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第6話 6話 先輩のことが……以下略!!

 ——昼休み

 いつものように屋上へ来るとまだ沙耶乃の姿は無いようだ。

 今朝の仕返しにドアの影に隠れて出できたところを驚かせてやろう……

 やばい、なんか楽しくなってきた。 早く来い浦影……!

 その後、ドアの影に隠れて五分ほど待ってみたが沙耶乃が通ることはなかった。

 「そう言えば、今日は来いとも言われてなかったな……浦影来てくれないのかな……」

 そんなことを考えていると背後から肩をトントンと叩かれて驚き振り返る。

 「浦影!? なんでいるの!?」

 「先輩を驚かせるために隠れていたら先輩も隠れるんですもの」

 どこに隠れてたの!? 忍者かあんたは!

 「てか、居たなら出てこいよ! 待っててやって損したわ!」

 「先輩の恥ずかしい独り言も聞けましたし、わたくしは御の字ですわ」

 「独り言聞かれてるし! 別にお前に会いたいんじゃなくて仕返ししたかっただけだからな?」

 「はいはい、そうなんですのね」

 沙耶乃は適当に返事をすると悪戯っぽい笑みのままいつものベンチに腰掛けた。

 「先輩のだーいすきなわたくしの隣に今日もお座りになります?」

 「別にお前のこと好きになってなんかねえから!」

 そう一言だけ言って隣に座った。

 別に好きとかじゃなくて友達ができて少し嬉しかっただけだよな……?

 そうだろ俺! 他意はない。 きっと間違いない!

 考えれば考えるほど深みに嵌ってしまう気がしてそう信じることにした。

 「先輩ったら必死に否定しちゃって可愛い……」

 沙耶乃が吐息がかかるほどの距離まで耳に顔を近づけて囁いてくる。

 「ちょ、浦影! 耳元で囁くのはやめろ!」

 「ドキドキ……するからですの?」

 確かにしたよ! 悔しいじゃねえかなんでお前相手にドキドキするなんて……

 「違う! それと必死に否定してるんじゃないからな! 事実の訂正をしてるだけだ!」

 「ふーん、そうなんですの」

 沙耶乃は表情から一切の笑みを消すと広げていたお弁当の入ったバスケットを片付け始める。

 「わたくしのことがお好きでないのでしたら前みたいにぼっち飯でもしてたらよくて?」

 そう一言だけ告げると沙耶乃は俺を残し校舎の中に入って行った。

 一方、屋上に一人取り残された俺は頭を抱えていた。

 浦影がいてもいなくても構わない。 別に好きとか一切ない。 そう思ってたはずなのにな……

 いなくなってしまうと寂しい。 友達としての好きなのか、それ以上なのかはまだ分からないが好きになっていたのは間違いない。 そう思えてくる。

 それにお前のことは好きじゃないなんて言ってしまったのは謝らなきゃいけないよな。

 覚悟を決めた俺は沙耶乃を探しに行こうと校舎へのドアを開ける。

 「先輩、探しにくるのが遅いですわよ」

 ドアの向こうには悪戯っぽく笑う沙耶乃の姿があった。

 「あら、今日は悪戯されたーって怒らないんですのね」

 確かにそう思っているけど、沙耶乃が傷つくかも知れない言葉を言った事実が消えることはない。 だから真面目な表情で真っ直ぐ見つめた。

「な、なんですの……?」

 沙耶乃は何を言われるのか分からないと、少し警戒した様子で言う。

 「さっきはお前のこと好きじゃないなんて言ってしまってごめんな。 あのあとよく考えてみてもどう言う意味での好きなのかは分からなかった。 でも、俺はお前のことがきっと好き……だから……」

 もっとシンプルで分かりやすい言葉があるのかも知れないが今の俺にはこんな言葉しか見つけられなかった。

 それでも、ちゃんと気持ちは伝えたいと思い沙耶乃をじっと見つめる。

 沙耶乃は白い肌を耳まで赤くして俯き視線を逸らす。

 「そ、それって……わたくしとお付き合いしたい……という告白……ですの……?」

 ……んん!? 謝罪じゃなくて告白と勘違いされてる!? 俺がお前みたいな家柄も良い美少女となんて釣り合わねえだろ! 

 「違う違う! 俺が誰かとお付き合いなんて滅相も無い!」

 「そうなんですの……」

 どうしてお前はちょっと残念そうなんだ? 勘違いしたらどうしてくれるんだ!

 「お前だって俺みたいな奴を恋人にしたいとか思わないだろ? それにまだ出会って数日目だぞ!?」

 俺がお前に対する好きを理解するのにもまだまだ時間がかかりそうな気もするし。

 沙耶乃はそんな俺を真っ直ぐじっと見つめてくる。

 「初めて会った日、先輩がわたくしを知った上で受け入れてくれた時にわたくし……以下略! あとはご自分で想像してくださる!?」

 その表情でその言葉を態度をされると本当に勘違いしちゃうぜ……? 俺ピュアだから……

 「と、とりあえず休み時間も残り少ないから弁当食べないか!?」

 邪念を振り払うために少し大きな声で沙耶乃に声をかける。

 「そ、そうですわね! 先輩のせいで食べ損ねるところでしたわ」

 沙耶乃も少しまだ赤い頬をパンッと両手で叩くといつものベンチに座った。

 頬を染めた沙耶乃の隣に腰を下ろした俺は、いつもの隣に近いベンチがさらに近くなったような気がしていた。

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