5話 勇者様と終焉の魔物
決戦の朝を迎えた。
目の前には今日もジオ様の寝顔がある。
(2日続けてジオ様の寝顔で目覚められるなんて!)
ジオ様のあどけない寝顔を見られるのはこの世界で私だけの特権だ。
(ふふっ、かわいい寝顔!)
ジオ様に安心しきった無防備な寝顔をさせているのが自分への信頼である事が誇らしく、嬉しかった。
折角だからジオ様の寝顔をまじまじと観察した。
あらためて見るとほんとに整った顔立ちだ。
鼻筋は通っていて目は切れ長、そしてまつ毛が長い。
顎のラインもシャープで、各パーツのバランスも良く、見事に左右対称だ。
普段は凛々しい口元が、今はわずかに半開きなのもそそる。
こんな美形の男性、他に見た事が無い。
それが自分の旦那様だなんて!
しばらくジオ様の寝顔を眺めてささやかな幸福感を満喫した。
「おはようございます。あなた」
私はジオ様におはようのキスをした。
「んん、おはよう、ララ」
目が覚めたジオ様は私をやさしく抱きしめて今度はジオ様が私にキスをした。
大丈夫!昨日は寝る前にしっかり身だしなみを整えてから眠ったので裸ではない。
さすがに屋外で裸で寝るのはダメだろう。
昨日は結婚式の後、下ごしらえしておいた材料で豪華な夕食を用意した。
花嫁に準備をさせるなんて申し訳ないとセナ様とゼト様に言われたが、ジオ様の妻となった初仕事なので、是非やらせてくださいと言ったら納得してくれた。
上級調理士となった私の集大成ともいえる料理は、みんなに大好評だった。
ジオ様も始終笑顔で、おいしそうに食べてくれた。
そんなジオ様の笑顔が、私にとっては一番のごちそうだった。
食事のあと、セナ様とゼト様は気を利かせて離れた場所で野宿すると申し出てくれた。
私とジオ様は二人で寄り添って眠った。
・・・もっとも一晩中、二人で愛を確かめ合っていたので、眠りについたのは東の空が明るくなり始めた頃だったが・・・・
二人とも超回復ができるので睡眠をとる必要はないのだが、私からお願いして少しでも睡眠をとってもらった。
ジオ様は睡眠をとる必要はないけど眠れないわけではない。
睡眠という安らぎの時間をジオ様と共有したかった。
長めのキスの後、ジオ様はゆっくり顔を離し、海の方を見た。
「いよいよだな」
私も海の方を見る。
「はい」
水平線の向こうには昨日まで無かった巨大な島のような物が浮かんでいた。
「セナたちと合流する」
セナ様たちのところへ行くと、二人もすでに起きていて海の方を見ていた。
「おはよう!ララちゃん、ジオ君」
「よう!起きたか!お二人さん」
「おはようございます!セナ様、ゼト様」
「ついに来たな」
「そうだね、直接見るのは初めてだよ」
「しかしとんでもねえでかさだな」
4人並んで海の向こうを見た。
次第に近づいてくるそれは,海上から少し離れた高さに浮かんでいた。
「魔物っていうか、空に浮かぶ島ですね?」
それは放射状に突起の突き出した巨大な岩の塊だった。
距離が遠いので正確にはわからないが、突起の先端から先端まで含めると数キロメートルに及ぶ大きさではないだろうか?
中心の塊の部分だけでも、おそらく直径数百メートルはある。
「接近を待っていても仕方がない、先制攻撃をかける。それでいいな?」
「そうだね、待ってても時間の無駄だ」
「先手必勝だな!」
「いつでも大丈夫です!」
「では『終焉の魔物』討伐を開始する!」




