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#17 攻略の糸口

 今回の事件、報道によれば殺害された被害者の妻は無事であったようで、その証言から二人組のうちの一人が逃走したことと服装や特徴が分かっているらしい。

 しかし朝から何台も見かけるパトカーの様子からあまり進展は期待できていない。

 そんな普段通りの帰路の半ば、病院に隣接する薬局があったのだが、自動ドアの向こうから小さな足でジャンプをしながら子供が飛び出してきて、ぶつかりかけたひなはわっと小さく声をあげた。


「だめでしょ、ほらママと手つないで」

「むー…けほっけほ…」

「すみません。大丈夫でしたか?」


 風邪であるのか咳き込みながら不機嫌な顔の子供は慌てて母親らしき女性に手を引かれた。

 それから女性はぺこぺこと礼儀正しくひなに何度も頭を下げる。


「いや、全然平気ですよ。ちょっとびっくりしただけで…」

「まーま…」

「すみません。失礼します、はい、行こう」


 重ねて謝罪をした後で子供の歩幅に合わせて親子はゆっくりその場を去っていった。


「大変そうだったね…けがかな」

「ああ、眼帯ね。気にはなったけど」

「それになんだかやたらとぺこぺこされちゃった」


 特にこれといったハプニングではなかったが、それをきっかけにして城介は言い出せずにいた話をする。


「ねえ、モモセが言ってた『()()()』だけどさ。八つ、ってことは錬纏使いの数と一致してて、(かげ)、景色とか光景のこと…それぞれ別の姿があるんだと思う。で、それはたぶんひなが見えてる背後霊さま、きっとそれだと思うんだ」

「えっと…モモセっていう人が言ってた限りだとその可能性は高いね」

「ひなはそれが見えることについて特別何かを感じたりしない? ぐっと力を感じたりとか」

「ええ? 思い出せないくらい小さい時から自然に見えてたと思うし、特別…といえばどういう理屈か知らぬ間にすごく見入って夢中になっちゃうことかな…」

「…うーん、悩ましい。僕や壮太朗みたいに錬纏使いでも景は見えない例はあるけど、逆にひなみたいに景だけが見えてることもある」


 モモセはあの場にいた一通りの顔と姿を目にし、景によって錬纏使いを判断していた。

 そして景を見られるひなに興味は示したが錬纏使いでなかったために執着している様子は無かった。


「景が見えるかは無関係で錬纏使いの才能は生まれつきみたいだね…」

「そうなの?」

「ああ、特別であるのは違いないのに、その場にいたはるさんと同じではっきりとしたアプローチは何も無かったのがその証明だよ」


 ひなの今後がどうなるかを推測できたがそれは計画外。

 城介が確かめたかったことは別にあった。


「…ひな、モモセにはどんな景が見えていた? 何かが違ったの…あれ、ひな?」

「見つけた…」

「え、嘘…描きわずらいがなんで…」


 既にしゃがみこんで絵を描く体勢のひなは話は通じない。

 ひなの視線が向く先、四車線の広い車道を挟んだ向かいの歩道をざっと見渡す。


「いない…そうだ、モモセではないんだよな。けどあの金髪の人だっていない…誰だ?」


 三人組で歩く男子中学生、白髪混じりの年配サラリーマン、杖を突いてゆっくり歩く高齢の女性、ハンバーガーの屋台の眼鏡の男性店員、背中を向けて見えないがリュックを背負って並んでいる客が一人いる。

 一人ずつ候補を絞っていくが、決して焦る場面ではなかったと気づく。

 たとえ誰であろうと錬纏使いであると知っているのは一方的に城介のみ。

 確かな情報のアドバンテージがあるのだ。


「壮太朗には…連絡どうしようか。あれから怖くて声かけづらいんだよなぁ、不機嫌ぽくて…ひな経由でしてもらおう」


 ひなの世話でその場を動けず、手持ち無沙汰で描かれている新たな景の姿をじっくりと見つつも闘いへの気持ちを整経しておく。

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