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瑞歩の頷きに星香が。
「珠稀は、会った事あるよね?」
と私に聞いてきたから。
「うん。夏休みに偶然に会ったからね。」
そう答えると。
「あっ、そうだった。てっきり、瑞歩も理央に会ってるものだと思ってた。」
星香が瑞歩の頷きに納得がいったようだ。
星香の彼と会ったのは、本当に偶然だった。
偶々、母と妹が観たい映画があるから一緒に行こうと誘われて、映画館に行ったらバッタリとデート中の星香と会ってその時に彼を紹介して貰ったのだ。
「え~っ、珠稀ちゃんだけ狡い!」
瑞歩が口を尖らせて言う。
イヤ、狡いと言われても……。
「あれは、本当に偶然だったから、狡いと言うわけでもないよ。」
私の代わりに星香が答える。
「それでも、珠稀ちゃんは、一度会ってるんだよね。ねぇ、どんな彼だった?」
余程星香の彼氏が気になるのか、瑞歩が聞いてきた。
「えっと……。星香を溺愛しているって一目で分かるような人で、星香が遣ること温かく見守ってる。でも、度が過ぎると止めてくれる人かな。」
会った時にそう思った。
包み込む愛っていうの?
そんな感じだった。
星香を見る眼差しが、とても優しかったのを覚えている。
「そうじゃなくて、見た目の事を聞いてるんだけど?」
頬を膨らませて聞き直す瑞歩に。
「見た目はねぇ。う~ん……。切れ長の目が鋭くて、ちょっと怖い人。」
会った時の事を思い出しながら口にする。
話せばそうじゃなく気遣いが出来る人で、見た目で損をしてる人と言えるかな。
「え~、珠稀。それは無いわよ。彼、とても繊細なんだから……。」
星香が惚気だした。
「それは、付き合ってる星香目線であって、私が言ってるのは一般目線だよ。」
と口にしたら。
「そういうもの? まぁ、確かに理央はちょっと強面の面だけど、根は優しい人だよ。だからそこまで萎縮しなくてもいいよ。」
星香が瑞歩に言う。
私の言葉に瑞歩が少し怯えているのが表情に出ている。
「瑞歩。そこまで怖がらなくてもいいよ。だって、理央さん本当に優しい人だから。」
とフォローを入れるが、強張っている表情は戻らず、引きずった笑みを浮かべ。
「う、うん。」
と返事が返ってくるだけだった。
大丈夫かな。
まぁ、会えば分かることだし、それまではこのままだろうなぁ……。
「珠稀、他に要る物があるか? って彼が聞いてるんだけど。」
星香が、携帯を見ながら言ってくる。
え~っと、そうだなぁ。
パネルの展示ってどうするんだっけ?
「ちょっと待ってて。」
私はそう告げて席を立ち、彼の席に向かった。




