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午前の授業が終わり、昼休憩に突入。
彼に見つからないように、私たち三人(星香・瑞歩・私)は教室を抜け出し屋上(うちの学校、比較的自由に屋上に行けます)に来ていた。
眩しい日差しが降り注ぐ屋上で、日影の場所(他の生徒が来ないような場所)でお弁当を食べていた。昨日の事を二人に相談するために。
「あ~、珠稀ちゃんの卵焼き美味しそう~。」
瑞歩が私のお弁当箱を覗き込んで言ってきます。しかも、欲しそうな顔をして。
あ~、その顔の瑞歩可愛いな。
ちょっと焦らしてみよう。
「食べたい?」
私が聞けば、目を輝かせて。
「いいの?」
と目は卵焼きに釘付けになりながら聞いてくる。
いや、本と可愛いです。
「仕方ないな~。じゃあ、そのミートボールと交換なら良いよ。」
と交換条件を出すと。
「え~~。」
と声を出して、嫌そうな顔をしながら、でも玉子は食べたいのか、葛藤しだす。
そんな瑞歩に追い討ちを掛けるように。
「じゃあ、諦めて自分の分を食べてね。」
そう口にして二つある内の一つをフォークで刺して口に運ぶ。
口に入れると甘味が口の中に広がる。
ん、今日も上出来だ。
自画自賛しながら、瑞歩を見やると目に薄い膜が出来ていた。
「それにしても、珠稀はご飯食べる時は、何時も幸せそうな顔をして食べるよね。」
星香の指摘に。
「えっ、そうかな。美味しいものは美味しいでしょ。それが自分好みの味付けで、上手に出来た時は尚更美味しいって思うもん。」
世の中、食べれない人がいると思ったらね、自分は恵まれてるって思うでしょ。食べれる喜びって、大切だと思うの、私は。
「あ~、私の卵焼き……。」
瑞歩が悲壮感たっぷり込めて言うから、私と星香は顔を見合わせて吹き出した。
「えっ、何で二人とも笑うの?」
瑞歩は、頬を膨らませて私たちを交互に見てくる。
「だって、ねぇ…。」
「瑞歩のじゃないでしょ。」
星香が口にすれば。
「そうだけど、食べたかったのに……。」
今度は、シュンと肩を落として言う。
そんな姿が可愛くて。
「ほら、もう一つあるから交換ね。」
私はそう言って瑞歩のお弁当箱から、ミートボールをい取り上げて、その代わりに玉子焼きを渡した。
玉子焼きにパクついた瑞歩の顔がみるみるうちに笑みになった。
「美味しーい! 珠稀ちゃんの料理、本当に美味しい。」
美味しいを二度も口にする瑞歩。
お口に合ったのならよかったです。
この三人で食べると、大体瑞歩が私のおかずの中から一品だけ食べる。
毎日作っている私としては、同じおかずにならないように気にして作る。
星香は、サンドウィッチか惣菜パンが多いかな。
「ありがとう。そんなに誉めても、何も出ないよ。」
「そんなの望んでいないから。料理のコツを教えて欲しい。」
瑞歩が、深刻な顔をして聞いてくる。
「コツは、あって無いようなもの。経験を積んで失敗を恐れないことかな。」
私も沢山の失敗してたからね。
「……そうだね。何もやらなきゃ、上達しないものね。」
瑞歩が真顔で言う。
「最後に責任もって自分で食べる。食材だって、タダじゃないんだから、失敗したモノを食べて次作る時の参考にすればいいんだよ。」
失敗しても、次に活かすチャンスだと思うんだよね。
「結局は、努力しないとダメってことか……。」
深い溜め息を吐く瑞歩に便乗するように星香も同じように吐いた。
楽しく雑談しながらお弁当を終えると。
「で、何があったの珠稀?」
星香が聞いてきた。
私は二人の顔を見てから。
「実は……。」
と昨日の放課後の事を話し出した。