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教室に向かう途中で彼が。

「それにしても以外だったな。石崎の彼氏が、あんな強面の人だとはなぁ……。」

ポツリ口にした。

それに同意するように瑞歩が頷き。

「星香ちゃんなら、もっとイケメンの彼氏を捕まえられると思うんだけど……。」

と言い出す始末。

星香がこれを聞いてたら、むきになって怒るだろうなぁ。

理央さんに一途に恋い焦がれて、やっと報われたのだから……。

「それ、星香の前で口にしたらダメだよ。」

訳をある程度知ってる私としては、そう口にして釘を刺すしかない。

「え、何? 珠稀ちゃんは何か知ってるの?」

瑞歩が興味津々で私に聞いてきた。

彼も横目で私を見ながら、教えろと訴えてきてるが。

「私が勝手に話す訳にはいかないよ。星香が話すのを待ったら。」

ある程度の事は聞いてるけど、詳しい訳じゃないから、又聞きするよりは星香から直接聞いた方が変な先入観を持たなくて良いと思う。

「チェッ、折角星香ちゃんを揶揄できると思ったのに……。」

瑞歩の口からとんでもない言葉が聞こえてきてそちらを見て凝視する。彼も同じだったのか瑞歩を見ている。

瑞歩は、そんな私たちに気付かないのか、心底つまらないって顔をして歩いてるから、本心なんだと思う。

近いうちに二人に馴れ初めを星香から聞く予定はあったんだけど、瑞歩を誘うのはちょっと無理かな何て思ってしまう。

まぁ、誘うのは星香なんだろうけど……。

「でも、俺はあの二人が羨ましいと思った。あんなに仲睦まじいところを見せられたら、俺たちもああなりたいって本気で思ってしまった。なぁ、珠稀。」

本気に羨ましそうな声を出して、私に訴えてくる彼。

その問いに。

「確かに星香たちの仲睦まじさを見れば、羨ましいとは思いますが、まだ、木崎さんとはなりません!」

と断言するように告げた私。

その言葉に落胆する彼を横目で見てたら。

「"まだ"?」

瑞歩が口にした。

私の言葉に違和感が沸いたらしく、そう口にしたのだろう。それに対して彼が。

「"まだ"とは、どういう意味の"まだ"なんだ?」

と追求してきた。

「まだはまだです。」

私は言い逃げするかのように走り出した。

「待って、珠稀。」

背後で瑞歩の声が追ってきていたが、そのまま走って教室へ向かったが、目的地が一緒な為、無駄な悪足掻きにしかならなかった。


先に教室に着いた私は、ロッカーの上に手にしていた荷物を置き自分の鞄を掴むと慌てて教室を出ようとしたが、一歩及ばず私の視界を遮る様に制服が目に入ってきて。

「珠稀。朝の約束を破るのか?」

と非難めいた声で彼が言葉を紡ぐ。

うっ……。

それを言われたら、逃げれない。

結局三人で教室を出る事になった。

逃げられない様になのか、彼に手を捕られてる。

その彼は、ニコニコと嬉しそうな笑みを浮かべていて、それを見ていた瑞歩が。

「木崎くん。その顔、やめてくれない。」

イヤそうな顔を浮かべながら言う。

「仕方ないだろ。嬉しいんだから。」

と顔にまで現れている。

その顔を凝視できずに、視線を背けて逃げる。

「珠稀ちゃんが絡んでなければ、良い男なのに……。それにしても珠稀ちゃん、変なのに好かれたね。」

小声で言う瑞歩。

内心瑞歩の言葉に頷きながら、元々彼の声に惹かれていたのは、私自身だしなぁ。

本心をここで言うつもりもなく、私は彼を見上げて。

「木崎さん。一緒に帰るのは、駅までですからね。」

私は笑みを浮かべてそう口にする。

「え~。家まで送るよ。」

不服そうな声で言う彼に。

「彼氏彼女でも無いのに家まで送ってもらうのは、申し訳ないですし、反対方向じゃないですか。無理させられませんよ。」

申し訳なくてそう口にする。

「そんな事気にしなくても良いのに……。」

先程まで笑み浮かべていたのに口を尖らせて言う。

私の言葉で一喜一憂する彼が、本当に私の事を好いているんだと自覚させられた。

「木崎くん。引き際が肝心だよ~。しつこいと珠稀ちゃんに嫌われるよ~。」

鶴の一声じゃないけど、横に居る瑞歩が言う。

「珠稀に嫌われるのは嫌だな。仕方が無い、今回は諦めるよ。だから、駅まではこのまま手を繋いで歩きたい。」

瑞歩の言葉で妥協した彼だが、手だけ放してもらえなかった。

それで解放してくれるのならと私も頷くしかなかった。








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