上に乗りジオ様は剣の上を手首の方に走って行った。

 ジオ様は『巨人』の手首にたどり着くと手首から先を剣ごと切り落とし、更に腕を肩に向かって走って行った。

 そしてさっきと同様に首を切り落とす。


 しかし今度は『巨人』の左側側から回り込んだ私が、屈んでいた『巨人』の膝を足場に左肩に向かって跳躍し、ジオ様と同時に『巨人』の左腕を肩から切り落とした。


 落下する頭を受け取れなかった『巨人』は残った右腕を振り回して私たちを叩き落とそうとしたが、すでに右腕もジオ様が肩から切り落としていた。


 私は落下しながら『巨人』の左足首を切断し、ジオ様も同様に右足首を切断した。


 両足が切断された『巨人』はゆっくりと前に倒れていった。


 その間にも私とジオ様は『巨人』の胴体を切り刻んでいく。


 魔結晶の場所がわからないので、全身を切り刻む必要がある。


 特に心臓まわりを徹底的に切り刻んでいくと、魔結晶が心臓にめり込んでいた。


「完全に密着していたなんて!」


 私は『光の剣』で魔結晶を心臓から切り離した。


 魔結晶が切り離された『巨人』は、ようやく活動を停止した。


「やったな!ララ」

「はい!『終焉の魔物』に急ぎましょう!」





 ジオ様と私は『終焉の魔物』本体へと向かった。


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