8
昨日の放課後の話を二人にして、今日の行動の事を話せば、二人は納得いってくれたみたいだ。
変な話し、何もしてないのにとばっちり喰らうのはイヤだもの。
「そのバカ女の特長は?」
星香が聞いてきた。
バカ女って……。
何て思いながらも。
「リボンは緑だったから三年生なのは確定なの。で、髪は校則ギリギリのクリーム色に緩く巻いていた。目鼻立ちがしっかりしてる美人顔。」
二人に特長を伝えれば、二人は顔を見合わせて。
「木崎のヤツ、変なのに好かれたな。」
星香が呟いた。
私は、疑問符を頭の中に浮かべて首を傾げた。
「珠稀ちゃん、もしかして知らないの?」
瑞歩が聞いてきたから、首を縦に頷いた。
二人が、私を可愛そうな子を見るような目をして、溜め息を吐き。
「その人、理事長の娘だよ。校内で起こすいざこざは、父親である理事長が尻拭いしてくれると豪語していて、遣りたい放題なの。イケメンは全て自分の彼氏だと思ってるヤバイ奴。髪だって、本当はアウトなんだけど、先生達も理事長の娘ってだけあって、下手に手出し出来ないのが現状。」
星香が簡単に説明してくれる。
「…で、昨日の木崎くんが堂々と宣言したのに、何故、珠稀ちゃんに戦勢布告する必要があるのかが、なぞ過ぎるでしょ。」
瑞歩が言う。
確かに、あの時”俺は、長戸珠稀の事が好きで構っています。断じて彼女が俺を好きでちょかいを掛けているわけではありません”って言ってくれた。
それをどう捉えたのか、皆目見当がつかない。
それに"別れろ"って言われてたけど、まだ私たち付き合っているわけではないのだから、別れようが無いのだけど。
何か、二人に話したことで、色々と見えてきた。
「ねぇ、珠稀。木崎にその話した方がいいと思う。」
星香が真顔で言ってきた。
「私も、星香ちゃんと同じだよ。だって、珠稀ちゃんが言われもないイジメ(?)に合うのは違うと思うの。それに木崎くん自身もそんなことになってるなんて知らなくて、後で知ったら後悔すると思う。知っていればそれなりの対応が出きるでしょ?」
瑞歩が珍しくまともな意見を言う、が。
「それって、迷惑じゃないのかな?」
私が小声で口にすると。
「迷惑じゃないって、むしろ火種を巻いた責任は取って貰いましょ。」
星香が口許に笑みを浮かべて言う。
その企んでいる笑み、不気味だからね。
「そうと決まれば、教室に戻るよ。」
星香に促されて、お弁当袋を手に慌てて屋上を後にした。