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靴を履き代えて、歩き出す。
あっ、家に連絡入れないと……。
私は隅に寄って立ち止まり、鞄の中をガサゴソと探り携帯を取り出す。
画面を開くと、ママからメールが入ってる。
"帰りに卵を買って来てね。
今日はオムライスだよ~"
と入っていた。
私は。
"今から帰ります。
卵2パック要る?"
と打ち返していたら。
「珠稀。こんな時間まで残っていたのか?」
と後ろから声がして、振り返ると息を切らした彼が立っていた。
態々走って来たのかな?
何て思っていると。
「石村は?」
彼が問い掛けて来たので。
「下駄箱まで一緒だったんだけど、彼氏さんが迎えに来てたから其所で別れた。」
無難に答えたら。
「はぁ~~。石村も当てにならん。」
って、呆れ果てた顔をする。
ダメだ、ちゃんと説明しないと。
「あのね、一様送ってくれるって言ってくれたんだよ。だけど、私が断ったの。寄る所があるからって。」
彼の目を見ながら言葉にする。
事実は、二人の邪魔したくなかったそれは言わなくても良いかな。
「……そうか。」
何となくだけど、察してくれたのがわかった。
自分の気持ちを言わなくても気付いてくれるって、ちょっと嬉しいかも。
何て思ってると。
「俺が送って行くよ。」
と言い出した。
へっ。
嬉しいけど…。
「い、いや。で、でも、木崎さん、私とは反対方向では?」
私が戸惑いながらそう口にすると。
「可愛い彼女を一人で帰らせるなんて、俺には出来ない。」
彼の口から、か、可愛いって……。
その言葉に異常反応して一気に顔に血が上る。
あっ、ヤバイィィィ。
赤くなっているであろう顔を見せないように俯く。
「と言う事で、行こうか。」
彼の中では決定事項なのか、私の手を捕ると歩き出す。
オロオロしてる間に彼に引っ張られ、体が前のめりになり足が出ずにその場で倒れそうになる。
「おっと、危ない。」
彼が咄嗟に抱き止めてくれたから、地面との接触は無かったものの、距離が近くなり過ぎて、心臓がバクバクしてる。
あ~、もう~。
儘ならない感情にどうして良いかわからずもて余していた。
「珠稀、大丈夫か?」
心配気に此方を見てくる彼に。
コクりと頷いて、体制を整える。
「助けてくれてありがとう。」
苦笑気味にお礼を言う。
本当にどうしたら良いかわからないのよ。
自分の事なのに……。
「ごめんな、俺が急に歩き出したからだよな。」
申し訳なさそうに言う彼が、愛しく思えてならない。
普段との差にやられてると言うか……。
他の人には見せたくないような顔をしてるから、早く何時もの顔にって思うんだけど、何て声掛ければ良いか浮かばなくて、焦って。
「ううん。私こそ、ボーッとしてたから木崎さんは謝らないで。」
って言葉しか出てこなかった。




