4.慈愛の神
「え……ここって入っていい場所?」
ルシアン様との面会のためにと向かった場所は、まさかの王城だった。
「もちろんでございます。イザベラ様は
第3王子と結婚するのですから」
え?ルシアン様って、王族なの?
聞いてないんだけど。
お城の門で衛兵に検査をされる。
「ルシアン王子の婚約者の、イザベラ・コナリザ様でございます。」
「よし、通せ…えっ、!?」
衛兵さんが私の顔を見た瞬間、驚きの声を上げる。
何かついてるかな?
「ベッキー、私の顔に何か付いておりますか?」
「いいえ、今日も素晴らしいお顔です」
ベッキーにさらりと褒められてしまった。
嬉しい。
そこで私を凝視していた衛兵さんがハッと
我にかえる。
「も、申し訳ございませんでしたぁぁぁ」
すごい謝られた。土下座まではしないでいいと思うけど。
「大丈夫よ。異国の者だから驚いてしまったのでしょう。いつもお城を守ってくれてありがとう」
「あ、ありがとうございますぅぅぅ」
あれ、衛兵さん泣きだしちゃった。
ど、どうしよう。
「早くいきますよ。イザベラ様」
ベッキーが助けてくれた。
ベッキー、有能。
泣いている衛兵さんにお城に通してもらい、まず陛下と皇后に挨拶をするために謁見の間に向かうのだが…。
「やっぱり私の顔に何か付いているのかしら」
めっちゃ視線を感じる。衛兵やメイド、
すれ違う人がすっごい見てくる。
恥ずかしい。
「着きました。ここが謁見の間です」
門から案内してくれている人が、
ドアを開ける。
「うわぁ」
そこに広がっていたのは、だだっ広い空間。
装飾品も豪華だけど、とにかく広い。
ショックで固まっていると、ベッキーが声をかけてきた。
「お進みくださいませ。イザベラ様」
周りを見ると案内してくれた人が怪訝そうな目で見ている。
「失礼します」
「うむ」
陛下と皇后の前にでる。
「面を上げよ」
言われた通りに顔を上げると、
「えっ?」
そこにいたのは、人間だった。
たしか王族は竜だったはずだ。
なんで?
私が固まっていると、陛下が話しかけてきた。
「遠いところからよく来たな。
わしが国王のルイ・クローダーじゃ。
よろしくな。
お主の名は?」
「こ、コナリザ王国から参上いたしました。イザベラ・コナリザと申します」
「うむ。イザベラか。息子を頼んだぞ」
「は、はいっ!」
緊張で声が裏返ったけれども、
優しそうな人でよかった。
「し、失礼しました」
なんとか乗り切った。
頑張ったよ、私。
ある程度の礼儀作法は叩き込まれていたけど、やったことはほとんどなかったからなぁ。
一方、謁見の間。
「我が息子との婚約を申し込んだのは、
リベルナ・コナリザではなかったのか?」
我が妻のエリザベスに問いかける。
「えぇ、そうだったと思います」
「それに、あの瞳の色、さらにピンクゴールの髪、そしてイザベラという名前は、
我が国に幸福をもたらすと言われる
慈愛の神「イザベラ」と完全に一致しているではないか」
あそこまで特徴が一致することなどあるのか?
「え、えぇ。そうですわね。
あの子は一体何なのでしょう」
もしあの子が慈愛の神「イザベラ」の化身
なのならば、あの子の、ルシアンの
ことを救い出してくれるかもしれない。
おまけー門を守る衛兵達
「聞いてくれ!女神が現れたぞ!」
アルタが訓練場に駆け込んでくる。
確かアルタは門の担当だったはずだ。
「俺も見た!」
「イザベラ様だ!」
「女神だ!」
他の場所が担当の者たちも次々に応じる。
アルタがこっちに向かってきた。
「ルシアン様!女神が現れました。
ルシアン様の婚約者は女神です!」
何を言っているのだ?
私の婚約者はリベルナではないのか?
我が国での女神と言えば、慈愛の神「イザベラ」を指す。
イザベラはかつて呪いによって滅びかけた我が国の王家を、「竜の力」と呼ばれる浄化の魔法で救った英雄だ。
そして、王家に竜の力を授けた。
竜人である王家とは非常に関わりが深い。
だが、それでも稀に呪いを受けて生まれる者がいる。
私のように…。
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