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勇者の弟子はお嫁さんになりたい!  作者: るふと
第9章 勇者の嫁
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4話 勇者様と結婚式

「セナ、ゼト、二人に頼みたい事がある」


 ジオ様が、あらたまってセナ様とゼト様に話しかけた。


「俺とララの結婚式の立会人になってくれ」


(ジオ様!)


「ようやく覚悟を決めたんだね!よかったねララちゃん!」

「そうかそうか!おめでとう!嬢ちゃん」


 二人にパシパシ叩かれた。



「えーと、無事に帰れたらって事だよね? でもそれって今言ったらダメなヤツじゃないの?」


「違う、今ここで結婚式をとり行う」


「俺はララを妻にすると決めた。けじめをつけておきたい。上級役人2名の立ち合いがあれば正式な婚姻として認められる」


「・・・そうだね、それが良いかもしれないね」


 セナ様が少し真顔になった。

 ゼト様もだ。


「いいな?ララ」


 ジオ様と結ばれただけで十分に満足で、もう何も思い残す事はないと思ってたのに!


 ・・・ジオ様は結婚式の事まで考えていてくれたんだ!


「はい!もちろんです!」

 

 私は思いっきりほほえんだ。涙が出るくらいに。



「よーし!そうと決まったら盛大に執り行おう!」



 セナ様とゼト様が簡易的にだけど会場の設営を行なってくれた。


 私も手伝おうとしたら主役はおとなしく待ってなさいと言われた。

 ジオ様と二人で準備が整うのを待つ。



 二人で並んで砂浜に腰かけて海を眺めていた。


 夜も更けて満天の星空には大きな満月が浮かんでいた。

 月の光が水面に反射して神秘的な光景を作り出している。

 明日になったら海の向こうから『終焉の魔物』が姿を現わすとは思えないくらいの美しさだった。



「ジオ様は、・・・私が魔女でもあまり気にしていないんですね?」



 ジオ様は一度私の方を見て、それから視線を月に戻した。



「月がきれいだな」


「はい、そうですね」



 ジオ様は月を見上げたまま、ぽつりぽつりと語り出した。



「ララに出会う前は、月を見て美しいと感じる事などなかった」


「食事を旨いと感じる事もなかった」


「睡眠を心地よいと感じる事もなかった」


「そして人を愛おしいと思う事もなかった」



 ジオ様は私の方を振り返った。


「全て、ララが俺に教えてくれた。人間だろうと魔女だろうと、俺にとっては何も変わらない」


 ジオ様が私を見つめている。


「・・・ジオ様・・・」


 私もジオ様を見つめ返す。


 

 ・・・どちらともなく・・・自然に唇を重ねていた。




「準備できたよー! ・・・って! あー!まだ早いよ!二人とも!ちゃんと段取り守ってよ!」


「せっ! セナ様! いつからいたんですか!」 

「いや、今だけど、邪魔しちゃったかな?」

「れっ、練習してただけだっ」

 

 ジオ様もちょっと焦ってる。

 


 式場は木材や岩でできたモニュメントが並び、篝火が焚かれて、何となく神殿のような雰囲気になっていた。


「結婚式の様式だけど、二人とも剣士の格好だし、『剣士の結婚式』の様式でいいよね?」


「ああ、それでいい」

「私も!それが良いです!」


 この国の結婚式には特に決まった様式がなく、みんな好き勝手な形で結婚式を挙げている。


 『剣士の結婚式』というのは剣士同士が結婚する時に人気の様式だ。


 この国の騎士団には女性の騎士も多く所属しているので、騎士同士の結婚は珍しくない。

 冒険者も生死を共にしたパートナーと結婚する事が多い。



「それでは、『剣豪ゼト』及び『上級魔術師セナ』立ち合いのもと、『勇者ジオ』と『剣聖ララ』の婚礼の義をとり行う」


「両名、己の剣を掲げよ!」


「「はい」」


 ジオ様と私は向かい合って立ち、剣を抜いて天に掲げる。

 2本の剣に月の光が反射する。


「剣に誓いをたてよ!」


「わが命を『剣聖ララ』に捧げる事をこの剣に誓う」


 ジオ様が自分の剣に誓いをたてる。


「わが命を『勇者ジオ』に捧げる事をこの剣に誓う」


 私も自分の剣に誓いをたてる。




 次に掲げた剣を降ろし、互いの心臓の前に突き立てる。


 そしてそれぞれ相手の剣の刃に左手を添える。


「わが命を『剣聖ララ』に委ねる事をこの剣に誓う」


 ジオ様が私の剣に誓いをたてる。


「わが命を『勇者ジオ』に委ねる事をこの剣に誓う」


 私もジオ様の剣に誓いをたてる。



(うん!やっぱりこれがしっくりくる)


 私とジオ様は3年間、毎日のように剣を交えてきた。

 会話している時間より剣を交えていた時間の方がはるかに長い。

 剣を交えれは気持ちはすべて通じ合える。


 そんな私たちには、やはりこの結婚式が一番ふさわしい。


「互いに誓いをたてよ」


 再び剣を天に掲げ、お互いの剣を交差させる。


「わが命が『剣聖ララ』と共にある事を誓う」


「わが命が『勇者ジオ』と共にある事を誓う」


 私とジオ様はお互いに見つめあい、頭の上で剣を交えたまま近づいてゆく。


 

 そして、誓いのくちづけをかわした。



「これをもって『勇者ジオ』と『剣聖ララ』は夫婦となった」




「おめでとう!ララちゃん!ジオ君!」

「おめでとう!嬢ちゃん!ジオ!」


「ありがとう」

「ありがとうございます!」



(やった! 本当に勇者様のお嫁さんになれちゃった!)


(ううん! 勇者でも勇者でなくてもいい! 大好きなジオ様のお嫁さんになれたんだ!)


「ララ」


「ジオ様」



 剣を収めた私たちは再び抱き合ってキスをした。


 ジオ様のキスは、そっと触れるやさしいやさしいキスだった。



(私は今、まちがいなく世界で一番幸せな女の子だ!)



(この幸せを『終焉の魔物』なんかに奪われてたまるものか!)


(どんな手段を使ってでも二人いっしょに生き延びてやる!)




 欲張りな私は、これまでの人生で最高に欲を出していた。


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