プロローグ 愛されたことのないお姫様
「おめでとうございます。お姉様、いいえ、イザベラ様」
妹のリベルナはそう言った。
だが祝福の言葉とは裏腹に、その透き通るようなブルーの双眸には、明らかな侮蔑が浮かんでいる。
「おめでとう、イザベラ」
「幸せにね」
リベルナに続いて、姉や妹たちが口々に祝いの言葉をかけてくる。
何も知らない人が見れば、他国に嫁ぐ花嫁を祝福している、
幸せな光景だろう。
だが、誰一人として心から祝っている人はいない。
その場にいる全員が、底冷えしたブルーの目を私に向けていた。
そもそも祝ってもらえるはずがない。
だって私は、実の父親に名前を呼ばれたこともないのだから。
私は呪われていると言われる紫の目に生まれてきた。
紫の目に生まれた者は、大抵が長くは生きられない。
でも私は何故か病気もせずにすくすくと育ち、
王位継承権まで持っている。
伝説とも言われる、あの黒竜の花嫁になれば、この眼差しが変わると思っていた。
でも、それは間違いだった。本当に私のことが邪魔なのだ。
父も姉妹たちも、呪いの忌子が王位継承権を、持っていることが気に入らないのだろう。
初めはちょっとしたものだったいじめが、最近はさらに酷くなっている。
もはやメイドより扱いが下だ。
そんな私に、何故か縁談が来た。
相手は人間ではないらしいが、それでも構わない。
この国から出て行きたかった。
やっとこの地獄から出られる。
これからは竜の花嫁、として生きていく。
紫の眼を持って生まれ、忌子として疎まれてきた
私ではなく、竜の花嫁イザベラとして新しい人生を歩んでいこう。
どんなに辛かったとしても、今の生活よりは幸せだろうから。
「お父様、お姉様方、妹たち、さようなら。
益々の国の発展をお祈りしております」
こうして、私は竜の花嫁になった。
「やっといなくなったわね。邪魔者が」
〜リベルナ視点〜
「おめでとうございます。お姉様、いいえ、ケイリーン様」
思ってもいない祝いの言葉を邪魔者に贈る。
いつも役立たずで、呪われた眼を持つお姉様だけど、最後は役に立ったわね。
わたくしの婚姻のために身代わりになってくださるなんて。
〜5日前
「これはどういうことですの!お父様」
わたしくはお父様を問い詰めている真っ最中でございます。
「わたくしがあんなおいぼれの竜の花嫁になれですって!
どうしてわたくしなのですか!」
「竜の一族から申し出があったんだ。
ここ、コナリザ王家から花嫁を1人差し出して欲しいとな」
「そんなもの断れば良いではないですかっ!」
「だがなぁ、この国は竜の加護のおかげで平和なのだ。
正直言って、竜との関係が悪くなったら終わりだ。
リベルナ、頼んだ」
だから、どうしてそれがわたくしなのですか!
「1番目から7番目までの娘たちはもうすでに結婚していたり、婚約済みだろう。残っているのがお主だけなのだ」
うぐぐ…。
何故末っ子はこんなに損をするのでしょう!
神はわたくしをお見捨てになったのですか!
それに、わたくしにはキベリア王国の第一王子のハンナ様という運命のお方がいるというのに!
どうしてほかのお姉様方は幸せに暮らしていますのに、わたくしだけ…。
ん?お姉様…?
「そうですわ!
もう1人いるじゃないの!
結婚もおろか、婚約もしていない邪魔者が!」
「ん?も、もしかして…」
お父様も今気がついたような表情でわたくしの方を見る。
「そうでございます!イザベラがおりますわ!」
「で、でも、あいつは呪われし子だぞ、そんなものを差し出すわけには」
「大丈夫ですわよ!結婚の申し込みが来ている竜は80歳なんですの。ヨボヨボのジジイには、目の色なんて関係ないはずですわ!」
弱気なお父様をなんとかして説得しようと、わたくしは
必死で言葉を並べます。
「そ、そうだな。わかった。イザベラを竜の花嫁として差し出そう」
最後にはなんとか納得してくださいました。
「さすがお父様ですわね!」
これでわたくしの王子様との恋を阻む者はいなくなりましたわ。それに、邪魔者も退治できましたし。
とってもいい気分ですわ。
「オーッホッホッホッホッ」
見ていてくださいね!お姉様方!!
わたくしも幸せになって見せますわ!!!!
読んでいただきありがとうございます。
恋愛物を書くのは初めてなのですが、皆さんをキュンとさせられるような作品を作れるように頑張ります!
この作品が少しでもいいと思っていただけたら幸いです。
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