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中継ぎの勇者は聖女の王女様とは結ばれない  作者: 安藤昌益


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上手く引退ができたはずが編 4

「絶対離れない!ついていく!だから~!」

 ラセットは、何度目かの激しい動きの中で、頭の中が真っ白になりかけながらも、トウドウの下で叫び、そしてぐったりとなった。

「全く、魔族女は、獣じみているわね。」

「お前に言う資格などないだろうが。」

「何よ。あんたこそ、あんなあわれもない。」

「何だと。」

「どちらも同じだろう。」

「あんたに言われたくないわよ!」

「そうじゃ!」

 トウドウが、ラセットから体を離して、

「3人とも止めろよ。」

 そして、3人を、3人とも、いきなり抱きしめた。 

“全てを取り戻した?最悪の形だが。”

 あの時、全てを失った。前から彼にはわかっていたことだったが。

 真の勇者が現れることを何時しか、半ば忘れかけていた。

「俺たちだけで、魔王を倒しましょう。」

「真の勇者様が現れたとしても、あんたについていきますよ。」

と酒を酌み交わしている時とはいえ、嬉しく思って聞いてしまっていた。

「あなたは、私の近衛隊長なんだから。」

「お兄様。私は、何時までもお仕えします。」

と言う2人に、つい夢を見てしまった。

 突然、真の勇者様は現れた。すぐに分かった。自分をこの世界に転移させた女神が彼の上にいるのが見えたからだ。彼は丁重に迎え、真の勇者様、デューク・フリードも丁重に

「今までご苦労でした。後はお任せ下さい。」

と言ったが、皆の態度は豹変した。豹変したと言うのは、少し酷かもしれない。とはいえ、彼への態度はよそよそしくなったというか、真の勇者を見ながら、気にしながら、優先しているのを示すような態度をとるようになった。真の勇者が現れた直後の戦いを、最後の勤めとして参加した。彼の本来の聖剣は、真の勇者により破壊された。これは、真の勇者の聖剣を完全にするための行為だったが。だから、彼は予備の格の低い聖剣で戦った。誰も、援護するものはいなかった。戻った時、食事は彼の分が、ちゃんと残すのこされていはいたが、誰も彼が戻ってくるのを待つ者はおらず、既に終わりかけていた。ねぎらいの言葉も、以前のものとは異なっていた。デューク・フリードが、彼にねぎらいの言葉を丁重に言っても、その表情の中に侮蔑の感じが入っているのを、誰もが分かっていたのだ。

 その戦いの後、報奨金を彼のために用意してくれたが、それを手渡しながら、

「これからどうなさるつもりだ?」

 来れに対して、

「田舎で平穏無事に、暮らしたいと思っています。」

 安心したように、小馬鹿にしたように、彼は微笑んだ。宮殿を出た彼に誰もついて来なかった。”かえって気が楽だ。“と思ったが、寂しかった。町中を歩いて行くうちに、兵士に引き摺られたダークエルフが彼に助けを求めて来たとき、金貨5枚で買い取り、助けたのは勇者としての過去が忘れられなかったからだ。その兵士は、最低でも金貨8枚だとごねたが、それは奴隷商人が売るときの価格で、彼らの買値は3枚だと言って、実際そうだったが、まけさせたのだが。その後、町の片隅でかねてから準備していた転移魔法の魔方陣を展開した。前々から、そこで土地を得ようと考えていた、そこからずっと離れた地に転移しようとした時、そのダークエルフが

「私も連れて行って!」

と飛び込んできたため、時空が歪められ、予想外の地に転移してしまった。転移した場所から、気絶している彼女を抱えて、100キロほど走り、疲れきって仮眠をとった後疲れがとれていなかったことから、女神の加護を失ったことを実感し、さらに気持ちが落ち込んだ。そして彼のわきで、覚ました彼女を見て、

「お前…、ダークエルフではないな?」

「さすが、中継ぎとはいえ勇者だ、よく分かった。我はかつて敗れて亡ぼされた古の神々の思念が長い間集まり固まり、死んだ人間達の思いがそれを核にして集まったものだ。この体は、死んだダークエルフが媒体になった結果なのか、集まった思念の結果たまたまこの形を取ったのかは分からぬ。?疑っておるか。わしは、今は大した力を持っておらない。それはな、神と認められていないからだ。我を神として認知せよ、権能を与えよう、そして我を抱け。さすれば我は地上の神となり、お前に加護を与えられよう。」

「人に、神として認定されて神になると言うのは本末転倒ではないか?」

「逆もまた真なりだ。お前には分かるだろうが?多くの神々を信じていた者なら。」

 誘う彼女に抵抗できなかった。

「戦いと愛欲の女神ディーテ。」

と口にして、彼女を抱いた。激しく動き、喘ぎ、何度も求めてきて、ぐったりしている彼女を見て彼が思ったのは、なるようになるしかないか、だった。

 彼女とともに、予定とは異なって転移してしまったところは、魔界に近く魔族の侵攻も度々あり、魔獣なども多い、いわば辺境である。貧しく、経済的に遅れているところであるため、土地を購入するなど困難だった。取り敢えずは、近くの町で行き、ディーテの下着から装備一式を書い整えて、傭兵として金を稼ぎながら、小なりとも領主になるための土地を購入出来るところまで旅をすることにした。自分に対する加護の強まりを感じたし、ディーテは日々日々強くなっていった。

「我らは、良いコンビだな。」

 ディーテは、トウドウと腕を組んで歩きながら、耳もとで囁いた。その過程で、本来の目的を後回しにして、人や町や国を助けた。“旅の途上のついでだ”と自分の心に向かって弁解したが。それに、取れるところからは、報酬をもらった、極力少なくしたとはいえ。しかし、それが楽しかったのも、感謝されるのが嬉しく思えたのは事実だった。“勇者が羨ましいんだな!”何時しか、そちらのほうが、目的のように感じられるようになっていた。

 そんな日々がずっと続くように感じられるようになっていた、ある日のことだった。彼女が、幽閉され、処刑されそうだという噂を耳にしてしまった。



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