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「あ~、珠稀は気にしなくて良いよ。」
と訳が分かっていない私に星香が声をかけてきた。
えっ?
周囲を見渡せば、唖然とした顔でこっちらを見ている面々に居たたまれなくなって、机に突っ伏しった。
何で注目されてるの?
私、何かしたのかな?
何処から、ずれちゃったのかな?
ただ、静かに学校生活を送りたかっただけなのに(その中で彼氏出来たらという夢も入ってるけど……)。
「珠稀?」
机の下から声がかかる。
そちらに目をやれば、彼が心配そうに見てた。
「大丈夫。心配要らないから、少しだけほっといてくれるかな。」
私は小さな声でそう口にしたのだが。
「ほっとけない。そんな顔をした珠稀をほっとけるわけ無いだろう。」
彼が退くことはなかった。
そんな顔って、どんな顔なんだろう?
何て思ってたら。
「不安そうな……、今にも泣き出しそうな顔をしてる。そんな珠稀をほっとけるわけ無いだろう。」
彼が答えを聞かせてくれた。
あぁ、私不安に思ってたんだ。
何時も自信がある彼の傍に居るとこんなので良いのかなって不安だった。
今でも思う。
こんな私がクラス委員なんかをやってても良いんだろうか?
他に適任者が居る筈だと思ってしまう。
私には、リーダーという率先して動くよりも裏で支える方があってると思う。
「珠稀。次の授業は休もう。そんなんじゃ、まともに受けれないだろう。石崎、この事教科担任に伝えておいて。」
彼は星香にそう告げると私の手を引き立たせると、誘導するように歩き出した。
着いた場所は、私が普段一人になりたい時に来ていた校舎裏。
彼は、私の定位置に座り私を自分の前に座らせるとお腹に腕を廻してきた。右肩に若干の重みがあるが……。
「何を不安に思ってるんだ? 全て吐き出してしまえよ。」
彼は、確信を持って言ってくる。
何で分かったのかなぁ……。
顔に出てたのかな?
ここに来る途中で授業の開始のチャイムが鳴っていたから、校内からの雑音はない。有るとしても音楽室からのピアノの音が途切れ途切れに聞こえてくるだけ。
それに、生徒が通らない場所を通って来たから、りりかにも気付かれていないと思うけど……。
授業をサボるのは初めての経験で、ドキドキしてる。
だけど、一番厄介なのは、彼が私の内情を察していること。
私は、ポツリとさっき思った事を口にした。
すると、彼は私の頭を撫でながら。
「珠稀は考え過ぎ。むしろ、もっと周りを頼れよ。皆、何時珠稀が指示出してくれるのか待ってるんだからな。」
と口にしたのだ。
えっ?
待ってる?
「珠稀はさ、善かれと思って率先して文化祭の準備を始めてるけどさぁ、俺から見たら珠稀一人の文化祭なのかと思ってしまうぞ。珠稀と仲が良い二人は声をかけやすいだろうけど、それ以外は何をどう声をかければ良いのか解らず、珠稀からの指示は何時出るのかって、ずっと待ってるんだよ。」
彼の言葉に私は戸惑いを隠せなくなる。
地味な仕事は、皆嫌がるだろうから、早めに取りかかれば自分一人でも間に合うだろうし、誰も手伝うなんて言ってこないだろうと腹をくくってたから、勝手に先に進めてしまっていた。
「まぁ。説明文を書く人数が足りているなら足りているでその事を伝えて、他にやる事の指示とかを出してやった方がいい。例えば、プラネタリウムに使う暗幕の確保とかさ。簡単だけど必要最低限の指示を出してやる。珠稀が言いづらいのなら、俺に言ってくれればいいだけだろ。同じ委員なんだし……。それに、さっきは頼られて俺も嬉しかった。」
彼は、淡々と告げてるように見えて、最後に爆弾を落とした。視線をずらしてみれば、口許を緩めていて嬉しそうな顔をしている。
えっ、あれ、本当に嬉しかったんだ。
「……という事で、ここで打合せするかな。」
彼の言葉に我に返った。




