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「痛てーよ、山崎。」
彼は顔を歪ませ声を上げる。
まぁ、分厚い資料で背中を叩かれれば痛いよね。
「当たり前ですよ。木崎くんのその態度に珠稀ちゃんが困惑しているのがわからないかなぁ」
口許は笑っているのに目は吊り上がっている瑞歩が怖い。
「それがまた可愛いじゃんか。」
彼が言い返す。
「確かに可愛いけど、木崎くんのはやり過ぎ。それにあなたがやった事は委員として当然の事なんだから、誉められる要素は無いと思う。」
まともな言葉を返す瑞歩に感服する。
「それでも、珠稀からご褒美を貰いたいと思ってはダメなのか?」
彼は主張を曲げない。
そこに。
「快翔。お前何やってるんだ?」
クラス一のお調子者の大沢さんが、彼の肩を叩く。
まぁ、他のクラスメートからしたら、二人が漫才な如くを繰り広げているのを見ている感じだろう(私もそんな感じで見ていたから)。
「田所が可愛いとお前が言ってるように聞こえてきたんだが?」
この言葉でわかると思いますが、彼、大沢さんは、私を一番毛嫌いしてると言っても過言ではない人です。現に私を睨み付けていますしね。
「お前が田所の何処が気に入ってるか知らないが、俺から見ればただ平凡で真面目な娘にしか見えない。面白味もないしな。」
彼にとってはやんわりと濁した言葉にしたのだろうけど、それでも私のハートはダメージが大きいのです。
自分で普段から思ってる事を人様に言われると更にグサッと刺さるのですよ。
「それなら安心だな。珠稀の事を狙ってる男が居ないって事だからな。ゆっくりと落としに行ける。」
木崎さんが、ホッとしたような顔をして私を見てくる。
今の私の顔は赤くなっているだろう。
自分でも顔が熱く感じられるから。
あ~もう、何で、木崎さんはそんなに堂々と宣言できるの。
恥ずかしくて顔が上げられなくなるじゃんか。
「珠稀、顔真っ赤。大丈夫?」
星香が心配そうに声をかけてきた。
「うっ、ダメかも……。」
私がボソリと呟いた言葉に直ぐに反応を示したのが木崎さんで。
「珠稀、どうした? 顔が真っ赤だぞ。熱でも出たのか?」
心配気な声がしたと思ったら、手が額に延びてきて、そのまま触れられ。
「熱は無いようだけど、大丈夫か?」
本当に然り気無く触って確認してくるから、避けようがない。
「木崎。それ態とやってる?珠稀あんたの言葉に打ちのめされてるんだよ。」
星香が私の代わりのに答えてくれる。
「そうだよ。珠稀ちゃんが初だから、さっきの木崎くんの言葉で、熱持ったんでしょうが。」
瑞歩までが私の事を理解してくれていて、嬉しかった。
だけど、その言葉を聞いて困惑している者が一名、呆気に取られてるのが一名目の前に居る。
「それは嬉しい誤算だな。だけど、これからは控えるかな。他の奴等にそんな顔見られてく無いし……。」
木崎さんが言い。
「う、嘘だろ……。」
と大沢さんが呟くのが聞こえてきた。
何が嘘なのだろうか?
私が小首を傾げてると。
「マジか……。」
って言葉が続いて聞こえてきた。
私、何かしただろうか?
したことと言えば、顔を赤面しただけで他には何もしてないよね。
「あっ、また珠稀ちゃんが男を落とした。」
って横に居る瑞歩ちゃんが呟いた言葉に首を傾げる。
その言葉は、何処か不穏な要素が入っていそうで、怖くなった。




