7.楽しい?お茶会
〜ベッキー視点〜皇后とのお茶会
ええっと…。みなさんこんにちは、
イザベラ様の専属メイドのベッキーです。
わたくしは、田舎のちょっとお金持ちな家に生まれました。しかし、ある日突然お城で働くことになりました。
お城にはわたくしよりもお金持ちの家から来た人がたくさんいて、ずっと下っ端の雑用係でした。
そんな時、天使が舞い降りたのです。
あれは……、わたくしがまだお城に来て間もなく、先輩メイド達にも仲間外れにされていた頃のことでした。
わたくしが1人で廊下の窓拭きをしていた時、物置だと思っていた部屋から1人の女の子が出て来たのです。
その子の瞳は透き通るような紫色で、
あまりの美しさに思わず見とれてしまいました。
しかし、そのあとやってきた先輩メイドに、部屋に押し込められてしまいました。
しかも先輩メイドはこう言っていたんです。
「呪われた瞳の忌子が。二度と出てくるんじゃないわ。目障りよ」
あんなに綺麗な眼なのに、酷いと思いました。
でも、後からコナリザ王国では紫色の眼を持つ者は呪われているという迷信があると知って、あの子がかわいそうに思ったのです。
部屋に戻ってからも、その子のことが忘れられませんでした。
あんなにも綺麗な眼なのに、
あんなにもなめらかな肌なのに、
あんなにも美しい髪なのに、
目の色で虐められるなんて、あってはならないと思うのです。
さらに、後からあの子が王族であったことを知り、わたくしはいてもたってもいられなくなりました。
今考えると、わたくしの祖国では紫色の眼は喜ばしいことなのに、ここでは疎まれることに怒りを感じただけでなく、
あの美しいお姿に一目惚れしていたのだと思います。
それからのわたくしは必死でした。
あの子に会いたい。そして紫の眼は悪いことではないと教えてあげたい。
とにかく会いたい。
その一心で仕事をこなし続けました。
今思えば狂気の沙汰ですね。
全てはメイドとしての地位を上げて、
あの子に会うため。
そんなある日、とある噂が耳に入ってきました。
「紫の眼の呪われた忌子がやっと結婚して出て行くらしいよ」
「しかも相手は好色の黒竜でなんと80歳らしいじゃない」
「専属メイドを募集してるって…。
誰もやるわけないじゃないの」
紫の眼の呪われた忌子とは、あの子のことに違いありません。
しかも専属メイドを募集しているようではないですか。
これは立候補するしかありませんね。
やっと手に入れたメイド長の地位を捨ててでも行きましょう。
わたくしはあのお方のためにここまで来たのですから。
そんなこんなで無事にイザベラ様の専属メイドとしておさまったはずなのですが…。
「あなたがイザベラの専属メイドのベッキーよね。
ちょっとお話ししたいことがあるの。わたくしのお茶会に招待します」
わたくしベッキー、皇后様のお茶会に招かれています!
ど、どーしよう!?
「まず、あなたに聞きます。
イザベラはコナリザ王国にいた時は
どうだった?虐められていなかった?」
目の前で皇后様が優しく微笑んでいる。
しかしその目は全く笑っていない。
まるで獲物を狙う鷹のような目だ。
絶対に嘘をついたらバレる。
イザベラ様が虐められていたかという質問に対する答えは、Yesだ。
でも、これを正直に言うと、下手したら
コナリザ王家への侮辱罪で殺される。
誰がどこで繋がっているのかわからないのだ。
普通のメイドならNoと答えたでしょう。
しかしわたくしはイザベラ様の専属メイド!
そしてイザベラ様のためならこの命だって惜しくない。
たとえ侮辱罪になったって、イザベラ様への虐めを報告しないなどという選択肢はないのです!
「えぇ。虐められておりました。
紫の眼を持つ忌子として、わたくしの知る限りでは7歳ではすでに」
わたくしの命はイザベラ様のためにあり、
イザベラ様のためならどんなに辛いことでもやってみせます!
イザベラ様は世界一!ビバ!イザベラ様!
わたくしがイザベラ様への想いに燃えていると、皇后様が不思議そうな目でわたくしを見つめてきた。
「普通のひとならここで嘘をつきますのに…。どうしてあなた本当のことを言うのかしら?」
それは、世界一お美しいイザベラ様の幸せのためです!
イザベラ様最こ…、いけない、皇后様の前だった。
「皇后様の前で嘘をつくなどするわけないではないですか」
ありきたりな答えで誤魔化す。
相手がイザベラ様に反感を持っていた場合、本当のことを話すと危険ですからね。
「そう…」
すると、皇后様はわたくしに向けていた
鋭く目を柔らかくした。
「あなたは信頼してよいみたいね。
いいでしょう、これからもイザベラのために全力を尽くしなさい」
皇后様はそう言って、わたくしに花の咲くような笑みを向けた。
イザベラ様が1番だけど、皇后様も尊い…。
美しい!
「あ、もう一つ聞きたいことがあるの」
皇后様は不思議そうな顔をした。
「どうしてそんなにイザベラのために尽くせるの?詳しく教えてちょうだい」
イザベラ様のためにどうして…?
そんなの決まってるじゃないですか!
イザベラ様が女神だからです!
ハッ、抑えて抑えて。
「イザベラ様は主ですから当然のことではないのでしょうか」
無難に、無難に…。
「そう、もっと詳しく教えてちょうだい」
皇后様が言う。
その瞬間、わたくしの中のどこかで、
音がなった。
「カチッ」
わたくしは深く息を吸い込んだ。
「まずイザベラ様の眼の色ですが、
わたくしの祖国では縁起が良い色とされていました。さらにあの美しい髪。
あんなに綺麗な髪は、わたくしは見たことがございません。そして陶器のように
美しい肌。まるで透き通るようです。
尊いのは見た目だけではございません。
イザベラ様は誰にで優しく、平等に接します。屋敷ではメイド達に労いの言葉をかけ、感謝を伝える。とても尊い行いです。
イザベラ様は見た目も中身も素晴らしい、パーフェクトスーパーガールなのです!
あのお方こそまさに女神!
イザベラ様万歳!…ハッ!
失礼しました」
やってしまった…。
皇后様が完全に引いている。
わたくしはイザベラ様のことになってしまうと、少々歯止めが効かないようです。
反省しなくては…。
「ふふっ」
突然皇后様が笑った。
「とても面白い子ね。イザベラはよいメイドに恵まれたわね」
え?
一瞬耳を疑った。
怒られない?
よいメイド?
わたくしが?
「……ありがとうございますぅぅぅ!」
皇后様はとても良い人だ。
イザベラ様の次に良い人だな。
「……この子は、信用できるわね」
皇后の言葉に歓喜するベッキーには、
皇后の呟きは聞こえなかった。
読んでいただきありがとうございます。
これからも頑張ります!
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