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翌日の登校は、三十分早めにした。昨日の事もあって、待ち伏せされる前に教室に入ってしまえば良いかと思った(先輩の事もあるし……)。
……で、その結果、何事もなく普通に校門を潜り、今教室に居る。
教室には、まだ誰も居なくて自分の席に着き昨日の続きを始めた。
黙々と作業に打ち込んでいると。
「おはよう、珠稀。今日は早いんだね。」
顔を上げれば、星香がそこに立って居た。
「おはよう、星香。昨日みたいなのは懲り懲りだったから、早めに来たの。それに、文化祭の準備も進めていかないとね。」
嘘は言ってないし、私の心情としては、一日穏便に過ごしたいので、彼を避ける事が出きるならそれが一番だと思った。
「そっか……。」
星香は、私の前の席に座る。
何処か納得いかないにしても、それ以上の追求をして来ない星香をありがたく思いつつも、聞いて欲しいって思ったりする。
「私にも手伝わせて。」
星香が、指を指したのはパネルだった。
その申し出に私は喜んで手伝った貰った。
うちのクラスは、何故かパネル展示とプラネタリウムの上映会となりまして、そのパネルも星に関するもので、説明文の準備が必要だった。地味な作業は誰も遣りたがる人が居ない為に早くから一人で奮闘していた。
だから、星香の申し出は、本当にありがたくて笑みが出た。
「お願いします。」
私は、画用紙とそのパネルの説明部分が記載されている本を渡し、指で書いて欲しい場所を指した。
「オッケー、任せて。」
そう言うと、シャープペンを手に下書きをしだした。
私もまた黙々と下書きを書き出した。
「おはよう。二人とも何遣ってるの?」
声が掛かり、顔を上げれば瑞歩が不思議そうな顔をして聞いてきた。
「おはよう、瑞歩。これ、文化祭の準備だよ。」
そう言って、続きを始める。
「あれ、木崎くん、珠稀ちゃんが教室に居ること知らないんだ。」
瑞歩がポツリ呟いた。
その言葉に、今日も待ち伏せしてたんだと思った。
「ん? あぁ、今日は、私よりも珠稀の方が来るの早かったからね。」
星香は、疑問を持ちながらも、瑞歩の言葉に返した。
「そうなんだ。珠稀ちゃん、それ私も手伝うよ。」
瑞歩が私の左側の席に座りながら言ってくる。
「ありがとう、瑞歩。お願いします。」
私は星香にした説明を瑞歩にもして、画用紙と本を渡す。
「……で、何で今日は早かったの?」
星香が改めて質問してきた。
さっきの説明ではやはり納得しなかったのだろう。それに、瑞歩も居なかったから敢えて聞いてきたんだろうと思われる。
が……。
「……。」
ちょっと、これは言いづらい。
二人だけにならとも書く、他のクラスメートに聞かれて、彼の耳に入ったらって思うと口をつぐむしかない。
「何か、変なのにでも絡まれでもした?」
私が中々口にしないのを見越して、星香が核心を突いてくる。
二人の視線が私に向いてるのに気付き、ゆっくりと頷いた。
星香はやはりっという顔をし、瑞歩は驚いた顔をして居た。
「そっか……。じゃあ、ここでは言えないことなんだね。後で話して。」
星香の言葉に頷くことで了承した。