1話 勇者の弟子と目覚め
目が覚めると目の前にジオ様の寝顔があった。
(朝からジオ様の寝顔が見られるなんてラッキー!)
とか、ぼんやりした頭で考えていたら・・・しだいに昨夜の事を思い出してきた。
(そうだ! 私・・・ジオ様と・・・・・!)
ハッとして体を起こそうとしたら・・・服を何一つ身に着けていなかった。
そしてジオ様も・・・
(はわわわわわわ!!!)
慌てて毛布の中に潜り込み直した。
慌てたせいで、ジオ様と肌が触れてしまった!
「ひゃわ!」
思わず変な声が出た!
「んん・・・・」
私の声に反応したのか、ジオ様が身をよじり、そして・・・寝ぼけて私を抱きしめた!
(思いっきり裸で抱きしめられてるんですけど!)
「じじじじじ、ジオ様!?」
さすがにジオ様も目を覚ました。
「ん・・・ララ?・・・・はっ!」
ジオ様も状況を理解したらしい。
「ララ! すっ すまない!」
ジオ様は慌てて体をおこし、私の肩を掴んで私を自分から引き離した。
「「えっ」」
朝日のさし込む、明るい寝室のベッドの上で、お互い向きあっている体勢になってしまった。
裸で。
「ひゃわわわわわわわ!」
「うわあああああああ!」
一瞬の沈黙ののち、二人とも慌ててベッドの両端に離れ、私は毛布で前を隠した。
ジオ様も腰から下に毛布を巻いている。
「すすすすすっ! すまない! ララ!」
「いいいいいえっ! だっ 大丈夫ですっ!」
何が大丈夫なのか意味がわからないが・・・
(明るい所で思いっきり・・・見ちゃった・・・私も・・・思いっきり見られたよね?)
昨夜は暗かったのではっきりとは見えていなかった。
(うわー! はずかしいぃぃぃ!)
顔が耳の先まで真っ赤だ。
心臓が激しくバクバク言ってる。
おさまる気配がない。
これどうやったら落ち着くんだろう?
ジオ様の方を見ると、同じく真っ赤でこちらを振り返った。
動揺して目が少し潤んでる。
「・・・ララ・・・申し訳ない・・・」
「・・・いえ・・・こちらこそ・・・」
だから何がこちらこそだ?
「・・・申し訳ないついでに・・・頼みがあるんだが・・・」
「・・・なんでしょうか?」
「・・・もう一回だけ・・・いいだろうか?」
ジオ様、真っ赤になってうつむきながら、チラッと私の方を見た。
(うわー! 全裸のイケメンが紅潮して潤んだ瞳で上目遣いで、そのお願いって!)
そんなの断れるわけないじゃない!
「・・・・・・・はい・・・・・・」
私も更に真っ赤になってうなづいた。
それから、ようやく落ち着いた私たちはお風呂に入って汗を流した。
もちろん別々に・・・一緒に入ったらエンドレスになってしまいそうなので・・・
それから無言で朝食を食べた。
目が合うと赤くなってしまって会話にならなかった。
そして遠征の装備を整えると、丁度そこへゼト様とセナ様が到着した。
「よお!おふたりさん!調子はどうだ!」
「おはようございます!ゼト様。なんだかいつもよりご機嫌ですね?」
「まあなっ!」
「おっはよー! 継承の秘術はうまくいった?」
私とジオ様は目を合わせて赤くなった。
「あっ、ああ、大丈夫だ」
「はっ、はい、大丈夫です」
(そういえば継承の秘術の事すっかり忘れてたー!)
「何で秘術の事聞いたらふたりとも赤くなってるのさ?」
「問題無くララに継承した」
ジオ様は頭にぽんっと手を乗せた。
「まあいいや! 準備が出来てるなら出発しよう」
セナ様は、ちょっと含み笑いしている。
・・・気付かれて・・・ないよね?
私たち4人は転移魔法陣の間へやってきた。
ここから討伐に出発するのも、もう何度目だろう?
この4人で色々な場所へ行った。
「じゃあララちゃん、いつも通りお願いね。今回の転移先はこれ!」
セナ様は今回の目的地である国の最南端の地の魔法陣を示してくれた。
「はい、了解です。描きあがったら発動お願いします」
セナ様に指示された紋様をレイピアで魔法陣に描き込み始めた。
魔法陣を描くのもすっかり手慣れたものだ。
いつもと同じように描き始めたが、わずかに違和感を感じた。
(あれっ?なんだろ?)
そして・・・描いている途中で異変が起きた。
(私の体から・・・魔力が放出されている!?)
初めての感覚だった!
体内の魔力が体の表面に流れ出し、表皮に沿って右手に集まりレイピアの先から魔法陣に流れ込んでいく。
そして、描きかけの魔法陣は残りの部分をまだ描いていないのにすでに完成していた。
「ララ! その姿は!」
ジオ様が驚いた顔で私を見ている。
「魔法陣が発動する!みんな!早く中に入って!」
セナ様が叫んだ。
全員が魔法陣の中に入ったところで転移魔法陣が発動した。
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