13話 勇者様と勇者の継承
「では、これから『勇者の継承』を執り行う」
明日は『終焉の魔物』の討伐に出発する。
二人で生き残る可能性を諦めたわけではないが、万が一のために継承の秘術は施行しておく必要がある。
「ジオ様、『勇者の継承』の方法なんですが・・・私が方法を決めてもいいんですよね?」
「ああ、かまわない。俺を食いたいなら食ってもいいぞ」
「そんなことはしません!」
相変わらずジオ様の冗談は変化球だ。
「・・・恥ずかしいので・・・耳を貸してください」
私はジオ様の耳元に顔を近づけた。
(うー、覚悟は決めたけど、いざとなるとやっぱり恥ずかしい!!!)
「どうした?教えてくれ」
ぎりぎり聞こえるくらいの小さな声でジオ様の耳元にささやいた。
「継承の方法は、・・・・・・・・・・・・・・・!!」
ジオ様の顔は次第に赤くなり、やがて耳まで真っ赤になった。
「・・・ララ! それは!!! いや、確かに、それでも可能だが・・・・」
ここまで赤くなったジオ様を見たのは初めてだ。
そして、言った私も耳まで真っ赤になっていた。
「・・・他の方法は・・・受け入れません!」
私はぷいっと横を向いた。
「・・・いや・・・しかし・・・」
「・・・こうでもしないと・・・ジオ様・・・その・・・してくれないので・・・」
私は横を向いたまま、ちらっと上目遣いにジオ様を見る。
「とにかく! この方法がダメなら私は勇者を継承しません!」
再びぷいっと横を向く。
「・・・ララ・・・」
ジオ様は真っ赤になったまま頭を抱えている。
「ジオ様、・・・私は、欲張りなんです」
ジオ様がゆっくりと私の方を向いた。
「欲しいものがいっぱいあって、全部手に入れないと気が済まないんです」
「ジオ様と出会って、私の世界はどんどん広がって、欲しいものがどんどん増えました」
「だけど、ジオ様のおかげで、欲張りな私の欲しいものは、もうほとんど手に入ったんです」
「ジオ様のおかげで、私はとっても幸せでした」
「でも、本当は、もう少しだけ、わがままを言わせてもらえるなら・・・素敵な旦那さまと、かわいい子供がほしかったです」
いつのまにか、私の目から涙がこぼれていた。
ジオ様は・・・私のそばに来て、やさしく私の目にくちづけして、涙をぬぐってくれた。
「ジオ様・・・あと一つだけ・・・私の願いをかなえてもらえませんか?」
「・・・ララ・・・」
ジオ様は、私をふんわりとやさしく抱きしめた。
「私を・・・ジオ様のお嫁さんにしてください!」
第8章完結です。明日から最終章【勇者の嫁】開始します。




