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28.記憶


「じゃあ、頑張ってこい。

イザベラの身に危険が起きたら分かるようになってるから安心しろ」


ルシアン様が満面の笑みで送り出してくれるが、その行為自体が危険なことには気がついていなそうだ。


私は大量の食料に武器にいろいろ持たされて、後戻りは出来ない状態になっている。


幸いにも、皇后様が提案してくれたおかげで危険察知の魔石はつけてもらえた。


……恐怖の実戦も止めて欲しかった。


普通ならありえないことだが、竜人族のモットーは「持つべきものは力」らしく、

全員が成人までに一回はダンジョン送りになるらしい。


と、いうことでダンジョンでの5日間サバイバルが始まりました!


ダンジョンの中は無限に湧いてくる魔獣の方々が獲物を探して彷徨っています。


対して私は防具も武器もなく、所持品は食料のみ!

 

さぁ、イザベラは生き残れるのでしょうか!?


……無理な気がする。


ダンジョンに入った瞬間、洞窟の入り口が塞がれた。


本当に死にかけないとここからの脱出は不可能である。


「よし、頑張るぞ」


案の定、中には魔獣がいっぱいだったが、

ルシアン様に教えてもらった魔法でどうにかする。


そうして奥に進んでいくと、大きな湖があった。


水は透き通っていて、キラキラと輝いている。


しばらく眺めていると、水の底に何かがあるのが見えた。


「なんだろう?」


よく見ようと覗き込むと、


「あっ」


足元の石が崩れて、なんと水に落ちてしまった。


必死で浮かび上がろうとするも、服が水を吸ってしまい、どんどん沈んでいく。


水の中は、蒼くて、透き通っていて、

懐かしかった。


不思議と、息が苦しくない。

身体も軽い。


水の中を泳いでいくと、見覚えのあるものが見えてきた。


「あの時の、遺跡……?」 


あの時見た建物が、水中に佇んでいた。


なぜか入らないといけない気がして、

入り口から潜り込んでみる。


今回は弾かれずにすんなりと入れた。


奥に進んでいくと、広い空間にでた。


沢山の石像が並んでいる。


一つ一つ見ていくと、いくつか見覚えのあるものがあった。


「神の、像?」


学園で習った神そのものの見た目だ。


そして、見覚えのない像に目を向けたとき、違和感を覚えた。


知ってる。この人を知っている。


思わず像に触れるとーー


「……」


気がついたら知らない場所にいた。


動こうにも体が動かずその場に立っていることしかできない。


周りを見回してみると、そこはどこかの森のようだった。


美しい湖が目の前にある。


「パシャ」


湖の水面が波だち、何かが顔を出した。


そして岸に腰掛け、蝶たちと戯れていた。


そこではたと気づく。


その少女の目が紫色なのだ。

さらに髪の色もストロベリーブロンドである。


やけに私との一致率が高い。


もしかしたらこの少女が慈愛の神イザベラなのかもしれない。


たしかにそう思うとさっき見た石像と雰囲気が似ている気がする。


少女は美しい微笑を浮かべながら森の生き物たちと遊んでいる。


ずっとこの時間が続けばいいーー


「いたぞ!湖の乙女セイレーンだ」


武装した集団が美しい光景を叩き割る。


よく見ると一昔前の王国騎士団の紋章を付けている。


「王国騎士団だ。お前の身柄は捕らえさせてもらう」


そして少女を囲んで、あっという間に縛り上げてしまった。


少女は抵抗するが、結局逃れられない。

 

連れて行かれる直前、少女が突然こっちを見た。


そして一粒の涙を流して、その直後、

転送の魔法陣によって消えていった。


さらにその後も何かが頭に流れ込んでくる。


「美しい見た目をしておるな。今日から

私の愛妾とする」


顔を気持ち悪く歪めて言うお父様。


「お前の出した成果は全て私のものだ。これからも精々励むと良い」


少女が世界を干ばつから救ったのにも関わらずお父様の成果になる場面。


「子ができただと。気持ち悪い。

勝手に育てろ」


少女の懐妊の報告を聞いて蔑むような目を向けるお父様。


「お前の力で魔王軍を倒せ」


いるべき場所から離されたせいで魔力の供給が出来ずに弱ってきている少女にお父様が言い放った言葉。


「お前は私の役に立てて幸せだっただろう。イザベラ・コナリザ」


「娘も同じ名前にしよう。醜い種族の子は醜いのだ」


ーーここで少女の、いやお母様の記憶は終   

  わっていた。


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