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終末世界のエステルサーガ  作者: 桐生仁
1/3

1 永遠の夏休み

見切り発車で雰囲気SF書いたので上げときます。

お手柔らかにお願いします。

作品をみてくださってありがとうございます!

西暦2055年、7月、夏休み前日。

リニアモノレールは世界中に敷設され、水素発電が主流になり、各国の出資により月面基地ができた21世紀の半ばのなんてことない日だった。


ホームルームが終わり、待ちに待った鐘が鳴った。


「健!この後みんなでカラオケ行こうって言ってたんだけどお前も行かね?」

「あぁ、いや、俺はこの後家に帰ったら出ないとだからさ」

「えっ?あ、そっか」

「圭介、健は夏休み中は東京の親父さんのところで過ごすだろうが」

「そうだった…」


そう、明日から夏休み。高校1年の夏休みだ。

進路について悩むには早く、大いに遊んで過ごすのが最もふさわしい。

その夏休みを、俺は離れて東京で暮らす父親に呼ばれて向こうで過ごすことになっている。


「親父さん、何の研究してるんだっけ?」

「コールドスリープ。冷凍睡眠」

「すごいよなぁ。コールドスリープとかSFの世界だよな」

「○イチャーとかの科学誌に載ったんだろ?」

「そうなんだけど、眉唾ものだって言ってる新聞や専門家も多いらしい」


父親は科学者。夢の技術、コールドスリープを研究していて史上初、技術を確立させた天才的頭脳の持ち主だ。

世界的医療機器メーカーFIAの東京支部の開発部門に所属している。


俺は父親と上手く話せていない。

去年の秋、母さんが交通事故で亡くなった。横断歩道を渡っていたところを飲酒運転の車に…。


両親と俺の3人家族。

母さんは明るく優しい家族の中心で、父さんは寡黙で真面目な仕事人間。

母さんとはよく話したけど、父さんとは母さんありきで話してた感じだった。別に仲が悪かったわけじゃない。

ただ、何を話したらいいのかわからないだけ。


そして母さんが居なくなって、父さんとは会話らしい会話がなくなった。

おはよう、いってきます、ただいま、おやすみ、今日は遅くなる、今日は帰れない。

こんなもんだ。


だんだん父さんは家に帰らなくなり、仕事に打ち込むためと東京に単身赴任になった。

いまでは俺はマンションで一人暮らしだ。


「…俺だってこのままでいいとは思ってねぇよ。」

「なら、いい機会だ。向こうから打診してきたんだから親父さんもお前と考えてることは同じなんじゃないか?」

「…そうかな。」

「そうだよ。きっと。」

「そうだよ!」


唐突に父親から夏休みに一緒に東京で過ごすはなしがでて返事に困り、保留にして友だちに相談した。

家庭がちょっとうまくいってない俺を励ましてくれるいいやつらだ。

背中を押してもらって、今回の東京行きを決めた。


「じゃあ、そろそろ行くわ。休み明けに髪染めた圭介楽しみにしとく!」

「お土産よろしく!」

「東京バナナよろしくー」

「アキラは東京バナナ好きだよな」

「健、親父さんとよく話してこいよ。」

「わかってるよ!じゃあな拓海。」

「ああ、またな。」


髪染めは毛根にダメージがいって薄毛の原因になるという拓海の解説の声を背に聞きながら教室を出た。








東京へはリニアで向かった。

交通費は当然父親もち。

俺の荷物は着替えと学校の課題のみ。課題といっても記録媒体のみでPCは父親のを借りてすませることになっている。

東京駅に着いた。

東京も暑い。

制服をそのまま着てきたが、もっと涼しい格好に着替えてくれば良かった。

改札に向かって進むうち、家族に会うというのに緊張してきた。

駅には父親が迎えに来て一緒にマンションに向かう予定だ。

…直接会うのは3月が最後だから4ヶ月ぶりか。


「…久しぶりだな、健」

「あ、父さん…久しぶり」


しかし、父親と一対一で会うものと思っていたが予想外なことに父親は1人ではなかった。

パリッとしたスーツに身を包んだ男性が父親についていた。2人も。


「えっと、その人たちは…?」

「父さんの護衛のお二人だ。続きは車で話そう」


なんと父親にボディーガードがついていた。そして待たせていたという車には運転手。


「父さんの安全を考え会社がつけたんだ」

「そうなんだ…」


父さんと2人、後部座席に座った。

父さんか運転手の後ろ。俺は助手席の後ろ。

護衛の2人は後ろからもう一台でついてくる。


言葉が途切れて気まずい。

俺は予想外な父親の状況に言葉がうまく出てこない。

しかしそうだな。

夢まぼろしの様な研究を現実のものとすれば大きな金が動くのだろう。

その理論を確立させた天才科学者なのだから身の危険も考えられるか。

理屈はわかる。

だがそれを実の父親に当てはめて考えられてなかった。

距離感があっても親しい家族がそういう状況にある人物なのだと気持ちが現実に追いついてなかった。


「…このあと、父さんの住んでいる部屋に寄って荷物を置いたら外に夕食に出よう。ラグーンホテルのレストランの個室を予約してある。」

「は?」


ラグーンホテルのレストラン?

高級ホテルじゃないか。

それ普段着じゃダメなんじゃないか?

い、いや、学校の制服なら大丈夫なのか?

…むこうでは外食はファミレスや大衆向けの料理店ばかりでそんな高そうなところ行ったことなかったのに。


「あぁ、イタリアンだからあまり堅苦しくはないからな」


なんだか父との距離を遠く感じた。


その時だった。

スマホのバイブもアラームも車内で全員のものがけたたましく鳴り響き音声が発せられた。


「緊急事態速報です。緊急事態速報です。

地球に巨大隕石が接近しています。これより総理から会見があります。皆様どうぞお手を止めて会見にご注目下さい」


巨大隕石?

ハリウッド映画の話かよ。

地震や大雨ならともかくそんな緊急速報聞いたことない。

そういうのは何ヶ月、何年も前から予測しているんじゃないのか。


「どうなっているのかわからないが、緊急事態のようだ。ここはひとまず父さんの職場に行こう。あそこなら地下に避難シェルターがあるからどんな不測の事態にも対応できるはず…っ、たける!!」


甲高い音が聞こえたとほぼ間髪いれず、左側から衝撃を受けた。

そちらに目をやれば乗用車が突き刺さっていた。

そして、自分の太ももに視線を向ければ赤かった。血だ。

俺が覚えているのは、そこまでだった。


お読みいただきありがとうございます。

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