10
二話目です。
前話からお読みください。
話を聞き終えた彼は。
「あ~、あの人ね。」
と口にして何か思い出したのか、嫌そうな顔をして。
「入学早々近付いてきて、振ったんだけどねぇ。未だに一方的に寄ってくるから気持ち悪くて、先輩に聞き回って情報を集めてた。珠稀に手を出すなら話しは別だ。一度痛い目に遭わせないと懲りずに何度でも騒ぎを起こすからな。その件は、俺が預かる。だから、珠稀は何時も通りにしてて。じゃないと、俺も何するか分からない、よ。」
話し出した彼。
そうとう嫌な思いをしたんだなぁ、と他人事のように思った。けど、最後の言葉に悪寒が走る(だって、目が据わってるんだもの。)。
これ、素直に頷いておかないと何されるか分からない。何か自分に善からぬ事が起きそうだったから。
「うん、分かった。」
首も一緒に頷いたのを見て、安堵の溜め息を吐いた彼。
その顔がやたらと色っぽくて、狼狽える。
二人もどことなく頬を染めている。
私だけではない事にホッとする。
目元に熱を孕んだトロケそうな顔をファンの子達が見たら、即倒する事間違いだろうなぁ。
「木崎。珠稀を翻弄させてどうする。そんなんじゃ、何時まで経っても落とせない。」
星香の一声で彼が焦り出した。
さっきまで出して色香は霧散して、アタフタとしだす。
「折角男らしい言葉を聞いたのに、その顔は引くわ。」
瑞歩のジと目に更に焦り出す。
今物凄く情けない顔をしてるの。どうしたらいいのか分からないって顔。
「俺は、そんなつもりじゃ……。」
と言い出した。
「そんな事言っても、全然説得力無い。」
無惨な言い方をする瑞歩に落胆する彼。
「珠稀~。俺を癒してくれ~。」
と言い出して、私を抱き締めようと腕を伸ばしてきたところに、星香に抱き寄せられた。
イヤ、まぁ、助かったんだけどさ。
彼が星香を睨み付ける、そんな彼に。
「珠稀と付き合ってるわけじゃないんだから、抱きつこうとするな。」
星香のキツイ一言。
まぁ、星香の言葉に納得。
彼のそんな態度に私が被害を受けるのだ(理不尽すぎる)。
「俺の、癒し~。」
彼の悲壮感漂う顔を見て。
「クスクス……。」
声をたてて笑えば。
「珠稀が、可愛すぎてどうにかなりそうだ。」
彼の小声が聞こえてきた。
その声は、二人にも聞こえていたのか、呆れた顔をしている。
私を可愛いなんて言うのは、家族と星香、瑞歩と彼だけ。
自分の何処が可愛いのか全く分からない。
だから、ひたすら首を傾げるしかなかった。




