24.異変
「さて、帰ろうか。イザベラ」
ルシアンが立ち上がって言った。
「ええ、そうですね」
イザベラもそれに応えて立ち上がる。
2人は仲良く並んで、自分たちの帰りを待つ者の元へと歩き出した。
その様子は、前よりもはるかに婚約者同士らしく、お互いに信頼しあっていることが分かる。
コナリザの王城から2人を見送るリベルナは、羨望の眼差しを向けていた。
ーコナリザ王城ー
「えー、現在の国の経済状況ですが、
ひじょーに厳しい状態ですね」
経済を担当する大臣が、眼鏡をかけ直しながら言った。
「その影響で、仕事を失う者も増えています」
国民の仕事に関することを担当する大臣もそれに続けて報告をする。
「失業者の増加により、治安が低下しております」
「今年は干害のせいで農作物が育っていません」
「テルドリフ鉱山の閉鎖により、魔石の産出量が減少しています」
「騎士団の遠征があった影響で、人材育成ができておりません」
他の大臣からも次々と報告があがる。
どれも異なる問題に思えて、その原因は一つ。
最後に、これまで司会進行役に徹していた
大臣長から報告があがる。
「その原因は、ダンホゲからの輸出が激減したことだと思われます」
他の大臣たちの報告を聞いて、大臣長は頭を悩ませていた。
一体、どうしたものか。
現在、コナリザ王国は非常に厳しい状況である。
正直言って、崖っぷちだ。
もともと、コナリザ王国は資源に乏しい。
よって、そのほとんどをダンホゲ国からの輸入で賄っていた。
だが、突然
「今年はうちの国も厳しい状況でして、
輸出量は例年の半分程度となってしまいますわ」
とかいう理由で輸入できなくなったのだから、たまったものじゃない。
不作や魔獣避けの魔石不足でも輸入が叶わず、騎士団まで派遣し、失業者も後を立たない。
どんどん悪循環で悪くなっていく。
私は一番高いところにどっかりと腰掛ける
コナリザ王を見た。
国が大変だと言うのに、我関せずという表情でまるで状況が分かっていない。
なんならあくびまでしている。
「大臣長!こちら、先月の国家予算の
使用内訳です」
大臣の一人が重要書類を渡してきた。
本来ならば国王が厳重に、検査しなければならないのだが……。
「……ふあ。頼んだぞ、大臣長」
この様だ。
私はため息を抑えつけ、書類に目を落とした。
やっぱり前々から思っていたが、雑費が異様に多い。
不審に思い、試しに計算してみたが、
やっぱり数字が合わない。
……横領の可能性があるな。
私はこの部屋にいる面々を一人ずつ見ていく。
最後に、一番高いところに鎮座するにやけ顔の男を見た。
一番怪しいのはあいつだろうな。
他の大臣たちがこのようなすぐにバレることをするはずがない。
いつか、絶対にこのことを暴いて、
あいつを国王の座から引きずり落としてやる。
そして、もっとまともな国にしよう。
しがない中級貴族からここまで登りつめた実力者、ヤラサダ・ダンベルガは、王座を見つめながら、そう決意した。
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