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授業が終わり、彼が声をかけてくる前に。
「瑞歩、一緒に教室に行こう。」
と隅の方で小さくなっている瑞歩に声をかける。
周りが此方を注視しているが、私にはどうでも良かった。って言うか、友達なんだから普通だと思うんだ。
彼女は驚いた顔をして此方を見てくる。
そして。
「珠稀……ちゃん。…なんで……。」
小さい声だったが、戸惑いながらそう言葉にする瑞歩に対して。
「友達でしょ? そう思ってるのは、私だけ?」
投げ掛けるように口にした。
「偽善者なの? それとも憐れんで言ってるの?」
声を荒げて言う瑞歩の反応に周りが騒ぎ出す。
「瑞歩、何言ってるの? 珠稀の本心を疑うなんて……。」
横から星香が加勢してきた。
「そんなこと言ってもさぁ、何かしらの裏があるに決まってるじゃん! じゃなきゃ、気まずい中で声掛けるわけ無いでしょ!!」
成り振り構わず叫ぶ瑞歩に対して、星香が手を上げた。
私はその手を掴んで止める。
星香が驚いた顔をして此方を見てきたから、私は首を横に振る。
そんな事しても解決できないことわかるから。
気持ちなんて、早々切り替われるものでもないし…。
「瑞歩は、今までそう思って私と過ごしていたんだね。悲しいよ。確かに他人からしたらそう見えるかもしれない。だけど、私は今まで一緒に過ごした時間は掛け代えの無いものだと思ってるし、瑞歩の事も大切な友…親友だと思っているから、ずっと本心で接していたのだけど、理解して貰え無かったんだね。」
私は今まで過ごした時を思い出しながら口にする。
入学してから、大抵三人で行動していて、喧嘩だってしたし恋ばなや憧れの彼の話しもお互い話していた。
そこまで話したりしてるのに疑われるのは、やっぱり悲しい事だと思う。
だからって、私から離れる事は出来ないんだよね。
瑞歩に目を向けると、顔を俯かせて表情はわからなかった。だけど、小刻みに手が震えてるのが見てとれた。
「珠稀……。行こう。次の授業が始まっちまう。」
彼が私の傍に来て、手を握ってきた。
「瑞歩も一緒に……。」
と私が口にしたら彼は眉間に皺を寄せ、嫌悪感丸出しで、瑞歩を見る。
「そんな顔したらダメだよ。」
彼の眉間に手を伸ばして人差し指でチョンチョンと突っついてみた。
すると彼は驚いた顔をしながら私を見てから笑みを浮かべる。
「ごめん。でも、もう俺らだけだし、行こう。」
彼の言葉に頷いた。
「瑞歩も……。」
もう一度声をかけようとしたけど、その前に出て行ってしまった。
「嫌われちゃったかな?」
私は肩を落とした。
その声が少し悲し気だったのか。
「大丈夫だろ。それにもし嫌われても珠稀には俺や石村が居るだろ。」
って、励ましてくれる彼。
星香も頷いてくれる。
「それに、直ぐに仲直りできるさ。」
とまで言ってくれる。
本当にそうかな?
そうならいいけど……。
「ほら、教室に戻ろ。」
彼に手を引かれながら、私たちは教室に足を向けた。




