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二話目です



今思えば、何処をどうとったら私を好きになったのかがよく分からない。


彼を初めて知ったのは入学式の時。

新入生代表の挨拶を読み上げる声に惚れ込んで、姿を見れば美男子だった。

しかも、同じクラスとなれば "近付き放題じゃん" って思ったのは一時で、自分が地味子だと思い直し、如何に彼と関わらないようにするかと模索中に彼からの指名で同じクラス委員をすることになってしまった。

選ばれた理由が気になり(他の方も同じだったみたい)彼に直接問い質し所、"真面目に遣ってくれそうだから" と返答が返ってきた。

それを聞いた周りも賛同して頷いていた。

何だ、興味を持って私を選んでくれたわけではなかったんだとその時の私は落ち込んだけど、かえって良かったのかなって思った。感情があって選ばれていたら、女子たちが黙っていないかったと思うし、今まで何もなく穏便に過ごすことができてたんだから。

私は、必要な接触以外は関わらないように気を付けていたわけ何だけど……。

彼の事をどう思ってるかと聞かれれば、 "好き" と即答するぐらい、あの声で話されたら舞い上がっちゃうしね。

あんなハイスペックの彼に地味子の私が隣に居て良い分けないよね。

だから、逃げていたんだけど……。


放課後の教室でそんなことを考えていたら。


「帰らないのか?」

と声が掛かり、周りをキョロキョロと見渡せば、教室内は私と彼しか居なかった。

「もし良ければ、一緒に……。」

「あっ、ごめんなさい。用事があってこれで失礼します。」

私は彼の言葉を遮り、鞄を持って席を立つと一目散に教室を出た。

背後で彼の笑い声がしていた。



翌日。

何時もの時間に登校したのだが、校門に人だかりが出来ていた。

私は、それを遠巻きで見ながら校門を潜ったら、その人垣が左右に割れ。

珠稀たまき、おはよう。一緒に教室行こう。」

と爽やかな笑顔で登場した彼。

えっ、今珠稀って言った。

腕に鳥肌立ってる。

うわ~嬉しいけど恥ずかしい。

って、注目度が半端ないよ~。

周りの視線が痛くて逃げたい。

でも、挨拶は返さないと。

「お、お早うございます、木崎さん。」

そう言うので精一杯だった。

膠着してる私の横に彼は並ぶと私の背に手を遣り、歩くように促してきた。

まるでエスコートするかの様にスマートな仕草に戸惑いを隠せない。

私は、俯きながらそれに従うしかなかった。

時折聞こえてくるヒソヒソ声がやけに耳に残り、不安になる。

そして居たたまれなくなり、知らずと逃げるように足早になっていく。

「珠稀、そんなに急いでどうした?」

私の顔を覗き込むようにして耳許で囁いてきた。

そんな彼を睨み付け。

「これ、態とですか? 何で私に構うんですか? ほっといてください。」

周りの事も構わず、彼に言い放つ。

新たな噂が広がろうがどうでも良い。

今、この状態が回避できるのならそれで良い。

彼は、私を揶揄ってるんだと思ったら怒れてきちゃったのだ。

「気に障ったのならゴメン。でも、俺、昨日言ったよね。珠稀の事を構い倒すって。もしかして、それも冗談だと思ってたの?」

彼は真顔で言ってきた。

確かに昨日そんなこと言われた覚えはある。

だけど、こんなあからさまにされるなんて思わなかった。

「注目されるのが嫌なら、俺が宣言しようか。」

突然の申し出に何を言い出すのだろうと顔を上げれば、ニコリと笑みを浮かべたかと思ったら。

「今ここに居る人だけで良いので聞いてください。俺、木崎快翔は長戸珠稀の事が好きで構っています。断じて彼女が俺を好きでちょっかいを掛けてるわけではありませんのでそこの所誤解がないようにお願いします。出来れば皆様には温かい目で見守っていただければと思います。」

って、堂々と胸を張って宣言してしまったのだ。

周りに居た女子からは黄色声が、男子から囃し立てる口笛や、"やる~"と言った冷やかしの声が上がる。

私は一層恥ずかしくなってどうしたら良いのか分からず戸惑ってしまう。


何もここまでもしなくても良いじゃない。


逃げ出そうとしたのだけど。

「珠稀、逃げないで。」

直ぐに彼に見破られ捕まってしまった。

真っ赤になってるだろう顔を上げれずに、そこに佇んでると。

「顔を真っ赤にする珠稀も可愛い。」

耳許で言われ、私はその耳を塞ぐ。



本当にこれからどうしよう……。









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