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「…で、次はどれを写せばいいの?」
瑞歩が聞いてきた。
「えっ、あっ……。瑞歩が持っている資料貸して。」
私がそう言うと鞄から資料を取り出して渡してくれる瑞歩。
元々展示で使うパネルの写真は、担任が決めていたので、それになぞって説明文を写すだけだったから、ページに付箋を貼っておいたのだ。
「瑞歩がやってくれたのは、このページだよね。」
私は確認するようにページを開いて聞く。
「そうだよ。」
と返事が返ってくる。
私は、そのページの付箋に赤ペンでチェック(レ点)を入れて、次の付箋の在る場所のページを開いて。
「ここのページのこの星の説明文をお願いできる?」
瑞歩に指で指し示すと。
「ここね。分かった。用紙貰えるかな。」
文面を見ながら必要と思う枚数を渡す。
後残り一枚。
これは、今日の帰りにでも100均に寄って買い足さないと……。
何て考えてると。
「あっ、そうだ。今日の部活無くなったから、一緒に帰らないか珠稀。」
突然の彼からのお誘い。
「えっと……。今日は寄り道して帰るから……。」
画用紙以外にも母から買い物を頼まれているのだ。
しかも重くてかさ張るものを……。
「別に構わないよ。その分、珠稀と居られるし。」
戸惑いも無くそう口にする彼。
何処と無しか嬉しそうに言ってる気がする。
私は、苦笑して。
「ん、それじゃあ、帰りは宜しくね。」
と答えるとキョトンとした顔をして私を見てきたと思ったら、急に顔を赤らめて視線を急がし無く左右に振り。
「…その顔反則でしょ……。」
と小声で言ってるのが聞こえてきた。
否、何が反則なのか分からずに首を傾げて更に彼を食い入るように見れば、耳まで赤くしていた。
「珠稀の微笑は、本当に可愛いわよね。女の私でさえ惚れるもの。」
と星香が言い出した。
ん?
えっ、そんな顔した?
「そして、本人無自覚だからね。」
瑞歩が口にする。
えっと、それは、どう対応すればいいのだろうか?
「まぁ、木崎としては、断られると思ってたから、ラッキーだと思ったんだろうけど、それに充てられたんだろう。」
星香の言葉に彼が無言で場を返している。
「…以外だったから……。俺が思ってたのは、誘っても直ぐに断られると思ってたんだが、な。まさか、あんな答えが返ってくるとは思ってなかったし……。」
って、若干困った顔をして言う彼に。
「じゃあ、無しってことで。」
と口にしたら。
「一緒に帰らせてください!」
速答で言われた。
それに対して、星香と瑞歩が笑いだした。
彼が必至過ぎて、笑いを押さえきれなかったらしい。
「木崎くん、必至過ぎ。珠稀ちゃんは逃げも隠れもしないよ。」
瑞歩が目に涙を浮かべながら言う。
隠れたいけど……。
だって、滅茶注目されてるから、逃げ出したいですけど……。
「イヤ、だって。折角のチャンス、逃がしたくないだろう。」
口ごもりながら紡ぐ言葉に驚く。
「少しでも一緒に居たいって思ったらダメなのかよ……。」
イケメンの彼が弱気な発言に正直驚いた。
だが、周りの男子は彼の言葉に同意するように頷いている。
これは、皆同じ想いだと言うことか?
「好きな娘と一緒に居たいと思うことは、ダメなのか?」
って、私に聞かれてもどう答えたらいいのかわからないのだが……。
「それは女子とて同じだよ。」
今まで黙っていた星香が口にした。
彼氏持ちの星香の言葉が、やけに胸に響いたのだった。




