19.コナリザ王
ールシアン視点ー
ルシアンは王城の応接間にて、現コナリザ王と向かい合っていた。
「どういたしましたか、ルシアン王子」
王は革張りのソファにどっしりと腰掛け、
余裕のある笑みを浮かべている。
……イザベラを拐っておいて、よくもまぁ
そんな顔ができるな。
今更ながら、改めて怒りが沸いてきた。
「イザベラが、ここに来ていませんか。補修授業の休憩に行ったきり、帰ってきていないのです」
「補修授業?やっぱりあいつは出来が悪い。あなたも苦労しているでしょう」
出来が悪いと思っていたなら、他国に嫁にだすなよ。
それに、別に出来も悪くないし、苦労もしていないんだけどな。
「あいつは来ていませんよ。
きっと授業が嫌で抜け出したのでしょう」
王が気味の悪い笑みをさらに深めて答えた。
このままでは埒が開かない。
リベルナ・コナリザの従者を名乗る怪しい
人物が学園から出ていったらしいのだか、
違ったのか?
その時、
「失礼します!
ピンクゴールドの髪に、紫の眼を持つ人物を発見しました!!!」
全身を鎧で固めた重装備の男が部屋に入ってきた。
こころなしか顔がにやけている気がする。
「確認したところ、イザベラ・コナリザ様でした!!」
イザベラ!イザベラは無事なのか!?
「あ、あ……」
コナリザ王はどっしりとした姿勢のまま固まってしまっていた。
先程までは余裕のあった笑みも、すっかり崩れてしまっている。
さらに、
「待ってぇー、誤解なの、違うのー」
イザベラが部屋に飛び込んできた。
「あれ、ルシアン様?どうしてここに?」
いまいち状況が読めていなさそうだが、
私も分からない。
と、何か事情を知っていると思われる
コナリザ王が解凍された。
「おおおお前、久しぶりじゃな。
げ、元気じゃったか」
いやさすがに動揺しすぎだろ!?
これでは何か知っていると言っているようなものだぞ。
さらに廊下からドタバタと誰かが走って来る音がする。
「お前、待ちなさいっ!」
イザベラと同じピンクゴールドの髪の少女だ。
一つ大きく違うところがあるとすれば、
少女の眼は鮮やかな蒼であるところだ。
「あっ、お父様!わたくし、イザベラに攻撃されたのです。罰を与えてください」
まだ幼い見た目からして、イザベラの姉妹の末っ子、リベルナ・コナリザと見て間違いないだろう。
リベルナ・コナリザの発言を聞いて、コナリザ王は水を得た魚のように元気になった。
「なんじゃと!それはいけないな。
お前!3日間食事抜き……ではなく、
ルシアン王子、我が娘に罰を与えてください」
いやちょっと待て、今のリベルナ・コナリザの発言を信じるのか!?
イザベラの話も聞かずに!?
あと食事抜きって言いかけていなかったか!?
今まではやっていたということか!?
「こちらの殿方がルシアン王子ですの!?
全然ヨボヨボのジジ……とてもお眼麗しい方ですわね!」
今ヨボヨボのジジイって言ったよな!?
確かに80歳だけど、普通の人間に換算すると18歳くらいだぞ!
成長速度が遅いだけだからな!
突然、リベルナ・コナリザがぱっと顔を輝かせた。
「わたくし、良いことを思いつきました!
忌子のことはもういいですわ。
ただし、罰としてルシアン様との婚約を解消させてくださいな。
そしてわたくしと婚約しましょう!」
……何言っているんだ、こいつ。
一瞬、部屋中がそんな空気で満たされた。
さっきまでリベルナ・コナリザに甘かったコナリザ王さえも一瞬、顔から表情が抜け落ちていた。
「リベルナ!?
お前はハンナ殿と婚約したのではなかったのか!?」
コナリザ王が声を上げた。
「そうですけれども、わたくし、
ルシアン様の方がいいですわ。ね、お父様、変えてくだ……」
「ふざけるんじゃないっ!!」
コナリザ王の怒声が響いた。
それは怒るだろうな。
ハンナ殿といえばギベリアの第一王子だ。
ギベリアは国のレベルではコナリザより圧倒的に上である。
そこの第一王子と婚約させるなんて……
ものすごく大変だっただろう。
今だけはコナリザ王に同情するな。
コナリザ王は右の手のひらに魔力を集め始めた。
まさか、リベルナ・コナリザに当てる気か?
あの量の魔力、当たりどころが悪ければ即死するぞ!
「ぐぅおおおぅ」
コナリザ王の体中の魔力がどんどんなくなって、手のひらに集まっている。
「避けろ!!!!」
私はリベルナ・コナリザに向かって走り出す。
「へ?」
「ぐぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
次の瞬間、コナリザ王の魔力が爆ぜた。
リベルナが立っていたところを中心に、
ものすごい光がでる。
……終わった。間に合わなかった。
「お姉様!」
煙の中からリベルナ・コナリザの声が聞こえてくる。
生きているのか!
「大丈夫か!」
大したことはできないが、治癒魔法くらいなら使える。
頑張れば腕の一本や二本くらいならつなげるだろう。
だが、煙が晴れた先にいたのは、
無傷のリベルナ・コナリザと、
「イザ…ベラ?」
全身から力が抜けて倒れ込んだイザベラだった。
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