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#15 モモセの猛攻と決着

 ほとんど加速無しで放っていた蹴りでは城介は微動だにせず、そしてすぐに足部の錬纏が崩壊していく。


「錬纏を直さない…狙いは謎だが気をつけろよ…」


 城介に加勢できるほどには回復した壮太朗は状況を見てそのまま傍観をすることに決めた。

 下手に手を出して邪魔になってはいけない。

 城介への劣等感を抱きつつもぐっと唇を噛んで信じることに徹した。

 そしてモモセによる攻撃は続き、今度は錬纏が残っている左の足で同じように滑空しながら蹴りが入れられる。


「そうか…ヒットアンドアウェイ、簡単には掴ませてくれない…」


 二度目も城介に変化は無く、一方のモモセの錬纏だけが砕け去っていく。

 城介にとっては一撃一撃は恐れることは無かったのだが、明らかに真っ向からの衝突を避けられて攻撃を入れる隙が無いこと、何かの策が仕掛けられているかも知れないことが気がかりで、自覚はしているが心の中では焦ってしまっている。

 城介は小さな変化も見逃すなと言い聞かせる。

 今のモモセは両足の錬纏がつぶれたままで、残っているのは2本の腕。

 次の攻撃は右腕の一撃、今度は加速をつけている。


「ううっ…錬纏越しで衝撃が伝わる…」


 弱音を小さく呟く城介。

 だが一番得意としているであろう会心の一撃は先に受けたものよりヒットさせる箇所を変えたために威力は控えめであった。


「右腕もつぶれた…きっと次が勝負どころ…加速を続けている」


 三発目を入れた後のモモセは依然として錬纏を直さぬまま、滑空した勢いを維持して上空を旋回している。


「やつの動き…単なる旋回だけじゃなくなっている」


 広い視界でモモセを見ていた壮太朗はその妙な動きに気づく。

 それまでは加速するための単純な円の運動が徐々に三次元的になっていたのだ。


「いや大丈夫だ…これから錬纏の出力を上げたとしても特別体が頑丈にはならない。威力自体はあいつを破るはずが無い。気をつけなくちゃならないのはカウンターを入れるタイミング、残る左腕を確かにつぶしたと見てから…」


 モモセの妙な行動は把握できていないが、壮太朗の懸念は城介にも理解できていた。

 旋回しているモモセをギリギリまで引きつける。衝撃と視覚の情報にはずれが生じるが、決して焦ってはならない。

 錬纏を解けば反応できない速度で二度と手に負えなくなる。

 緊張の中でモモセが飛行の状態から体勢を変えたのが見えた。

 加速していた旋回のルートからおおよその突進方向を見極める。


「…! 真上っ、視界の外から仕掛けてきた…」


 一つテンポが空いたが防御は間に合った。


「負けてたまるかっ」

「それはどうかな」

「左腕ももらう…!? いや違う! 腕じゃあない!」


 不自由な視界で城介が目にしたのは迫ってくる拳ではなく回転しているモモセの背中であり、その錬纏からは翼から連想される、竜の尻尾状のものが伸びていた。

 モモセは錬纏から伸びていたそれによる叩きつけを繰り出していた。


「重い…体の負担を無視できるから限界まで加速の勢いを乗せているんだ…あああっ」

「城介ー!」


 激しい轟音と土煙をあげる悲惨な光景にひなが悲鳴をあげた。


「そんな…破られた…」


 アスファルトが砕ける音、焼ける臭い、息をした喉で感じるえぐみ。

 錬纏の一切が消え去ったことでやってくるその情報は予想外に城介の精神に響き、真っ直ぐ立つ気力さえ奪い、その場に膝を突かせた。


「まずい、モモセは…」

「…届かなかった。届かなかった!」

「な、なんだあいつ…」


 モモセはなにが起きたのか前触れも無く発狂し、錬纏が残る左腕でがんがんと建物の壁に八つ当たりして、怒りを発散させている。


「錬纏を消すことしかできなかった。白虎は無事のままだ。どうしてだ。どうして、どうして、どうして! どうして! ああ…うう…」


 嗚咽するほど叫び声をあげ、辺り一帯を壊して回るかと思わせたが、荒い呼吸をゆっくりと静かに整えた。


「覚えていろ。白虎の(かげ)


 モモセは顔を見せないまま飛び去っていった。

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