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翌日。
目の前は何時もの光景の筈だったのだが、何時のと違う事が起きた。
それは、彼が突然校門から離れて私の方に駆けて来たのだ。それも、まるで飼い主を見つけた犬みたいに……。
その行動に誰もが驚き、目を点にしている。各言う私もなのだが。
「珠稀、おはよう!」
彼は元気に声を掛けてくる。
「お、おは、よう……。」
つっかえながら返す。
「あ~っ、珠稀が可愛すぎる~。」
唐突に口にされた言葉にドキッとしながら彼を見上げる。
甘い笑みを浮かべて、私を見ている。
えっ、急にどうしたんだろう?
何か変なモノでも食べた?
私は首を傾げながら、彼の言動に狼狽える。
「教室に行こう。」
って何時もの様に私の手を掴んできた。
「あっ、うん。」
彼の言葉に頷いて歩き出した。
一体、何があったの?
怪しげに思いながら、彼の横顔を見る。
何処と無しに嬉しそうな顔に益々疑問が募る。
「そんなに見られてら、穴が開いちゃう。」
とまで言い出す。
本当にどうしたの?
と考えてると。
「昨日言い忘れてたけど、私服も可愛いね。」
唐突に言い出すから、思わず固まり赤面してしまう。
その言葉は、昨日欲しかったかなぁ。
何て思いながら。
「あ~あ。そんな可愛い顔しちゃ、ダメだよ。」
クスクス笑いながら言う彼を睨み付ける。
何がしたいの?
「そんなに睨むなよ。可愛い顔が台無しだぞ。」
そう言いながら、私の頬に手を沿わせ様とする。
思わず仰け反るも間に合わず指先が頬を掠めていく。
「かわ…可愛いって……。」
彼が口にする可愛いの連呼にオロオロするしかない私。
本当にどうしたら良いの?
教室に着くまでずっと、”可愛い”を連呼されて赤面するしかなかった。




